去る春、君の声だけが在る2
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自転車雑誌に載ると献本がもらえる。自分で買ってる部員も多いから、だいたい部室に回される。東堂さんなんて掲載されると過去号と一緒に「オレの勇姿とくと見よ」と言ってweb記事の印刷してきたのまでたくさん部室のテーブルに並べていた。そのせいで、机に雑誌が置いてあると「お、今月の勇姿は誰だったかな〜」と気になってしまう。部員の記事から見ようと目次をチェック。やはりインハイに向けて調子を上げまくってる真波だ。
「……やっぱ難しいな」
「何の話?」
「レイさん!お疲れ様です」
「お疲れ。真波の記事か?」
「うん……せっかくつけてもらうならカッコいいあだ名がいいよねって話」
レイさんは紙面を見て納得がいった様子で頷いた。少し苦笑して。
「『天空の羽王子 圧勝』か。その顔を見るに、どうやらお気に召さなかったようだな」
「だってこれ結構定着したけど、やっぱりちょっと……ダサいよね?」
「……」
「沈黙は肯定とみなす」
「感性は人による、としか言えないな」
「……ずるいね?」
レイさんはメガネを押さえて沈黙を保った。初めて聞いた時も微妙な反応をしてしまい、その由来や所縁についてレイさんからしつこく解説された。私の好みからは外れているが、どうやら強者に相応しくゴージャスなネーミングらしい。東堂さんのスリーピングビューティーも初めて聞いた時に「姫のように美しいということ?」みたいに言って微妙な顔をしてしまったので、このハコガクエースクライマーにつけられがちなロマンチックなネーミング自体が肌に合わないのだと思う。
……個人的には「モノに例える系」「名前が入る系」は特に命名者のセンスが問われて危険な気がする。レイさんは何度目かになる「良い選手と優れた異名の関連について」の解説をまた口にする。
「あれは目撃した人間のセンスの問題だから、いかにネーミングセンスのいい人の前でいい走りをするかというか……ただしそれが広まるかどうかとはまた別問題というか……」
「正直走ってる側は気にしてる暇はない?」
「無いね」
レイさんはパラパラ雑誌をめくって弁解した。この辺は乗る者・乗らない者で私たちの間でも意見が分かれる。乗る者……レイさんは擁護派だ。葦木場さんも「人のあだ名にダサいとか恥ずかしいとか勝手に文句つけるんじゃありません」と叱ってくる。外野は好き勝手に文句を言うが、選手にとっては強さの証明でもあるわけだ。私は知ってる選手達につけられた異名を脳内で数え上げた。うーん……最近のトレンドは生き物系なのかも。生き物系ならいちばんカッコいいのは 頂上の蜘蛛男 。あれが蜘蛛かどうかはわからないが、初めて目撃した時の「何アレ!?」という衝撃とマッチした、カッコいい異名だと思う。
「個人的な意見だけど、やっぱいちばんカッコいいのは地名プラスカッコいい称号じゃない?」
「……それで?」
「肥後の鬼軍曹。ああいうのがいい、熊本から強さが広まって全国に轟いてる感じ」
「箱根の直線鬼もそうだろ」
「あ、あれはぁ……あれはやだ」
「わがままだな」
「本人がノリノリで決め台詞にしてるのがやだ」
「きっと熊台の井瀬もノリノリで決め台詞にしてるよ」
「やだなあ……」
もうすぐ始まるインターハイ。全国から猛者が集い、激闘の末新たな伝説が生まれ、そして新たな称号も生まれるかも……
「沿道のレースマニアに言いたいのは『動物系の異名は難易度高いから気をつけろ』かな」
「注文が多い」
「イデッ」
レイさんは呆れ顔、平らのままの雑誌で後頭部をパシンと叩いた。やめて!貴重な脳細胞が減る!こっちはただでさえ無理して立派な凄腕マネージャー目指してる上に、インハイに向けてデータ詰め込み中でヒイヒイ言ってるっていうのに!
「……やっぱ難しいな」
「何の話?」
「レイさん!お疲れ様です」
「お疲れ。真波の記事か?」
「うん……せっかくつけてもらうならカッコいいあだ名がいいよねって話」
レイさんは紙面を見て納得がいった様子で頷いた。少し苦笑して。
「『
「だってこれ結構定着したけど、やっぱりちょっと……ダサいよね?」
「……」
「沈黙は肯定とみなす」
「感性は人による、としか言えないな」
「……ずるいね?」
レイさんはメガネを押さえて沈黙を保った。初めて聞いた時も微妙な反応をしてしまい、その由来や所縁についてレイさんからしつこく解説された。私の好みからは外れているが、どうやら強者に相応しくゴージャスなネーミングらしい。東堂さんのスリーピングビューティーも初めて聞いた時に「姫のように美しいということ?」みたいに言って微妙な顔をしてしまったので、このハコガクエースクライマーにつけられがちなロマンチックなネーミング自体が肌に合わないのだと思う。
……個人的には「モノに例える系」「名前が入る系」は特に命名者のセンスが問われて危険な気がする。レイさんは何度目かになる「良い選手と優れた異名の関連について」の解説をまた口にする。
「あれは目撃した人間のセンスの問題だから、いかにネーミングセンスのいい人の前でいい走りをするかというか……ただしそれが広まるかどうかとはまた別問題というか……」
「正直走ってる側は気にしてる暇はない?」
「無いね」
レイさんはパラパラ雑誌をめくって弁解した。この辺は乗る者・乗らない者で私たちの間でも意見が分かれる。乗る者……レイさんは擁護派だ。葦木場さんも「人のあだ名にダサいとか恥ずかしいとか勝手に文句つけるんじゃありません」と叱ってくる。外野は好き勝手に文句を言うが、選手にとっては強さの証明でもあるわけだ。私は知ってる選手達につけられた異名を脳内で数え上げた。うーん……最近のトレンドは生き物系なのかも。生き物系ならいちばんカッコいいのは
「個人的な意見だけど、やっぱいちばんカッコいいのは地名プラスカッコいい称号じゃない?」
「……それで?」
「肥後の鬼軍曹。ああいうのがいい、熊本から強さが広まって全国に轟いてる感じ」
「箱根の直線鬼もそうだろ」
「あ、あれはぁ……あれはやだ」
「わがままだな」
「本人がノリノリで決め台詞にしてるのがやだ」
「きっと熊台の井瀬もノリノリで決め台詞にしてるよ」
「やだなあ……」
もうすぐ始まるインターハイ。全国から猛者が集い、激闘の末新たな伝説が生まれ、そして新たな称号も生まれるかも……
「沿道のレースマニアに言いたいのは『動物系の異名は難易度高いから気をつけろ』かな」
「注文が多い」
「イデッ」
レイさんは呆れ顔、平らのままの雑誌で後頭部をパシンと叩いた。やめて!貴重な脳細胞が減る!こっちはただでさえ無理して立派な凄腕マネージャー目指してる上に、インハイに向けてデータ詰め込み中でヒイヒイ言ってるっていうのに!
