去る春、君の声だけが在る2
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「ちょっといい加減にしてくださいよ!」
「……悠人の声だ」
休み時間の教室、2年のやつらがいるはずの部屋で大騒ぎの声。一応覗いてみると、悠人がキレてて、真波がまーまーと宥め、名前が不満そうに腕を組み、銅橋が机で潰れていた。珍しい光景だった。我らが主将様が迷いなく教室に足を踏み入れるのでオレもそれに続く。
「なんの騒ぎだ」
「ゲッ泉田さん」
「ゲッとはなんだ。銅橋、『また』何か聞かれてまずいことでもしていたのか?」
「い、いいえ……」
銅橋が冷や汗を流して目を逸らす。こいつと苗字は前科があるし、塔一郎の「調教」の甲斐あって嘘がつけない。と、いうことは本当にマズイ事態にはなっていないらしい。
「これだから名前ちゃんをむさ苦しい学校にやるのは反対だったんだよ!オレは!」
「悠人落ち着きなさい、今やお前もむさ苦しい自転車部の一員なんだから」
「名前ちゃんのせいでしょ!?!?」
悠人は部活中はお行儀良く「苗字先輩」と呼び敬語で話しているが、今日に限ってはその余裕もないようだった。葦木場がいれば「悠人」の一声で宥めることも可能だが、あいにく担任に呼び出されている。
と、なると使える手駒は一つしかない。それもとびきり自由人だが、今はそれしかない。ちょいちょい手招きして真波を呼んだところによると「4人で座ろうとしたら椅子が足りなかったので、名前がまあいいやって銅橋 くんの上に座って悠人が怒ってるんですよー」とのことだった。
……しょうもな!!!!!
「違うんです、一回座った後、普通に椅子取りに行こうと思ったんですいつものおふざけです!お尻ちょっと乗せてみただけです!」
「いつもそれやってんのがイヤって言ってるの!」
「だから悪かったってば……」
「前はそんなことしなかった!」
「その通りです……」
「やっぱり自転車部に入れた……っ兄貴のせいじゃん!」
「私がこのような品のない行動をとるのは隼人くんのせいじゃなく、ひとえに私の甘えと意志の弱さのせいだから、間違えないように」
「名前ちゃん全っ然反省してない!」
あの幼馴染どもはオレの手には負えない。ここに関してなぜか葦木場が積極的に介入しているので普段は投げっぱなしなのだが、肝心のあいつは進路どうこうで呼び出し中だ。早く帰ってこい!どうせ推薦もらうにしても具体的に決めるのはインハイ終わってからだろ。
「……銅橋はなんで落ち込んでる?」
「何も考えず『おう』って座らした自分を反省してるみたいですね〜」
「……だいぶ毒されたよな。アイツも」
「その言い方は私が悪いやつみたいじゃないですか!せめて『絆された』にしてくださいよ」
「名前ちゃんまだ話の途中なんだけど」
「ハイ」
名前がオレの発言に噛みつくも、即座に悠人にと引き戻された。最近になって「似てない」と言われることの多い悠人も、こういう所は似ているかもしれない。
……それにしても、まじでしょうもねえな!こういう時に苗字がいつも「もう収集つかないよ、なんとかして〜!」と泣きつくヤツはどこに……
「高田城は?」
「あ、レイさんは今日県庁です」
「あ、今日だったか」
「放課後には戻るって言ってましたけど」
「一刻も早く戻れ、高田城……」
塔一郎が唸るのも無理はない。しかし、高田城は今日横浜まで行っている。公道の整備不良を地道に報告したり写真撮って送ってたのが県の道路管理課の目に止まりなんと立派な若者であるよとあれよあれよで大きな会議に呼ばれてしまった。苗字曰く、今朝は「フッ悪いな、仕事ができすぎるせいで……」とノリノリで出かけて行ったらしい。上級生 にはあまり見せない顔なので半信半疑だが、呼び戻すわけにはいかない。
「悠人、これからは私もバシさんも、お行儀のいい淑女の振る舞いを心がけるよ」
「そもそも先輩方が廊下でくっついてイチャイチャしてんの見せられる身にもなってくださいよ!ほんと勘弁してほしいんですけど!」
「わ、悪かったって……」
「あのね、悠人、我々にイチャイチャしてるつもりはなくてね……!」
「もっと悪い!」
悠人の怒りの矛先は銅橋にも向いて、2人とも弁解せずに大人しく後輩に叱られている。ギャンギャン喚く悠人がいちばんうるさいが。塔一郎のため息。
「……悠人の方が常識的な距離感かもしれないな」
「ていうか悠人は思春期?」
「ンなっ」
「あのね真波、誰も彼もがお前とすずこちゃんみたいに少女漫画的幼馴染やってるわけじゃないの!!」
「え〜普通ですよね?ね、黒田さん」
「聞くな、オレたち『むさ苦しい』男所帯3年目だから感覚バグってんだよ。な、塔一郎」
「そうだね、残念だが『むさ苦しい』自転車部3年の我々は力になれないだろう」
「うおおおそこ引っかかってます!?すみません!悠人も謝って!」
「オレ、間違ったこと言ったって思ってませんから」
「悠人〜!?」
ムッとした悠人と、情けなく喚く苗字。入部時にはトラブルもあってだいぶ厳しく「距離を置け」だの「特別扱いはするな」だの言ったが、インターハイを前に関係は改善しているように見える。……あの時は、厳しく言いすぎたか。いやでも、オレ以外のやつにあの役ができたかというと、それは。
「あれ、黒田さん。怖い顔してますよ。お腹痛いんですか?」
「手のかかる後輩どものせいだよ!別に今だけの話じゃねえ、真波。お前も身に覚えがあるな?」
「えーないですよ」
「あるだろ!?」
「イヤッ許してください!インハイまではいい子にするので!ね!悠人も!」
「やだ」
「やじゃない!」
……全く手のかかるやつら。インハイまでってあとひと月もある。果たして、それだけの間いい子にしていられるか見せてもらおうじゃねえか。
「……悠人の声だ」
休み時間の教室、2年のやつらがいるはずの部屋で大騒ぎの声。一応覗いてみると、悠人がキレてて、真波がまーまーと宥め、名前が不満そうに腕を組み、銅橋が机で潰れていた。珍しい光景だった。我らが主将様が迷いなく教室に足を踏み入れるのでオレもそれに続く。
「なんの騒ぎだ」
「ゲッ泉田さん」
「ゲッとはなんだ。銅橋、『また』何か聞かれてまずいことでもしていたのか?」
「い、いいえ……」
銅橋が冷や汗を流して目を逸らす。こいつと苗字は前科があるし、塔一郎の「調教」の甲斐あって嘘がつけない。と、いうことは本当にマズイ事態にはなっていないらしい。
「これだから名前ちゃんをむさ苦しい学校にやるのは反対だったんだよ!オレは!」
「悠人落ち着きなさい、今やお前もむさ苦しい自転車部の一員なんだから」
「名前ちゃんのせいでしょ!?!?」
悠人は部活中はお行儀良く「苗字先輩」と呼び敬語で話しているが、今日に限ってはその余裕もないようだった。葦木場がいれば「悠人」の一声で宥めることも可能だが、あいにく担任に呼び出されている。
と、なると使える手駒は一つしかない。それもとびきり自由人だが、今はそれしかない。ちょいちょい手招きして真波を呼んだところによると「4人で座ろうとしたら椅子が足りなかったので、名前がまあいいやって
……しょうもな!!!!!
「違うんです、一回座った後、普通に椅子取りに行こうと思ったんですいつものおふざけです!お尻ちょっと乗せてみただけです!」
「いつもそれやってんのがイヤって言ってるの!」
「だから悪かったってば……」
「前はそんなことしなかった!」
「その通りです……」
「やっぱり自転車部に入れた……っ兄貴のせいじゃん!」
「私がこのような品のない行動をとるのは隼人くんのせいじゃなく、ひとえに私の甘えと意志の弱さのせいだから、間違えないように」
「名前ちゃん全っ然反省してない!」
あの幼馴染どもはオレの手には負えない。ここに関してなぜか葦木場が積極的に介入しているので普段は投げっぱなしなのだが、肝心のあいつは進路どうこうで呼び出し中だ。早く帰ってこい!どうせ推薦もらうにしても具体的に決めるのはインハイ終わってからだろ。
「……銅橋はなんで落ち込んでる?」
「何も考えず『おう』って座らした自分を反省してるみたいですね〜」
「……だいぶ毒されたよな。アイツも」
「その言い方は私が悪いやつみたいじゃないですか!せめて『絆された』にしてくださいよ」
「名前ちゃんまだ話の途中なんだけど」
「ハイ」
名前がオレの発言に噛みつくも、即座に悠人にと引き戻された。最近になって「似てない」と言われることの多い悠人も、こういう所は似ているかもしれない。
……それにしても、まじでしょうもねえな!こういう時に苗字がいつも「もう収集つかないよ、なんとかして〜!」と泣きつくヤツはどこに……
「高田城は?」
「あ、レイさんは今日県庁です」
「あ、今日だったか」
「放課後には戻るって言ってましたけど」
「一刻も早く戻れ、高田城……」
塔一郎が唸るのも無理はない。しかし、高田城は今日横浜まで行っている。公道の整備不良を地道に報告したり写真撮って送ってたのが県の道路管理課の目に止まりなんと立派な若者であるよとあれよあれよで大きな会議に呼ばれてしまった。苗字曰く、今朝は「フッ悪いな、仕事ができすぎるせいで……」とノリノリで出かけて行ったらしい。
「悠人、これからは私もバシさんも、お行儀のいい淑女の振る舞いを心がけるよ」
「そもそも先輩方が廊下でくっついてイチャイチャしてんの見せられる身にもなってくださいよ!ほんと勘弁してほしいんですけど!」
「わ、悪かったって……」
「あのね、悠人、我々にイチャイチャしてるつもりはなくてね……!」
「もっと悪い!」
悠人の怒りの矛先は銅橋にも向いて、2人とも弁解せずに大人しく後輩に叱られている。ギャンギャン喚く悠人がいちばんうるさいが。塔一郎のため息。
「……悠人の方が常識的な距離感かもしれないな」
「ていうか悠人は思春期?」
「ンなっ」
「あのね真波、誰も彼もがお前とすずこちゃんみたいに少女漫画的幼馴染やってるわけじゃないの!!」
「え〜普通ですよね?ね、黒田さん」
「聞くな、オレたち『むさ苦しい』男所帯3年目だから感覚バグってんだよ。な、塔一郎」
「そうだね、残念だが『むさ苦しい』自転車部3年の我々は力になれないだろう」
「うおおおそこ引っかかってます!?すみません!悠人も謝って!」
「オレ、間違ったこと言ったって思ってませんから」
「悠人〜!?」
ムッとした悠人と、情けなく喚く苗字。入部時にはトラブルもあってだいぶ厳しく「距離を置け」だの「特別扱いはするな」だの言ったが、インターハイを前に関係は改善しているように見える。……あの時は、厳しく言いすぎたか。いやでも、オレ以外のやつにあの役ができたかというと、それは。
「あれ、黒田さん。怖い顔してますよ。お腹痛いんですか?」
「手のかかる後輩どものせいだよ!別に今だけの話じゃねえ、真波。お前も身に覚えがあるな?」
「えーないですよ」
「あるだろ!?」
「イヤッ許してください!インハイまではいい子にするので!ね!悠人も!」
「やだ」
「やじゃない!」
……全く手のかかるやつら。インハイまでってあとひと月もある。果たして、それだけの間いい子にしていられるか見せてもらおうじゃねえか。
