去る春、君の声だけが在る2.5
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3年の先輩には当然呆れられた。最後の仕事と思っていたら、まさかのフリフリエプロン。首謀者なので「すみません部費ほしいのでお願いします」と大人しく頭を下げた。激甘の先輩たちは2年生ほど抵抗しなかった。代わりに「確かに自由にやれよって言ったけど、自由すぎじゃナァイ……?」とすごい顔をされたけど。
ノリノリの東堂さんの手を借りられたことだし、是非とも学内投票の賞金も狙いたい。負けられない戦い、女装させてでもほしい遠征費。なんと言っても今年現れたダークホースは関西拠点、西方面の遠征を増やしたいのは黒田さんも同じ。東北にも九州にも強豪はいるし、そのためには部費なんていくらあっても足りない。「決して性欲ありきの企画ではありません」と言い訳しつつ、私はせっせと11着のフリフリエプロンを縫った。体格別でシフトを組み、葦木場さん以外の10着をローテーション。汚したら諦める。最悪文化祭の2日もてばいい衣装だ。ハートのシールで誤魔化す。ハートが嫌なら汚さないよう頑張ってほしい。
そしてあの福富寿一が「オレは強い」と堂々と白エプロンを着たのなら、それに従うしか無いのが荒北さんで、追従するのが泉田さんと葦木場さんで、「オレだけ汚れ仕事から逃げるわけにはいかない」と考えるのが黒田さん。汚れ仕事とか言うな!そうなると全員着るしかないし、一度着たら後は案外ノリノリなのが新開隼人以下男子高校生の常である。後はひたすら学祭のルールと店のルールを叩き込むだけ。衛生と安全に関するルールは守ってもらわないとだし、回転率のために退店時間もキッチリ守ってもらわないと困る。
変な接客はいらない、憧れのチャリ部がサイジャにフリフリエプロン着てる、それだけでいい。血走った目で企画説明をした時はさすがのレイさんも引いたが今は同じ金の亡者で、円滑なカフェ運営の鬼と化した。さすが1年の参謀、頼れる男!
バシさんは絶対着ない宣言をしていたけど、泉田さんが着たのならそれは当然覆る。目の光がいつも以上に失われているがどうにか2日耐えてほしい。真波に関しては、その顔の可憐さでチェキ王になってもらうしかないと思っていたので東堂さんと2人がかりで説得にかかった。「絶対やなんですけど……」と言われたけど、最近なんだか思い詰めている様子の真波に「練習詰め込んでるみたいだし気分転換、先輩方との最後の思い出作り、どうしても遠征のために追加予算がほしい」と正直に頼み込んだら渋々頷いた。「別にそんな思い出はいらない」と毒は吐かれたけど……
前日、試着して全体の流れを確認。リハーサルのためにお客さん役をやらせてもらえることになり、ウキウキでお小遣い1,000円を握って自転車部に割り当てられた教室へ向かう。
廊下で受付係の説明を聞き、教室内の準備ができるのを待つ。原稿を渡されたばかりの頃の拙さは消え、受付リーダーも満足そうに頷いた。メイドを逃れたいあまりレイさんは受付リーダーになった。来年覚悟しとけよ。他の受付係……サイジャエプロンのシフトから逃れた部員たちもこれから二日間フリフリエプロンで衆目に晒される同期先輩を思って顔を青くしている。
「かわいそうに、真波も銅橋も3年間のメイドが保証されちまって……」
「真波は唯一顔が可愛いからセーフだろ」
「3年の時にどうなってるかは未確約だが……どうしよう、キレキレの攻め攻めエースクライマーになってたら……」
「シッ騒ぐな。来年は我が身だぞ」
レイさんの鋭い眼光に全員震え上がる。この鋭い眼光と先輩方をも丸め込む話術があれば、入店前にトラブルはある程度排除できると信じている。
「あの荒北さんがメイド堕ちなんて、オレ、オレ……ッ!」
「泣きながら興奮してんじゃねえよキメェな」
「お前こそ黒田さんとセットでシマイドンだって喜んでただろうが!」
「あってめーそれは言うなって」
「エースアシストコンビ恥辱の女装堕ち、キャプテンを守るために致し方なく……」
「しかし全員抵抗やむなくフリフリエプロンの餌食に……」
「高潔なるクライマー陣のくっ殺はここで見れますか?」
「エーススプリンター師弟百合もここでいいですか?」
「ヤメロヤメロ!部員のエロ同人の話するな!」
失礼な、どいつもこいつもフリフリエプロンが罰みたいな言い方して。そもそもメイドじゃないし!
泉田さんの積極的に遠征を増やす方針には賛成だが、あれはどうしても金がかかる。インハイが地元開催で多少の予算が浮いたとはいえ、金はいくらあっても正直足りない。部員からは理解されないが別にエロ同人がやりたいわけじゃないの。フリフリエプロンを見たくないって言ったら嘘になるけど。
レイさんは部員の嘆きが猥談の方に舵を切った時点で私の耳を塞ぎにかかったが、どう考えても無駄である。なんでも最近の私は黒田さん曰く「性欲で目が濁ってやがる」らしいし、同期相手に下品なレスポンスをしたところを見られた東堂さんには「お前仮にも1年の紅一点なのだからな、あまり過剰な下ネタはやめておけ」と叱られる有様である。以降同期の猥談にはなるべく聞いてないふりをしている。そもそも聞こえるところでやるな!!
「一応聞いておくけど、今から魔窟に足を踏み入れる覚悟はできてるか?」
「なんの覚悟?幼馴染と憧れの先輩方のフリフリを見る覚悟?むしろ着せた側だよ。怒られる覚悟の方はできてる。来年も一緒に怒られてね」
レイさんは呆れ返ってため息をついた。ずれてもいないメガネを直して。教室のドアを叩く。ざわざわしていたドアの奥がピタリと静まった。
「……お客様ご来店です」
「アーーーッス」
教室のドアがガラガラ開いて(覗き対策でいちいち開け閉めしないといけない)、聞き慣れた部員の声がした。どいつもこいつもヤケクソで張った声。いやーこれぞ、文化祭!いざフリフリエプロンの楽園へ。私は千円札握りしめて足を踏み入れた。
ノリノリの東堂さんの手を借りられたことだし、是非とも学内投票の賞金も狙いたい。負けられない戦い、女装させてでもほしい遠征費。なんと言っても今年現れたダークホースは関西拠点、西方面の遠征を増やしたいのは黒田さんも同じ。東北にも九州にも強豪はいるし、そのためには部費なんていくらあっても足りない。「決して性欲ありきの企画ではありません」と言い訳しつつ、私はせっせと11着のフリフリエプロンを縫った。体格別でシフトを組み、葦木場さん以外の10着をローテーション。汚したら諦める。最悪文化祭の2日もてばいい衣装だ。ハートのシールで誤魔化す。ハートが嫌なら汚さないよう頑張ってほしい。
そしてあの福富寿一が「オレは強い」と堂々と白エプロンを着たのなら、それに従うしか無いのが荒北さんで、追従するのが泉田さんと葦木場さんで、「オレだけ汚れ仕事から逃げるわけにはいかない」と考えるのが黒田さん。汚れ仕事とか言うな!そうなると全員着るしかないし、一度着たら後は案外ノリノリなのが新開隼人以下男子高校生の常である。後はひたすら学祭のルールと店のルールを叩き込むだけ。衛生と安全に関するルールは守ってもらわないとだし、回転率のために退店時間もキッチリ守ってもらわないと困る。
変な接客はいらない、憧れのチャリ部がサイジャにフリフリエプロン着てる、それだけでいい。血走った目で企画説明をした時はさすがのレイさんも引いたが今は同じ金の亡者で、円滑なカフェ運営の鬼と化した。さすが1年の参謀、頼れる男!
バシさんは絶対着ない宣言をしていたけど、泉田さんが着たのならそれは当然覆る。目の光がいつも以上に失われているがどうにか2日耐えてほしい。真波に関しては、その顔の可憐さでチェキ王になってもらうしかないと思っていたので東堂さんと2人がかりで説得にかかった。「絶対やなんですけど……」と言われたけど、最近なんだか思い詰めている様子の真波に「練習詰め込んでるみたいだし気分転換、先輩方との最後の思い出作り、どうしても遠征のために追加予算がほしい」と正直に頼み込んだら渋々頷いた。「別にそんな思い出はいらない」と毒は吐かれたけど……
前日、試着して全体の流れを確認。リハーサルのためにお客さん役をやらせてもらえることになり、ウキウキでお小遣い1,000円を握って自転車部に割り当てられた教室へ向かう。
廊下で受付係の説明を聞き、教室内の準備ができるのを待つ。原稿を渡されたばかりの頃の拙さは消え、受付リーダーも満足そうに頷いた。メイドを逃れたいあまりレイさんは受付リーダーになった。来年覚悟しとけよ。他の受付係……サイジャエプロンのシフトから逃れた部員たちもこれから二日間フリフリエプロンで衆目に晒される同期先輩を思って顔を青くしている。
「かわいそうに、真波も銅橋も3年間のメイドが保証されちまって……」
「真波は唯一顔が可愛いからセーフだろ」
「3年の時にどうなってるかは未確約だが……どうしよう、キレキレの攻め攻めエースクライマーになってたら……」
「シッ騒ぐな。来年は我が身だぞ」
レイさんの鋭い眼光に全員震え上がる。この鋭い眼光と先輩方をも丸め込む話術があれば、入店前にトラブルはある程度排除できると信じている。
「あの荒北さんがメイド堕ちなんて、オレ、オレ……ッ!」
「泣きながら興奮してんじゃねえよキメェな」
「お前こそ黒田さんとセットでシマイドンだって喜んでただろうが!」
「あってめーそれは言うなって」
「エースアシストコンビ恥辱の女装堕ち、キャプテンを守るために致し方なく……」
「しかし全員抵抗やむなくフリフリエプロンの餌食に……」
「高潔なるクライマー陣のくっ殺はここで見れますか?」
「エーススプリンター師弟百合もここでいいですか?」
「ヤメロヤメロ!部員のエロ同人の話するな!」
失礼な、どいつもこいつもフリフリエプロンが罰みたいな言い方して。そもそもメイドじゃないし!
泉田さんの積極的に遠征を増やす方針には賛成だが、あれはどうしても金がかかる。インハイが地元開催で多少の予算が浮いたとはいえ、金はいくらあっても正直足りない。部員からは理解されないが別にエロ同人がやりたいわけじゃないの。フリフリエプロンを見たくないって言ったら嘘になるけど。
レイさんは部員の嘆きが猥談の方に舵を切った時点で私の耳を塞ぎにかかったが、どう考えても無駄である。なんでも最近の私は黒田さん曰く「性欲で目が濁ってやがる」らしいし、同期相手に下品なレスポンスをしたところを見られた東堂さんには「お前仮にも1年の紅一点なのだからな、あまり過剰な下ネタはやめておけ」と叱られる有様である。以降同期の猥談にはなるべく聞いてないふりをしている。そもそも聞こえるところでやるな!!
「一応聞いておくけど、今から魔窟に足を踏み入れる覚悟はできてるか?」
「なんの覚悟?幼馴染と憧れの先輩方のフリフリを見る覚悟?むしろ着せた側だよ。怒られる覚悟の方はできてる。来年も一緒に怒られてね」
レイさんは呆れ返ってため息をついた。ずれてもいないメガネを直して。教室のドアを叩く。ざわざわしていたドアの奥がピタリと静まった。
「……お客様ご来店です」
「アーーーッス」
教室のドアがガラガラ開いて(覗き対策でいちいち開け閉めしないといけない)、聞き慣れた部員の声がした。どいつもこいつもヤケクソで張った声。いやーこれぞ、文化祭!いざフリフリエプロンの楽園へ。私は千円札握りしめて足を踏み入れた。
