去る春、君の声だけが在る2.5
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文化祭。1年のうちは派手な企画はできないからとクラス展示は大人しく校区のハザードマップ紹介で終わり。最近異常気象が多すぎるし、外練にも関わるので割と張り切って担当分を終えた。あとは当日の来場者説明だけ。それより部活のほうが重労働なので、早く終わらせるに越したことはない。
強豪自転車部は無事人気の「飲食」枠を確保した。引退した3年生も最後の仕事とばかりに手伝いに来てくれるから、一層気合いが入る。私もマネージャーとして計画、予算、当日の運営、それから安全関係の書類作成に気合いが入る。なぜなら……!飲食は多大な集客が見込めるので。すなわち収益が出ると部費の足しになるので。
「今年の自転車部は……サイジャカフェ!!!!これは決定事項です!!」
まずレイさんとふたりで幹部陣にプレゼンした時に黒田さんから「後輩女子にンなこと言いたくないけどよ、風営法って知ってっか……?」と怒られたが、別にやろうとしてるのはいかがわしい店ではない。健全健常、学祭で許される範囲だ。ペットボトルの飲み物をプラカップに注いで提供、部員御用達の補給食も出す。調理なし、一般男子高校生でもできる簡単なお仕事。
……ただし衣装はサイジャの上からフリフリ白エプロンを着ていただく!!!それだけだ。
いち早くツッコミ担当の黒田さんが復活、泉田さんが絶句。葦木場さんがマイペースに首を傾げた。
「メイドカフェをやりたいってこと……?」
「いえ、メイドは衣装の準備が大変なのであくまでジャージカフェです。衣装は自前のサイジャ、調達するのはエプロンと名札だけなので比較的簡単に準備ができるかと」
「高田城、なんでお前が乗り気なんだよ」
「照明、安全、衛生の規定を容易に達成できるので良い案だと思ったのですが」
「すっとぼけてんじゃねー!ドルオタがよ!」
「ドルオタじゃないです!!」
レイさんがドルオタなのかはさておき、私は未だ立ち直ってない泉田さんに「部費獲得のために頑張って考えたんですけど、怒られちゃいました……いい案だと思ったんですけど。レースじゃお力になれないどころか、こちらでも名前は役立たずで……先輩方に合わせる顔もありません」と嘘泣きぶりっこで畳み掛けた。うるうる。
「あっ馬鹿苗字、塔一郎たぶらかしやがって!止めてくれ拓斗!」
「オレは今から別の案に変えてもいいけど……予算内って言うけど、本当に間に合うのか?」
「もちろんです!衣装も布代と他手芸用具だけですし、名札は手作り!ドリンクはペットボトルから注いで1杯100円で売りつけますので!何よりチェキは備品があるし追加で買っても台紙1枚90円!これをなんと破格の300円です!」
「金の亡者だ……」
葦木場さんが聞いて損した。と言わんばかりにため息をついた。それから2人がかりでうまいこと泉田さんを丸め込み、麓の手芸屋(ラッキーなことに東堂さんの顔が効いたのでだいぶおまけしてもらえた)で白い布をしこたま買い込み、実家からミシンを持ってきた。そう……部員が着用するフリフリエプロンは私が縫うのだ。経費削減のため。1着2着なら部員を小田原まで走らせドンキで買っても良かったが数が多すぎた。そしてうちの部員のわがままボディを前に一般女性向けコスプレエプロンが耐えられるとも思わない。
最優先すべきは臨時収入!渋々の黒田さんになんとか「自転車部ジャージカフェ」で企画書を出してもらい、とりあえず1着縫って見せてやりますよ!ということで寮からミシンを持ってきた。
「なんでこんなことに……」
試作一号、身長的に部内でも標準に近そうな黒田さんから採寸。レイさんが淡々と測って私はそれをエクセルに入力。黒田さんはフリフリエプロンが本当に嫌だそうで、必死に抵抗したが「もう企画書通っちゃったので……」「その企画書出してくれたの誰でしたっけ」「黒田さんですよね」で今日まで押し通した。悪魔のような後輩だと罵られたが、金の亡者には響きませんよ。
「そりゃ決議されたからですよ」
「お前と高田城が塔一郎だまくらかしてな!!」
「黒田さん、遠征って金かかるんすよ……」
「その金は自分のカラダで稼いでこいってか!?!?チャリ部をホストクラブにでもしようってのか!?」
「いえ、どちらかというとキャ」
失言の予感を察知したレイさんが思い切り私の背中を叩いた。危ない危ない。とりあえずプリンターから出した型紙に沿って、白いゴミ袋を切る。いきなり本番布に行く前の試作。女の子用の型紙がスポーツマン男子高校生に適合するか不安だったもんで。葦木場さんが興味なさそうに手元を覗き込む。
「名前が裁縫できて助かったな」
「不登校時代に暇を潰そうとあれこれやったものがまさかこんなところで役に立つとは……ご覧ください、型紙もあるし、身長肩幅ほか入力するだけのマクロも組んであります!」
「へっ準備がいいことで……」
黒田さんのこれは完全に嫌味だ。そんなこんなでビニールを切り終えたのでガムテでペタペタ合成し、仮エプロン(フリルなし)が完成した。
「で、ご相談なんですけど……」
それを黒田さんの肩に引っ掛けて、後ろを適当にリボン結びにして、床に膝をつく。黒田さんが嫌そうに一歩後ずさる。後輩跪かせる趣味はないってか?
「おい」
「これ、丈どうしましょう?さすがに今だと長いですよね」
「長いと困るのか?」
諦観の姿勢を見せていた泉田さんが首を傾げる。私もそれに合わせて首を傾け。
「エプロンが長くてサイジャの裾見えないと、見ようによっては裸エプロンに見えませんか?」
「おめーの目が性欲で濁ってるだけだよ!!」
「ガッ」
辱めを受けた黒田さんがギャーギャー暴れて、葦木場さんと泉田さんに宥められている。レイさんは吹き出したのを誤魔化すように咳払いを繰り返す。
「ま、まあ落ち着きたまえユキ」
「いくらなんでも後輩女子にその発言はマズイよユキちゃん……」
「苗字の方がよっぽどマズいだろうが!」
「それはそうだけど」
先輩方も皆本番は着ることになるんだけどな。おふたりは割と諦めの境地で「……ボクが着ないことには示しがつかないからね」「オレが着れるサイズがあるっていうなら着てやる」という感じ。縫うが?葦木場さんのサイズを着れる部員はいないから、専用エプロンになる予定だ。縫うが?(念押し)そしてこの話題になると泉田さんと目が合わない。3年の先輩方に話を通すのをお願いしてからだ……しくしく。名前は悲しいです。
立派な金の亡者になったレイさんはふむ、と黒田さんのビニールエプロンを眺めて。
「丈となると、型紙から直すか」
「うん、サイジャ着てる時に着てもらえばよかったな〜」
「全く無駄な辱めを受けたぜ……」
「いやいや、無駄じゃなくて必要な辱めです」
「マジでこいつ余計なことしか言わねえな」
「黒田さん、エプロンは恥ずかしい格好じゃないです」
「ジャージの上からフリフリエプロン着せられたら恥ずかしいカッコだろーが!」
葦木場さんと泉田さんが本日二度目の「まあまあユキちゃん落ち着いて」に入った。フーッ!フーッ!と毛並みを逆立てて、まあこういう姿を見ると「黒猫」のあだ名も納得ですね。
レイさんからメジャーを受け取り、裾を何センチ短くするか検討する。レイさんが金の亡者になったきっかけは古いチェキカメラを部室から3台も発掘したから。部員とのチェキを売り、原価がほぼ無いドリンクと合わせて儲けさせ、地方のレースに選手を送り込む……1年の頭脳が考えた完璧な計画!黒田さんが止めようと、葦木場さんが抵抗しようと、無駄!レギュラー陣には全員サイジャエプロンを着ていただく!!!
強豪自転車部は無事人気の「飲食」枠を確保した。引退した3年生も最後の仕事とばかりに手伝いに来てくれるから、一層気合いが入る。私もマネージャーとして計画、予算、当日の運営、それから安全関係の書類作成に気合いが入る。なぜなら……!飲食は多大な集客が見込めるので。すなわち収益が出ると部費の足しになるので。
「今年の自転車部は……サイジャカフェ!!!!これは決定事項です!!」
まずレイさんとふたりで幹部陣にプレゼンした時に黒田さんから「後輩女子にンなこと言いたくないけどよ、風営法って知ってっか……?」と怒られたが、別にやろうとしてるのはいかがわしい店ではない。健全健常、学祭で許される範囲だ。ペットボトルの飲み物をプラカップに注いで提供、部員御用達の補給食も出す。調理なし、一般男子高校生でもできる簡単なお仕事。
……ただし衣装はサイジャの上からフリフリ白エプロンを着ていただく!!!それだけだ。
いち早くツッコミ担当の黒田さんが復活、泉田さんが絶句。葦木場さんがマイペースに首を傾げた。
「メイドカフェをやりたいってこと……?」
「いえ、メイドは衣装の準備が大変なのであくまでジャージカフェです。衣装は自前のサイジャ、調達するのはエプロンと名札だけなので比較的簡単に準備ができるかと」
「高田城、なんでお前が乗り気なんだよ」
「照明、安全、衛生の規定を容易に達成できるので良い案だと思ったのですが」
「すっとぼけてんじゃねー!ドルオタがよ!」
「ドルオタじゃないです!!」
レイさんがドルオタなのかはさておき、私は未だ立ち直ってない泉田さんに「部費獲得のために頑張って考えたんですけど、怒られちゃいました……いい案だと思ったんですけど。レースじゃお力になれないどころか、こちらでも名前は役立たずで……先輩方に合わせる顔もありません」と嘘泣きぶりっこで畳み掛けた。うるうる。
「あっ馬鹿苗字、塔一郎たぶらかしやがって!止めてくれ拓斗!」
「オレは今から別の案に変えてもいいけど……予算内って言うけど、本当に間に合うのか?」
「もちろんです!衣装も布代と他手芸用具だけですし、名札は手作り!ドリンクはペットボトルから注いで1杯100円で売りつけますので!何よりチェキは備品があるし追加で買っても台紙1枚90円!これをなんと破格の300円です!」
「金の亡者だ……」
葦木場さんが聞いて損した。と言わんばかりにため息をついた。それから2人がかりでうまいこと泉田さんを丸め込み、麓の手芸屋(ラッキーなことに東堂さんの顔が効いたのでだいぶおまけしてもらえた)で白い布をしこたま買い込み、実家からミシンを持ってきた。そう……部員が着用するフリフリエプロンは私が縫うのだ。経費削減のため。1着2着なら部員を小田原まで走らせドンキで買っても良かったが数が多すぎた。そしてうちの部員のわがままボディを前に一般女性向けコスプレエプロンが耐えられるとも思わない。
最優先すべきは臨時収入!渋々の黒田さんになんとか「自転車部ジャージカフェ」で企画書を出してもらい、とりあえず1着縫って見せてやりますよ!ということで寮からミシンを持ってきた。
「なんでこんなことに……」
試作一号、身長的に部内でも標準に近そうな黒田さんから採寸。レイさんが淡々と測って私はそれをエクセルに入力。黒田さんはフリフリエプロンが本当に嫌だそうで、必死に抵抗したが「もう企画書通っちゃったので……」「その企画書出してくれたの誰でしたっけ」「黒田さんですよね」で今日まで押し通した。悪魔のような後輩だと罵られたが、金の亡者には響きませんよ。
「そりゃ決議されたからですよ」
「お前と高田城が塔一郎だまくらかしてな!!」
「黒田さん、遠征って金かかるんすよ……」
「その金は自分のカラダで稼いでこいってか!?!?チャリ部をホストクラブにでもしようってのか!?」
「いえ、どちらかというとキャ」
失言の予感を察知したレイさんが思い切り私の背中を叩いた。危ない危ない。とりあえずプリンターから出した型紙に沿って、白いゴミ袋を切る。いきなり本番布に行く前の試作。女の子用の型紙がスポーツマン男子高校生に適合するか不安だったもんで。葦木場さんが興味なさそうに手元を覗き込む。
「名前が裁縫できて助かったな」
「不登校時代に暇を潰そうとあれこれやったものがまさかこんなところで役に立つとは……ご覧ください、型紙もあるし、身長肩幅ほか入力するだけのマクロも組んであります!」
「へっ準備がいいことで……」
黒田さんのこれは完全に嫌味だ。そんなこんなでビニールを切り終えたのでガムテでペタペタ合成し、仮エプロン(フリルなし)が完成した。
「で、ご相談なんですけど……」
それを黒田さんの肩に引っ掛けて、後ろを適当にリボン結びにして、床に膝をつく。黒田さんが嫌そうに一歩後ずさる。後輩跪かせる趣味はないってか?
「おい」
「これ、丈どうしましょう?さすがに今だと長いですよね」
「長いと困るのか?」
諦観の姿勢を見せていた泉田さんが首を傾げる。私もそれに合わせて首を傾け。
「エプロンが長くてサイジャの裾見えないと、見ようによっては裸エプロンに見えませんか?」
「おめーの目が性欲で濁ってるだけだよ!!」
「ガッ」
辱めを受けた黒田さんがギャーギャー暴れて、葦木場さんと泉田さんに宥められている。レイさんは吹き出したのを誤魔化すように咳払いを繰り返す。
「ま、まあ落ち着きたまえユキ」
「いくらなんでも後輩女子にその発言はマズイよユキちゃん……」
「苗字の方がよっぽどマズいだろうが!」
「それはそうだけど」
先輩方も皆本番は着ることになるんだけどな。おふたりは割と諦めの境地で「……ボクが着ないことには示しがつかないからね」「オレが着れるサイズがあるっていうなら着てやる」という感じ。縫うが?葦木場さんのサイズを着れる部員はいないから、専用エプロンになる予定だ。縫うが?(念押し)そしてこの話題になると泉田さんと目が合わない。3年の先輩方に話を通すのをお願いしてからだ……しくしく。名前は悲しいです。
立派な金の亡者になったレイさんはふむ、と黒田さんのビニールエプロンを眺めて。
「丈となると、型紙から直すか」
「うん、サイジャ着てる時に着てもらえばよかったな〜」
「全く無駄な辱めを受けたぜ……」
「いやいや、無駄じゃなくて必要な辱めです」
「マジでこいつ余計なことしか言わねえな」
「黒田さん、エプロンは恥ずかしい格好じゃないです」
「ジャージの上からフリフリエプロン着せられたら恥ずかしいカッコだろーが!」
葦木場さんと泉田さんが本日二度目の「まあまあユキちゃん落ち着いて」に入った。フーッ!フーッ!と毛並みを逆立てて、まあこういう姿を見ると「黒猫」のあだ名も納得ですね。
レイさんからメジャーを受け取り、裾を何センチ短くするか検討する。レイさんが金の亡者になったきっかけは古いチェキカメラを部室から3台も発掘したから。部員とのチェキを売り、原価がほぼ無いドリンクと合わせて儲けさせ、地方のレースに選手を送り込む……1年の頭脳が考えた完璧な計画!黒田さんが止めようと、葦木場さんが抵抗しようと、無駄!レギュラー陣には全員サイジャエプロンを着ていただく!!!
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