去る春、君の声だけが在るIF
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「はー……なんでもありですね」
と初めて入ったスタジオで思わず首を傾げてしまったのは、確か入部してすぐのことだったと思う。
インターハイ常連校のハコガクともなると、謎の依頼経路でグラビア撮影が入る。……なにゆえ男子高校生がグラビア撮影を?
インターハイの後、真波は天空の羽王子 などという恥ずかしい名で呼ばれるようになり、その顔立ちから年がら年中あちこちの撮影に呼ばれていた。本人はあんまり写真を撮られることに興味はないが(そもそも坂以外の全てに興味がない)、予算追加のために要請都度引っ捕まえてスタジオに放り込んでいる。東堂さんとかとセットだと東堂さんが世話焼いてくれるのだが。
今日もグラビア撮影のために真波が呼び出され、私もそれのお供に連れてこられた。今日は魔法学園のコスプレ。大きな帽子、ローブ……真波は「わあ、ゲームみたい」とニッコリ笑って、それから帽子をおさえてくるっと回った。魔法使いのローブ、長い裾がふんわりと広がる。
「……お前のそういう仕草が嫌味なくらいハマるところはすごいよ」
「そう?」
「暑くて重くて、やんなっちゃうね」と真波はこぼしたが私は聞こえないふりをした。とりあえず販売に適した写真を何枚か撮ってもらわなければならない。売り物にならなければギャラは入ってこないのだ。ギャラは本人のお小遣いが少し、それから残りは部費になるので。
「そうだこれ」
「ちょっと、衣装なんだから好き勝手しないで」
真波は装飾のたくさんついたローブをモゾモゾ漁り、ガラスの小瓶を取り出した。
「じゃーん」
「なにそれ」
「ポーションだよ。知らないの」
「知らない」
「ゲームじゃお馴染みなんだけど。いわゆる魔法の薬ってやつ?」
「へえ、ファンタジーものってほとんどやったことないんだよね」
真波が取り出したのはポーション……いわゆる水薬、ただし病院でもらうシロップ薬みたいなやつではなく、なるほどファンタジーの薬的な見た目をしていた。ガラス瓶に入った毒々しい色の液体、ラベルまで貼ってあり凝った作りをしている。
「……体力が回復する?それとも気絶から回復する?」
「うーん、えーっと……」
真波がガラス瓶を光に透かしてラベルを読もうとした。あ、今写真撮ってほしい。珍しく販売に耐えうる表情をしてるから。
「チャーム……魅了の薬って書いてある。一滴で効果抜群。これで相手は命尽きるまであなたの奴隷」
「男子高校生になんてもん持たせてるの!!危な!!返してきなさい!」
危な!ニセモノだとしても冗談キツい!私は飛び上がって驚いたが真波は余裕でチャプチャプ瓶を振った。この怖いもの知らず!
「あはは、そんなビビらなくても大丈夫。むしろ欲しくないの?」
「ンな物騒なものいらないって!怖!」
「とりあえず一滴舐めてみれば?」
「怖!返してきなさい」
「ねーやっぱり一滴だけどう?」
「返してこいって!」
なぜかノリノリの真波を必死で押し返す羽目に。私が嫌がれば嫌がるほど面白がって勧めてくる。最悪だよ!効能がよりによってやばそうなやつ!おふざけにしても男子高校生の小道具ではない。せめて体力回復とかにして欲しかった。選手じゃなくて自分が飲む。みんな体力すごすぎだから、合宿だとマジで初日の夜からヘロヘロになってる。こっちは1メートルも走ってないのにだよ!?
「本当にいいの?こんなチャンス二度とないのに?」
「なんのチャンスだよ!」
背中にのしかかられると重い。比較的体重の軽いクライマーとはいえ男子高校生、今日はジャージよりはるかに重い魔法使いローブ衣装で重量マシマシ。そしてカネに目が眩んだマネージャーこと私はこの男を乱暴に跳ね除けることができない。万が一衣装の汚損があったらギャラから引かれるどころかゼロになる可能性があるから。しかしながら、冷静に考えて。
「……やっぱり飲むメリットなくない!?」
「あるある」
「ないよ!」
勘弁してよ。たとえ偽物でも勘弁してほしい。にせもの……偽物ですよね?シロップ薬ですよね?まさかまさか……
「楽しみだねー」
ビビる私をよそに、真波はポンと気の抜けた音を立ててコルク栓を抜いた。真波はレースの時みたいな強気の表情、それをかき消すピンク色の霧、瓶の口から漂ってくる気絶しそうな甘い匂い……まずい、これはバッドエンドの予感!!
と初めて入ったスタジオで思わず首を傾げてしまったのは、確か入部してすぐのことだったと思う。
インターハイ常連校のハコガクともなると、謎の依頼経路でグラビア撮影が入る。……なにゆえ男子高校生がグラビア撮影を?
インターハイの後、真波は
今日もグラビア撮影のために真波が呼び出され、私もそれのお供に連れてこられた。今日は魔法学園のコスプレ。大きな帽子、ローブ……真波は「わあ、ゲームみたい」とニッコリ笑って、それから帽子をおさえてくるっと回った。魔法使いのローブ、長い裾がふんわりと広がる。
「……お前のそういう仕草が嫌味なくらいハマるところはすごいよ」
「そう?」
「暑くて重くて、やんなっちゃうね」と真波はこぼしたが私は聞こえないふりをした。とりあえず販売に適した写真を何枚か撮ってもらわなければならない。売り物にならなければギャラは入ってこないのだ。ギャラは本人のお小遣いが少し、それから残りは部費になるので。
「そうだこれ」
「ちょっと、衣装なんだから好き勝手しないで」
真波は装飾のたくさんついたローブをモゾモゾ漁り、ガラスの小瓶を取り出した。
「じゃーん」
「なにそれ」
「ポーションだよ。知らないの」
「知らない」
「ゲームじゃお馴染みなんだけど。いわゆる魔法の薬ってやつ?」
「へえ、ファンタジーものってほとんどやったことないんだよね」
真波が取り出したのはポーション……いわゆる水薬、ただし病院でもらうシロップ薬みたいなやつではなく、なるほどファンタジーの薬的な見た目をしていた。ガラス瓶に入った毒々しい色の液体、ラベルまで貼ってあり凝った作りをしている。
「……体力が回復する?それとも気絶から回復する?」
「うーん、えーっと……」
真波がガラス瓶を光に透かしてラベルを読もうとした。あ、今写真撮ってほしい。珍しく販売に耐えうる表情をしてるから。
「チャーム……魅了の薬って書いてある。一滴で効果抜群。これで相手は命尽きるまであなたの奴隷」
「男子高校生になんてもん持たせてるの!!危な!!返してきなさい!」
危な!ニセモノだとしても冗談キツい!私は飛び上がって驚いたが真波は余裕でチャプチャプ瓶を振った。この怖いもの知らず!
「あはは、そんなビビらなくても大丈夫。むしろ欲しくないの?」
「ンな物騒なものいらないって!怖!」
「とりあえず一滴舐めてみれば?」
「怖!返してきなさい」
「ねーやっぱり一滴だけどう?」
「返してこいって!」
なぜかノリノリの真波を必死で押し返す羽目に。私が嫌がれば嫌がるほど面白がって勧めてくる。最悪だよ!効能がよりによってやばそうなやつ!おふざけにしても男子高校生の小道具ではない。せめて体力回復とかにして欲しかった。選手じゃなくて自分が飲む。みんな体力すごすぎだから、合宿だとマジで初日の夜からヘロヘロになってる。こっちは1メートルも走ってないのにだよ!?
「本当にいいの?こんなチャンス二度とないのに?」
「なんのチャンスだよ!」
背中にのしかかられると重い。比較的体重の軽いクライマーとはいえ男子高校生、今日はジャージよりはるかに重い魔法使いローブ衣装で重量マシマシ。そしてカネに目が眩んだマネージャーこと私はこの男を乱暴に跳ね除けることができない。万が一衣装の汚損があったらギャラから引かれるどころかゼロになる可能性があるから。しかしながら、冷静に考えて。
「……やっぱり飲むメリットなくない!?」
「あるある」
「ないよ!」
勘弁してよ。たとえ偽物でも勘弁してほしい。にせもの……偽物ですよね?シロップ薬ですよね?まさかまさか……
「楽しみだねー」
ビビる私をよそに、真波はポンと気の抜けた音を立ててコルク栓を抜いた。真波はレースの時みたいな強気の表情、それをかき消すピンク色の霧、瓶の口から漂ってくる気絶しそうな甘い匂い……まずい、これはバッドエンドの予感!!
