去る春、君の声だけが在る
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節分ということで、今日は寮の夕食で落花生が出た。大豆じゃないのは「男子高校に大豆など与えた途端にどこかに詰まらせるから」という幼稚園のような理由で、まあなんとなく納得できる。ただ、殻を割って中身を食べるとなるとゴミが落ちるので、我々1年カルテットは寮の玄関先で落花生を食べることにした。このクソ寒い中。撤回、超絶寒い中。クソとか言うと葦木場さんに怖い顔で怒られるから。
「落花生配るのに豆まきしないんだね」
「前はしていたらしい。2年前を最後に、今年もやらないと聞いた」
「2年前?ガチでぶつけ合って負傷者でも出した?どうせ荒北さんあたりと見た」
「失礼だろ」
「でもちょっと思ったでしょ」
「まあ……」
バシさんが落花生の殻をちまちまつまんでゴミ袋に集める。案外まめなやつ。
「ん?」
真波が不意に顔を上げ、触覚がそれに合わせてふよふよ揺れた。
「何か聞こえない?」
「え?」
微かに聞こえる声。なんとかは内。……これって豆まきの声?レイさんが重々しい口調で。
「男子寮の豆まきは今年も自主開催だ。うちには……」
「箱根の直線には鬼が出るからな」
「ギャア!!」
「……仮にも鬼の異名を持つ寮生がいるのに『鬼は外』はいかがなものかと、昨年から中止の流れになったらしいよ」
「そう。代わりに、別のイベントとして自主開催してるやつがいるんだけどね」
突然背後から覗き込んできたのは葦木場さん。2メートルの長身が背後から覗き込んでくるのは、プレッシャーがすごくて今だに慣れない。現に今もオバケでも見たような声が出てしまった。心臓がバクバクしている。レイさんと葦木場さんが、私の悲鳴をスルーして続けた説明によると、隼人くんの存在が豆まきを中止にしたらしい。しかし「別のイベントとして自主開催」、もしかしてこの声……
私が驚きすぎて落っことした落花生を真波が拾った。それを受け取ろうとした時、背後からサンダル履いた足音がふたつ。葦木場さんが振り返る。
「塔ちゃん、あと玄関で終わりでいい?」
「ああ。ラストだ!ユキ、拓斗、気合い入れろ!」
「はいはい」
この寒い中白い息を吐きながらイキイキした泉田さんと、疲労困憊の黒田さんが玄関に出てきた。もしや。
「鬼はーーー内ッ!新開さんは内ッ!!」
「自主開催ってやっぱそういうことですか!?」
「そうだよ。今年は新開さんの卒業間近でなんか別のイベントみたいになってるけど……」
庭先まで元気よく飛んでった落花生を先輩方3人がかりで拾い集める。当の本人は出てくる気配もないが、流石に知ってはいるのだろう。
「これ手伝った方がいいやつ?」
「自主開催ならいいんじゃないの?寮内行事でしょう」
「でも……」
運動部気質でレイさんが腰を浮かしかけ、庭先の先輩方を見た真波の触覚が何を感じ取ったかふよんと揺れた。隣に座った真波の顔を見ると、レースの時みたいにキリッとしている。
「ここで手伝ったら、来年から参加人数に入れられる気がする」
「……だな!」
真波の言葉でレイさんは元気よく着席した。ぱりんと音を立ててバシさんが最後の落花生を割った。
「落花生配るのに豆まきしないんだね」
「前はしていたらしい。2年前を最後に、今年もやらないと聞いた」
「2年前?ガチでぶつけ合って負傷者でも出した?どうせ荒北さんあたりと見た」
「失礼だろ」
「でもちょっと思ったでしょ」
「まあ……」
バシさんが落花生の殻をちまちまつまんでゴミ袋に集める。案外まめなやつ。
「ん?」
真波が不意に顔を上げ、触覚がそれに合わせてふよふよ揺れた。
「何か聞こえない?」
「え?」
微かに聞こえる声。なんとかは内。……これって豆まきの声?レイさんが重々しい口調で。
「男子寮の豆まきは今年も自主開催だ。うちには……」
「箱根の直線には鬼が出るからな」
「ギャア!!」
「……仮にも鬼の異名を持つ寮生がいるのに『鬼は外』はいかがなものかと、昨年から中止の流れになったらしいよ」
「そう。代わりに、別のイベントとして自主開催してるやつがいるんだけどね」
突然背後から覗き込んできたのは葦木場さん。2メートルの長身が背後から覗き込んでくるのは、プレッシャーがすごくて今だに慣れない。現に今もオバケでも見たような声が出てしまった。心臓がバクバクしている。レイさんと葦木場さんが、私の悲鳴をスルーして続けた説明によると、隼人くんの存在が豆まきを中止にしたらしい。しかし「別のイベントとして自主開催」、もしかしてこの声……
私が驚きすぎて落っことした落花生を真波が拾った。それを受け取ろうとした時、背後からサンダル履いた足音がふたつ。葦木場さんが振り返る。
「塔ちゃん、あと玄関で終わりでいい?」
「ああ。ラストだ!ユキ、拓斗、気合い入れろ!」
「はいはい」
この寒い中白い息を吐きながらイキイキした泉田さんと、疲労困憊の黒田さんが玄関に出てきた。もしや。
「鬼はーーー内ッ!新開さんは内ッ!!」
「自主開催ってやっぱそういうことですか!?」
「そうだよ。今年は新開さんの卒業間近でなんか別のイベントみたいになってるけど……」
庭先まで元気よく飛んでった落花生を先輩方3人がかりで拾い集める。当の本人は出てくる気配もないが、流石に知ってはいるのだろう。
「これ手伝った方がいいやつ?」
「自主開催ならいいんじゃないの?寮内行事でしょう」
「でも……」
運動部気質でレイさんが腰を浮かしかけ、庭先の先輩方を見た真波の触覚が何を感じ取ったかふよんと揺れた。隣に座った真波の顔を見ると、レースの時みたいにキリッとしている。
「ここで手伝ったら、来年から参加人数に入れられる気がする」
「……だな!」
真波の言葉でレイさんは元気よく着席した。ぱりんと音を立ててバシさんが最後の落花生を割った。
