去る春、君の声だけが在る
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どんがらがっしゃーーーん
「うう……」
「グッ」
落としたのが軽いダンボールで良かったと思った。名前から受け取ってロッカー上に戻そうとした時、名前が「うぎゃ」という小さな悲鳴と共にぶつかってきた。完全に想定外の衝突にオレはあろうことかダンボールを取り落とした。
せめて二次被害防止で名前を潰さないようにだけ気をつけてやって、そのままふたりで床に転がった。なんでこんなことに……
「なんでこんなことに……」
それはこっちのセリフだ。うっすら埃の立ち上る中、目を開けると名前が自分のドジに絶望して突っ伏していた。その伏せてるのは、床じゃなくてオレの上体なわけだが。
「バシさん怪我してない?」
「……ねえよ」
「本当?医務室行く?」
「行かねえ」
そんな気遣いするくらいならさっさと退いてくれ。あとできればそこで身動きするな。……そこでモゾモゾするなって言ってんだよ!
「あーあ、ドジしたな……」
名前は全く動く気配なく、そのまま横面をオレの胸に押し付けた。待て、やめろ、バカ早い心臓の音聞かれたら死ぬ。お前はなんとも思ってないかもしれねえがこっちは絶賛男子高校生なんだよ。
お前が本当の本当に、オレのことをなんとも思っていないのは……否オレたちをなんとも思っていないのは知っている。夏休みの休養日に1年誘って海に行こうというのでついて行ったら、男子高校生基準でとんでもなく攻めた水着を着てこられた時点でわかっている。お前は「いや〜お友達と海に行くなら着てみたかったんだよねこういうの!」と朗らかに言ってのけ、高田城から「……後は任せた」と言わんばかりに肩を叩かれた。酷く同情的な視線と共に。お前は真っ白の肌を思い切り晒してフラフラしてるから、こっちはお前が変な男に絡まれないように必死すぎて海水浴どころではなかった。スランプに陥った真波を励ます気があったのはわかっているが、そもそもあの坂バカを励ますなら小田原に降りるより箱根を登った方が効果あったろ。
「さて、と……本当に怪我ない?頭ゴンしてない?」
「してねえ。お前は?」
「バシさんが下敷きになってくれたおかげでなんとも」
「そうかよ」
名前が漸く身を起こす。それに合わせて肘を立てて、身を起こそうとして。やれやれ、これでやっとオレも自由の身に……
「名前?」
名前は一向に降りてくれる気配がなく、ドアの方を凝視して顔を引き攣らせた。オレも同じようにドアの方を振り返って。そこにあったのはキューブリックの名作の如く、ドアの隙間から顔を出す副主将の姿。
「ヒッ」
「お前ら、部室で不純異性交遊たあ、いい度胸じゃねーーーか……」
「黒田さん事故!これは事故です!!!!」
「事故だが事後だが知らねーがいい加減にしろよてめえら!!」
「だから事故だって!」
黒田さんがとんでもないことを言い出したが、名前は「流石に襲ってないです!」と一生懸命弁解した。……襲われる可能性はないってか?オレは脱力して床に仰向けになった。どうせ洗濯するんだ、どうにでもなれ。名前と黒田さんはまだ言い争っている。
「どっちでもいいからさっさと降りろ!今ならローラー3本追加で、塔一郎に黙っといてやるから!」
「ボクがどうしたって?」
「「ヒッ」」
名前と黒田さんが息を呑む。よりによっていちばん見つかりたくない人に……上下逆さまの視界で、泉田さんの大きな目玉がギラっと光っていた。
「うう……」
「グッ」
落としたのが軽いダンボールで良かったと思った。名前から受け取ってロッカー上に戻そうとした時、名前が「うぎゃ」という小さな悲鳴と共にぶつかってきた。完全に想定外の衝突にオレはあろうことかダンボールを取り落とした。
せめて二次被害防止で名前を潰さないようにだけ気をつけてやって、そのままふたりで床に転がった。なんでこんなことに……
「なんでこんなことに……」
それはこっちのセリフだ。うっすら埃の立ち上る中、目を開けると名前が自分のドジに絶望して突っ伏していた。その伏せてるのは、床じゃなくてオレの上体なわけだが。
「バシさん怪我してない?」
「……ねえよ」
「本当?医務室行く?」
「行かねえ」
そんな気遣いするくらいならさっさと退いてくれ。あとできればそこで身動きするな。……そこでモゾモゾするなって言ってんだよ!
「あーあ、ドジしたな……」
名前は全く動く気配なく、そのまま横面をオレの胸に押し付けた。待て、やめろ、バカ早い心臓の音聞かれたら死ぬ。お前はなんとも思ってないかもしれねえがこっちは絶賛男子高校生なんだよ。
お前が本当の本当に、オレのことをなんとも思っていないのは……否オレたちをなんとも思っていないのは知っている。夏休みの休養日に1年誘って海に行こうというのでついて行ったら、男子高校生基準でとんでもなく攻めた水着を着てこられた時点でわかっている。お前は「いや〜お友達と海に行くなら着てみたかったんだよねこういうの!」と朗らかに言ってのけ、高田城から「……後は任せた」と言わんばかりに肩を叩かれた。酷く同情的な視線と共に。お前は真っ白の肌を思い切り晒してフラフラしてるから、こっちはお前が変な男に絡まれないように必死すぎて海水浴どころではなかった。スランプに陥った真波を励ます気があったのはわかっているが、そもそもあの坂バカを励ますなら小田原に降りるより箱根を登った方が効果あったろ。
「さて、と……本当に怪我ない?頭ゴンしてない?」
「してねえ。お前は?」
「バシさんが下敷きになってくれたおかげでなんとも」
「そうかよ」
名前が漸く身を起こす。それに合わせて肘を立てて、身を起こそうとして。やれやれ、これでやっとオレも自由の身に……
「名前?」
名前は一向に降りてくれる気配がなく、ドアの方を凝視して顔を引き攣らせた。オレも同じようにドアの方を振り返って。そこにあったのはキューブリックの名作の如く、ドアの隙間から顔を出す副主将の姿。
「ヒッ」
「お前ら、部室で不純異性交遊たあ、いい度胸じゃねーーーか……」
「黒田さん事故!これは事故です!!!!」
「事故だが事後だが知らねーがいい加減にしろよてめえら!!」
「だから事故だって!」
黒田さんがとんでもないことを言い出したが、名前は「流石に襲ってないです!」と一生懸命弁解した。……襲われる可能性はないってか?オレは脱力して床に仰向けになった。どうせ洗濯するんだ、どうにでもなれ。名前と黒田さんはまだ言い争っている。
「どっちでもいいからさっさと降りろ!今ならローラー3本追加で、塔一郎に黙っといてやるから!」
「ボクがどうしたって?」
「「ヒッ」」
名前と黒田さんが息を呑む。よりによっていちばん見つかりたくない人に……上下逆さまの視界で、泉田さんの大きな目玉がギラっと光っていた。
