ススメスプリングチキン
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「迅くんてまめだなー」
ある日の部室。個人練を終え、足早に部室を出た田所迅を見送って。修作は感心したように言った。今日も『例の彼女』のバイト先に行くらしい。女子に人気のおしゃれなカフェのはずが、いつもメニューにないボリューム重視の料理が出てくるのだという。
修作が「いやー春だなー」とニマニマ笑った。オレも修作も、自分の関わらない恋愛沙汰は結構面白がれる方だ。当初は痴話喧嘩に気を取られて部が疎かにされてはたまらないと懸念していたが、それも今はない。
「同じ学科の女の子が付き纏われてるからってその子のシフトに合わせてバイト先通ってるんだろ?」
「らしいな」
「迅くん、『妹みたいなモンだ』って言うけどあれは絶対……やべ!こんな時間!遅刻だー!」
こいつも今日は例の先輩と待ち合わせているのだという。「尽八、鍵ヨロシクなー」と言い残して騒がしく出ていった。どいつもこいつも、揃って春。
部室にひとりきり。ため息を吐く。誰に言っている。折角手に入れたこの城。アイツと走るための自転車部、その本拠地。間違っても施錠を怠るはずがない。このオレが。
しかし少しずつ新生活に慣れて、最近オレ達の間で自転車以外の話となるともっぱらこれだ。田所迅は絶対口にしないが、彼女に惚れているのだろう。この東堂尽八に言わせてみれば、わかりやすすぎる。勿論、田所迅の気持ちもわからなくもない。付き合おうにもそうし辛い状況ではあるだろう。ヤツの性格的にも彼女の弱みに付け入ったみたいだと気後れしているに違いない。オレに言わせてみれば、この状況は「オレにしとけよ」というたった一言で解決するのだが……ヤツにこのセリフが言えるかは謎だな。
少し前までは、あそこまで尽くされて靡かない女は、やめておけという気持ちが強かった。相談に乗ってしまったせいで、今は五分五分。
先日田所迅は苗字と口論になって、「態度をハッキリしろ」と怒鳴ってしまったらしい。しかもその時彼女は靴擦れしていたというのに、それにも全く気づかなかったのだと。その場を通りがかった先輩のとりなしもあって田所迅はすぐに謝ったらしいが、「もう終わりだ……オレは……オレは……!」と部室に来るなり頭を抱えていたのが記憶に新しい。終わりなものか。むしろ、自分の気持ちに気がついて、ようやくスタート地点に立ったといえよう。
それからしばらく、ふたりの一体何があったのか。ふとした時に何かを思い出してモジモジウジウジする田所迅が少し鬱陶しくもあり。「また例のストーカー男か?もうそのストーカー男にもう二度と彼女に近づくなって宣言して、お前が彼氏になるしかないだろ」と今からとれる打開策を提案すると顔を真っ赤にして黙ってしまった。おや。少し前だったらありえねーと吠えただろうに、今はその気があるらしい。
関係前進の兆しが見えたのなら、ここで攻めずにいつ攻める!お前のウリは攻めの走りだろう!こんなところでモジモジしている場合か!!オレの叱咤激励が効いたか、その日は今後の対応について話が盛り上がり、例のストーカー野郎には誓約書にサインをさせるという方針にまとまった。
オレたちはそれぞれ期限の近い課題があるというのに、誓約書の文言を必死になって考えた。苗字名前に接近しないこと。同じようなことを繰り返せば今度こそ然るべき機関へ。随分周りくどい方法だが、当の苗字が「双方穏便な学生生活を送ること」を望んでいると言うのだから仕方あるまい。
オレが手出しするのはそこまでで、あとは田所迅と苗字がどうにかすることだ。最近は、例のストーカー男も田所が隣にいる時は近寄ってこないと言うし、解決の日は近いだろう。
田所迅は協力的なオレに驚いていたが、オレだって別に自転車一本で彼女作るなと言ってるわけじゃない。走りに影響させるなというだけ。ただ、自分の気持ちに折り合いをつけたフリはしない方がいいと知っているから、少しおせっかいを焼いてしまった。目を閉じずとも思い出せる。あの夏の日。
「さて、課題を……」
まだ履修登録も終わったばかりだというのに、すでに各科目山ほど課題が出されている。まだ期限に余裕はあるが、明日も新しい課題が出されることはわかっているから、これは今日片付けておくべきだろう。1日で片付けるには、どれも少々厄介だが……自分で選んだんだろ、東堂尽八。この大学を選んだのはアイツと走るためだ。お前と走るためなら、オレはなんだってするしなんだってできる。いつも夢見ている。お前と肩を並べて走る日を。
……その夢の実現のために、まずはこのややこしい般教の課題を倒すことから。オレはため息をついてテキストを開いた。数分後には田所迅を悩ます女の存在はすっかり頭の中から消え去った。
ある日の部室。個人練を終え、足早に部室を出た田所迅を見送って。修作は感心したように言った。今日も『例の彼女』のバイト先に行くらしい。女子に人気のおしゃれなカフェのはずが、いつもメニューにないボリューム重視の料理が出てくるのだという。
修作が「いやー春だなー」とニマニマ笑った。オレも修作も、自分の関わらない恋愛沙汰は結構面白がれる方だ。当初は痴話喧嘩に気を取られて部が疎かにされてはたまらないと懸念していたが、それも今はない。
「同じ学科の女の子が付き纏われてるからってその子のシフトに合わせてバイト先通ってるんだろ?」
「らしいな」
「迅くん、『妹みたいなモンだ』って言うけどあれは絶対……やべ!こんな時間!遅刻だー!」
こいつも今日は例の先輩と待ち合わせているのだという。「尽八、鍵ヨロシクなー」と言い残して騒がしく出ていった。どいつもこいつも、揃って春。
部室にひとりきり。ため息を吐く。誰に言っている。折角手に入れたこの城。アイツと走るための自転車部、その本拠地。間違っても施錠を怠るはずがない。このオレが。
しかし少しずつ新生活に慣れて、最近オレ達の間で自転車以外の話となるともっぱらこれだ。田所迅は絶対口にしないが、彼女に惚れているのだろう。この東堂尽八に言わせてみれば、わかりやすすぎる。勿論、田所迅の気持ちもわからなくもない。付き合おうにもそうし辛い状況ではあるだろう。ヤツの性格的にも彼女の弱みに付け入ったみたいだと気後れしているに違いない。オレに言わせてみれば、この状況は「オレにしとけよ」というたった一言で解決するのだが……ヤツにこのセリフが言えるかは謎だな。
少し前までは、あそこまで尽くされて靡かない女は、やめておけという気持ちが強かった。相談に乗ってしまったせいで、今は五分五分。
先日田所迅は苗字と口論になって、「態度をハッキリしろ」と怒鳴ってしまったらしい。しかもその時彼女は靴擦れしていたというのに、それにも全く気づかなかったのだと。その場を通りがかった先輩のとりなしもあって田所迅はすぐに謝ったらしいが、「もう終わりだ……オレは……オレは……!」と部室に来るなり頭を抱えていたのが記憶に新しい。終わりなものか。むしろ、自分の気持ちに気がついて、ようやくスタート地点に立ったといえよう。
それからしばらく、ふたりの一体何があったのか。ふとした時に何かを思い出してモジモジウジウジする田所迅が少し鬱陶しくもあり。「また例のストーカー男か?もうそのストーカー男にもう二度と彼女に近づくなって宣言して、お前が彼氏になるしかないだろ」と今からとれる打開策を提案すると顔を真っ赤にして黙ってしまった。おや。少し前だったらありえねーと吠えただろうに、今はその気があるらしい。
関係前進の兆しが見えたのなら、ここで攻めずにいつ攻める!お前のウリは攻めの走りだろう!こんなところでモジモジしている場合か!!オレの叱咤激励が効いたか、その日は今後の対応について話が盛り上がり、例のストーカー野郎には誓約書にサインをさせるという方針にまとまった。
オレたちはそれぞれ期限の近い課題があるというのに、誓約書の文言を必死になって考えた。苗字名前に接近しないこと。同じようなことを繰り返せば今度こそ然るべき機関へ。随分周りくどい方法だが、当の苗字が「双方穏便な学生生活を送ること」を望んでいると言うのだから仕方あるまい。
オレが手出しするのはそこまでで、あとは田所迅と苗字がどうにかすることだ。最近は、例のストーカー男も田所が隣にいる時は近寄ってこないと言うし、解決の日は近いだろう。
田所迅は協力的なオレに驚いていたが、オレだって別に自転車一本で彼女作るなと言ってるわけじゃない。走りに影響させるなというだけ。ただ、自分の気持ちに折り合いをつけたフリはしない方がいいと知っているから、少しおせっかいを焼いてしまった。目を閉じずとも思い出せる。あの夏の日。
「さて、課題を……」
まだ履修登録も終わったばかりだというのに、すでに各科目山ほど課題が出されている。まだ期限に余裕はあるが、明日も新しい課題が出されることはわかっているから、これは今日片付けておくべきだろう。1日で片付けるには、どれも少々厄介だが……自分で選んだんだろ、東堂尽八。この大学を選んだのはアイツと走るためだ。お前と走るためなら、オレはなんだってするしなんだってできる。いつも夢見ている。お前と肩を並べて走る日を。
……その夢の実現のために、まずはこのややこしい般教の課題を倒すことから。オレはため息をついてテキストを開いた。数分後には田所迅を悩ます女の存在はすっかり頭の中から消え去った。
