ススメスプリングチキン
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店長は田所を気に入ったようだ。田所が店に来た時、私はドリンク作りに追われていて、気づいたら田所が大盛りのビーフシチューを食べていた。ちなみにこの店のメニューにビーフシチューは無い。
店長は「名前ちゃんのお友達だってね、いい子ね」と田所のどこを気に入ったのかニコニコしていて、私も早めに上がらされて何故か田所と一緒のテーブルでまかないを食べた。田所は山盛りのシチューを食べ終えて、デザートを食べていた。田所の来店目的が「ヤツの対応について話し合うこと」だと知った店長からのサービス。チョコレートサンデー。
ヤツはこの店に週に何度も来て常連になりつつあるけど、決して良客ではない。むしろ迷惑客。長時間居座ったりバイト店員(言わずもがな私のことだ)にしつこく話しかけ、閉店後も店の前で店員の退勤待ちをするので店長も困っている。「あんまりエスカレートするなら出禁にしなくちゃかしら」と店長が頭を悩ませていることを、ヤツは知らない。
このカフェは女性の店長がひとりで切り盛りしているし、バイトも女性だけだし、なかなか対応に苦慮している状態だった。ヤツが出禁になるより先に、私がバイトをやめた方がいいかもしれないと最近考え始めた。店長は「名前ちゃんせっかくウチに来てくれたのに」って言ってくれるけど、ここでバイトしたい子なんてきっとすぐに見つかる。私は次は、もっと裏方のバイトを……でも出待ちされるならどこも同じか。とにかく、これ以上迷惑かけるようならここを辞めなければいけない。そういう状況で田所が来たので、店長は喜んでいた。
チョコレートサンデー、いいな私も食べたいな……週末のロングシフトのご褒美にしようかな。田所がチョコレートサンデーの器から顔を上げた。
「そういう格好してるの……珍しいな」
田所は私の格好をまじまじ見てそう言ったが、特に他意はなさそうだった。いつも私が大学ではひらひらしたスカートしか履いていないから言ったのだと思う。バイトだから髪はくくって、黒いパンツにエプロン。私は恥ずかしくなってエプロンの裾を伸ばした。
「や、あんま見ないで。足太いから」
「ブッ」
「……足太いからいつもスカートばっかり履いてるの。うちの学部実験とか全然ないし、毎日好きな格好できていいよね」
「ふ、太くはないだろ……」
田所はまずいこと言ったなという顔で視線をすいっと逸らした。チョコレートサンデーを突こうにも、ガラスの器は空っぽになっている。代わりにお冷を煽った。耳が赤い。あれ、女の子の免疫はあると思ったんだけどな。
……あの緑髪のギャル、かなり細身だったな、ダイエットとか要らなそうだし、こういう話題にはならなそう。逆に「もっと食え!」「そんなに食えないショ」とか言ってる光景の方が想像できる(謎の語尾だが、なんだかそんな気がしたのだ)。ほろ苦い気持ちになりながら私は笑って見せた。気にしていませんよという感じで。
「ありがと。学部決める時、化学類と悩んだけど決め手はこれなんだ。毎日ひらひらスカートオッケーで最高」
「”残業”も少ないしな」
田所がニヤっと笑った。ひとつの実験に時間がかかる化学類・応用理工学類の入る棟などは新学年になったばかりというのに連日夜遅くまで電気がついている。それらの学部と比べて、情報工学部 は比較的健全な時間に帰れることが多い、という噂だ。ただし学士のうちは。研究発表を控えた上級生・院生などはその限りではない、らしい。もし院に進むならそういうことも考えないといけない。
「田所は?なんで筑士波に……情工にしたの?地元千葉だっけ?近いから?」
「うぐ」
「……これ、聞いちゃだめだったヤツ?」
「え?イヤ、そういうわけじゃ……」
今度は渋い顔になった。表情がコロコロ変わって見ていて飽きない。聞いちゃまずかったかな。別に、他の大学希望していたけどランク下げて筑士波に来た人なんて珍しくもない。アイツもそう。私は挑戦のつもりで受けて奇跡的に受かって、入試成績は多分下から数えたほうが早い。学部の人たちはみんな自分より頭が良く見える。
「他に行きたかった大学があったってだけだ……まあ、学費安いし、今となっては入学前にネックだったところも解決したしな」
やっぱりそうなんだ。私はもっと詳しく聞きたいなと思ったけど、田所はそれ以上話すつもりはないようだった。何かを思い出すみたいにその目は遠くを見ている。きっと男の子の踏み込めない領域だと思って、私はそれ以上尋ねるのをやめて、まかないのビーフシチューを口に運んだ。
聞きたいこと、実はまだたくさんある。いつも一緒にいる他学部のふたりのこと。たまに喋っているところを見る、上級生のこと。それから、緑髪のギャルのことも。もう少し仲良くなったら聞けるかな。いつか、田所の口から聞いてみたい。
店長は「名前ちゃんのお友達だってね、いい子ね」と田所のどこを気に入ったのかニコニコしていて、私も早めに上がらされて何故か田所と一緒のテーブルでまかないを食べた。田所は山盛りのシチューを食べ終えて、デザートを食べていた。田所の来店目的が「ヤツの対応について話し合うこと」だと知った店長からのサービス。チョコレートサンデー。
ヤツはこの店に週に何度も来て常連になりつつあるけど、決して良客ではない。むしろ迷惑客。長時間居座ったりバイト店員(言わずもがな私のことだ)にしつこく話しかけ、閉店後も店の前で店員の退勤待ちをするので店長も困っている。「あんまりエスカレートするなら出禁にしなくちゃかしら」と店長が頭を悩ませていることを、ヤツは知らない。
このカフェは女性の店長がひとりで切り盛りしているし、バイトも女性だけだし、なかなか対応に苦慮している状態だった。ヤツが出禁になるより先に、私がバイトをやめた方がいいかもしれないと最近考え始めた。店長は「名前ちゃんせっかくウチに来てくれたのに」って言ってくれるけど、ここでバイトしたい子なんてきっとすぐに見つかる。私は次は、もっと裏方のバイトを……でも出待ちされるならどこも同じか。とにかく、これ以上迷惑かけるようならここを辞めなければいけない。そういう状況で田所が来たので、店長は喜んでいた。
チョコレートサンデー、いいな私も食べたいな……週末のロングシフトのご褒美にしようかな。田所がチョコレートサンデーの器から顔を上げた。
「そういう格好してるの……珍しいな」
田所は私の格好をまじまじ見てそう言ったが、特に他意はなさそうだった。いつも私が大学ではひらひらしたスカートしか履いていないから言ったのだと思う。バイトだから髪はくくって、黒いパンツにエプロン。私は恥ずかしくなってエプロンの裾を伸ばした。
「や、あんま見ないで。足太いから」
「ブッ」
「……足太いからいつもスカートばっかり履いてるの。うちの学部実験とか全然ないし、毎日好きな格好できていいよね」
「ふ、太くはないだろ……」
田所はまずいこと言ったなという顔で視線をすいっと逸らした。チョコレートサンデーを突こうにも、ガラスの器は空っぽになっている。代わりにお冷を煽った。耳が赤い。あれ、女の子の免疫はあると思ったんだけどな。
……あの緑髪のギャル、かなり細身だったな、ダイエットとか要らなそうだし、こういう話題にはならなそう。逆に「もっと食え!」「そんなに食えないショ」とか言ってる光景の方が想像できる(謎の語尾だが、なんだかそんな気がしたのだ)。ほろ苦い気持ちになりながら私は笑って見せた。気にしていませんよという感じで。
「ありがと。学部決める時、化学類と悩んだけど決め手はこれなんだ。毎日ひらひらスカートオッケーで最高」
「”残業”も少ないしな」
田所がニヤっと笑った。ひとつの実験に時間がかかる化学類・応用理工学類の入る棟などは新学年になったばかりというのに連日夜遅くまで電気がついている。それらの学部と比べて、
「田所は?なんで筑士波に……情工にしたの?地元千葉だっけ?近いから?」
「うぐ」
「……これ、聞いちゃだめだったヤツ?」
「え?イヤ、そういうわけじゃ……」
今度は渋い顔になった。表情がコロコロ変わって見ていて飽きない。聞いちゃまずかったかな。別に、他の大学希望していたけどランク下げて筑士波に来た人なんて珍しくもない。アイツもそう。私は挑戦のつもりで受けて奇跡的に受かって、入試成績は多分下から数えたほうが早い。学部の人たちはみんな自分より頭が良く見える。
「他に行きたかった大学があったってだけだ……まあ、学費安いし、今となっては入学前にネックだったところも解決したしな」
やっぱりそうなんだ。私はもっと詳しく聞きたいなと思ったけど、田所はそれ以上話すつもりはないようだった。何かを思い出すみたいにその目は遠くを見ている。きっと男の子の踏み込めない領域だと思って、私はそれ以上尋ねるのをやめて、まかないのビーフシチューを口に運んだ。
聞きたいこと、実はまだたくさんある。いつも一緒にいる他学部のふたりのこと。たまに喋っているところを見る、上級生のこと。それから、緑髪のギャルのことも。もう少し仲良くなったら聞けるかな。いつか、田所の口から聞いてみたい。
