ススメスプリングチキン
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大学3年生、春。休日11時。ひとっ走り終えて帰宅。シャワー浴びて、昼まで何すっかなと考えていたところで、ようやく名前が起きてきて。
「はよ。なんか食うか?」
「ラーメン食べいきたい……」
「ラーメン?」
「だめ?」
「いや、ラーメンな。どこがいい?」
「あれがいい、醤油の……水餃子も……」
「じゃいつもの所でいいな」
「うん、服着て髪縛ったらすぐ出れる。10分」
「わかった」
オレが頷いたのを見て、名前が頭ごと炬燵に突っ込む。ギョッとしたが、声は出さない。顔を洗う間だけでも服をあっためておこうという算段だろう。最近はとにかく寒くて、ここより暖かい所の出身だという名前は1限出席に苦労している。
頭だけつっこんで尻を上げてるせいでパジャマがめくれ上がる。白い背中が丸出しになる。なるべく真ん中辺に突っ込もうとしてるのだろう、しばらく炬燵の中でゴソゴソした後、名前が顔を出す。炬燵布団に揉まれて髪はボサボサになっている。
「……なに?」
間抜けな顔。あと10分で出るなら化粧は無しか?化粧っ気のない顔を観察していることがバレないように言葉を選ぶ。
「起きて1食目からラーメン……元気だなあと思ってよ」
「へへ……」
照れるどころか誇らしげに笑う、名前のいうところの乙女心ってヤツは難解すぎる。
大暴れの髪を指先で簡単に直してやる。それに気づいた名前は恥ずかしそうに目を伏せる。何の色もついてない頬が染まって、細い指先がオレの手首を掴んで止める。さっきまで笑ってた口が引き結ばれている。
「どうした」
「……か、顔だけ洗ってくるね」
「……おう」
そうして逃げるように洗面所へ去っていった。パジャマの裾引きずって。直しきれなかった後頭部の寝癖を見送る。
ドキドキ暴れる心臓をそっと抑える。寝起きの名前にはバレてないはずだ。名前のああいう顔には、いつもドキッとさせられる。ああいうフニャフニャしたつーか、照れてる顔。
付き合う前はああいう感じじゃなかった。ああいう甘えた態度をとるなんて想像もつかなかった。名前はいつも同学科の男に話しかけられてもツーンて感じで、オレ含む男どもは皆近寄りがたいと感じていた。毎日キレイに化粧も髪もやって、学科の数少ない女子としか話さない、女子っぽい女子。短期留学してきた巻島など、名前をひと目見て「田所っちシュミ、変わったなァ……」と信じられない顔していた。オレだって”あの件”がなければ、名前とはほとんど関わることもなかっただろう。
それが今じゃこの気の許しよう。付き合ってすぐの頃、絶対化粧を落とした顔を見せなかった名前が、起きて10分で、前髪だけ直したそのままで出かけるようになった。スカートしか履かなかった名前がラフな服を着るようになった。
そういうことに気づく度、気の強い猫が懐いたみたいで、くすぐったい……いや、嬉しいのか。嬉しいんだ、俺は。自分にだけ見せてくれる顔というものは素直に嬉しい。ツーンとしてたのは、名前が男ばかりの学科でやっていくための処世術だった。それがオレ相手にいらなくなったということが、嬉しい。
「迅くん」
「行けるか?」
洗面所から顔を出した名前は、小さい手のひらで顔を覆い隠している。……行けなそうだな。さっきまでは晒していた素顔を今更隠すわけがわからない。消え入りそうな声で。
「やっぱり眉毛だけ描いてもいい……?」
うおー!何分でも待つぜ!!オレは!!自分だけにしか見せない一面というのはこんなにも嬉しいのだと再度噛み締めて、オレは「好きなだけ描けよ」と物分かりのいい返事をした。
「はよ。なんか食うか?」
「ラーメン食べいきたい……」
「ラーメン?」
「だめ?」
「いや、ラーメンな。どこがいい?」
「あれがいい、醤油の……水餃子も……」
「じゃいつもの所でいいな」
「うん、服着て髪縛ったらすぐ出れる。10分」
「わかった」
オレが頷いたのを見て、名前が頭ごと炬燵に突っ込む。ギョッとしたが、声は出さない。顔を洗う間だけでも服をあっためておこうという算段だろう。最近はとにかく寒くて、ここより暖かい所の出身だという名前は1限出席に苦労している。
頭だけつっこんで尻を上げてるせいでパジャマがめくれ上がる。白い背中が丸出しになる。なるべく真ん中辺に突っ込もうとしてるのだろう、しばらく炬燵の中でゴソゴソした後、名前が顔を出す。炬燵布団に揉まれて髪はボサボサになっている。
「……なに?」
間抜けな顔。あと10分で出るなら化粧は無しか?化粧っ気のない顔を観察していることがバレないように言葉を選ぶ。
「起きて1食目からラーメン……元気だなあと思ってよ」
「へへ……」
照れるどころか誇らしげに笑う、名前のいうところの乙女心ってヤツは難解すぎる。
大暴れの髪を指先で簡単に直してやる。それに気づいた名前は恥ずかしそうに目を伏せる。何の色もついてない頬が染まって、細い指先がオレの手首を掴んで止める。さっきまで笑ってた口が引き結ばれている。
「どうした」
「……か、顔だけ洗ってくるね」
「……おう」
そうして逃げるように洗面所へ去っていった。パジャマの裾引きずって。直しきれなかった後頭部の寝癖を見送る。
ドキドキ暴れる心臓をそっと抑える。寝起きの名前にはバレてないはずだ。名前のああいう顔には、いつもドキッとさせられる。ああいうフニャフニャしたつーか、照れてる顔。
付き合う前はああいう感じじゃなかった。ああいう甘えた態度をとるなんて想像もつかなかった。名前はいつも同学科の男に話しかけられてもツーンて感じで、オレ含む男どもは皆近寄りがたいと感じていた。毎日キレイに化粧も髪もやって、学科の数少ない女子としか話さない、女子っぽい女子。短期留学してきた巻島など、名前をひと目見て「田所っちシュミ、変わったなァ……」と信じられない顔していた。オレだって”あの件”がなければ、名前とはほとんど関わることもなかっただろう。
それが今じゃこの気の許しよう。付き合ってすぐの頃、絶対化粧を落とした顔を見せなかった名前が、起きて10分で、前髪だけ直したそのままで出かけるようになった。スカートしか履かなかった名前がラフな服を着るようになった。
そういうことに気づく度、気の強い猫が懐いたみたいで、くすぐったい……いや、嬉しいのか。嬉しいんだ、俺は。自分にだけ見せてくれる顔というものは素直に嬉しい。ツーンとしてたのは、名前が男ばかりの学科でやっていくための処世術だった。それがオレ相手にいらなくなったということが、嬉しい。
「迅くん」
「行けるか?」
洗面所から顔を出した名前は、小さい手のひらで顔を覆い隠している。……行けなそうだな。さっきまでは晒していた素顔を今更隠すわけがわからない。消え入りそうな声で。
「やっぱり眉毛だけ描いてもいい……?」
うおー!何分でも待つぜ!!オレは!!自分だけにしか見せない一面というのはこんなにも嬉しいのだと再度噛み締めて、オレは「好きなだけ描けよ」と物分かりのいい返事をした。
