去る春、君の声だけが在る2
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救護テントで看護師さんがくれた保冷剤、それから2年連続で優勝を逃した学校の女子マネを憐れんだ新聞社の人がくれた冷凍ジュース。規制の影響もあり、新聞社の車はのろのろゴールに向かった。無駄に時間がかかったおかげで、目の腫れはだいぶマシになったように思う。どうせ皆泣いてるだろうけど、自分が気になるから。軽く前髪を直して、帽子を被り直し、新聞社の人にお礼を言って車を降りる。
表彰式前で賑やかなのが、表彰台のあるステージ。そこを遠目に眺めてゴール地点を彷徨い歩く。千葉が、総北が、小野田が2年連続総合優勝を果たしたとあって、ゴール会場はもっと興奮に包まれているものと思ったが、この辺り……駐車場、そして各校の控えテントは案外静かだった。すでに結構な人数がゴールしていて、3日間の戦いを終えそれぞれクールダウンや片付けの最中だ。各県ごとに仕切られたブースだけを見るなら、普段のレースと変わらない穏やかな景色。この喋りながら選手やメカニックが自転車や体のメンテナンスをしている光景は結構好き。レース前、それから最中の緊迫した空気が解けて日常に戻ってきたのを感じる。
遠くの方でわあっと歓声が上がる。誰かゴールしたのか、それとも取材か撮影か何かか。千葉代表の方は近づきたくないな。寒咲さんにおめでとうって言いたいけど、それは今じゃなくていい。
重たい足を引き摺るようにして神奈川代表テントを目指す。マネメカチャットからの指示は「控えテント直行、高田城がひとりで撤収関係の指示出しをしているからそれを手伝うように」と。合流が遅れたが、元々の予定通り。バタバタしているだろうから、表彰式は見に行けない……最悪行かなくてもいい流れだ。真波の他にも部員が乗るようなら見にいった方がいいのかもしれないが。
「やっぱ山王すげー!」
「ハコガクの葦木場もすげえよ、ひとりでゼッケン何枚とったんだ?」
「3かな?」
話題はそっちにいったか。安心したような、余計に悪化したような。知り合いに全然会えなくて思考はぐるぐる、底に落ちていく。
ダメだった。ダメじゃない。総合優勝できなかったんだからダメでしょ、いやあれだけゼッケン掻っ攫ってダメなわけない。ここまでとった総北対策はどれもうまくいった。その上で最後の最後、総合優勝が取れなかった。それだけ。総北だって前年王者の意地でなんとか総合優勝だけは勝ち取ったって形だ。でもOB会はダメって言うと思うよ、やっぱスプリンターに主将を任しちゃダメだって。それとこれは別でしょ。別じゃないし、だってやっぱ最後はキツいし、落ちてるかも。そんなわけないでしょ、落ちないためにあれだけ対策重ねてきてるんだから、きっとゴールしてるはず。それを言うならあれだけ対策したのに、また総合優勝逃したんですけど。……えーっと、それは。楽天的な自分と諦めモードな自分が言い争って、脳内が騒がしい。しかも、楽天的な方が言い負かされている。
連絡チャットを見てもゴール後の様々な連絡は飛び交うが、今のところリザルトについては言及なし。タイムやゼッケン関係の担当部員は今頃記録だなんだに追われている頃に違いない。ある程度の状況は本部テント、またはもっと手軽にリザルトチャットを見にいけばわかるけど、今はその気力も勇気もない。
耳に入った情報を繋ぎ合わせてわかったのは真波が2位で、葦木場さんがゴールして、消去法で手嶋がリタイアしている。救護テントにいる間、いつ黒田さんが担ぎ込まれてくるかヒヤヒヤしたが、結局来なかった。ゴールしたのか、あるいはゴール付近でひっくり返っていたとしたら多分そのままゴール地点の救護室に担ぎ込まれているだろう。安否不明。2年チャットもあれきり見ていないからあの後泉田さんがどうなったのかわからない。それから最前線の黒田さん達から逸れ、後方に流れたとかいう悠人のことも。いや、ゴールしたかどうかの確認はもう、大した意味がない。今日ここで、真波が負けて箱根学園は総合優勝を逃した。リザルト担当者もひとりで撤収指揮を取るレイさんも大忙しの頃だろう。あとで確認すればいい。とりあえずチームと合流しないと。
靴の裏がアスファルトに引っかかって、靴底が削れる嫌な感触。疲れすぎて足が上がっていない。別に、大した働きはしてないのにな。せめて、片付けでお役に立とう。意識してつま先を持ち上げる。すれ違う観戦客を避ける。ふたり組、満足そうに感想を語り合っていた。
「泉田は2枚で確定か?」
「ああ。初日は銅橋だったし、今年はハコガクがコンプだ」
「鳴子が3日とも全然出られなかったのが痛かったなー」
「あれは仕方ないだろ。最前線狙えるエース候補だってことだよ」
「総北のエース制度はマジでどうなってんだ」
え?思わず足が止まる。泉田さん、完走した?
表彰式前で賑やかなのが、表彰台のあるステージ。そこを遠目に眺めてゴール地点を彷徨い歩く。千葉が、総北が、小野田が2年連続総合優勝を果たしたとあって、ゴール会場はもっと興奮に包まれているものと思ったが、この辺り……駐車場、そして各校の控えテントは案外静かだった。すでに結構な人数がゴールしていて、3日間の戦いを終えそれぞれクールダウンや片付けの最中だ。各県ごとに仕切られたブースだけを見るなら、普段のレースと変わらない穏やかな景色。この喋りながら選手やメカニックが自転車や体のメンテナンスをしている光景は結構好き。レース前、それから最中の緊迫した空気が解けて日常に戻ってきたのを感じる。
遠くの方でわあっと歓声が上がる。誰かゴールしたのか、それとも取材か撮影か何かか。千葉代表の方は近づきたくないな。寒咲さんにおめでとうって言いたいけど、それは今じゃなくていい。
重たい足を引き摺るようにして神奈川代表テントを目指す。マネメカチャットからの指示は「控えテント直行、高田城がひとりで撤収関係の指示出しをしているからそれを手伝うように」と。合流が遅れたが、元々の予定通り。バタバタしているだろうから、表彰式は見に行けない……最悪行かなくてもいい流れだ。真波の他にも部員が乗るようなら見にいった方がいいのかもしれないが。
「やっぱ山王すげー!」
「ハコガクの葦木場もすげえよ、ひとりでゼッケン何枚とったんだ?」
「3かな?」
話題はそっちにいったか。安心したような、余計に悪化したような。知り合いに全然会えなくて思考はぐるぐる、底に落ちていく。
ダメだった。ダメじゃない。総合優勝できなかったんだからダメでしょ、いやあれだけゼッケン掻っ攫ってダメなわけない。ここまでとった総北対策はどれもうまくいった。その上で最後の最後、総合優勝が取れなかった。それだけ。総北だって前年王者の意地でなんとか総合優勝だけは勝ち取ったって形だ。でもOB会はダメって言うと思うよ、やっぱスプリンターに主将を任しちゃダメだって。それとこれは別でしょ。別じゃないし、だってやっぱ最後はキツいし、落ちてるかも。そんなわけないでしょ、落ちないためにあれだけ対策重ねてきてるんだから、きっとゴールしてるはず。それを言うならあれだけ対策したのに、また総合優勝逃したんですけど。……えーっと、それは。楽天的な自分と諦めモードな自分が言い争って、脳内が騒がしい。しかも、楽天的な方が言い負かされている。
連絡チャットを見てもゴール後の様々な連絡は飛び交うが、今のところリザルトについては言及なし。タイムやゼッケン関係の担当部員は今頃記録だなんだに追われている頃に違いない。ある程度の状況は本部テント、またはもっと手軽にリザルトチャットを見にいけばわかるけど、今はその気力も勇気もない。
耳に入った情報を繋ぎ合わせてわかったのは真波が2位で、葦木場さんがゴールして、消去法で手嶋がリタイアしている。救護テントにいる間、いつ黒田さんが担ぎ込まれてくるかヒヤヒヤしたが、結局来なかった。ゴールしたのか、あるいはゴール付近でひっくり返っていたとしたら多分そのままゴール地点の救護室に担ぎ込まれているだろう。安否不明。2年チャットもあれきり見ていないからあの後泉田さんがどうなったのかわからない。それから最前線の黒田さん達から逸れ、後方に流れたとかいう悠人のことも。いや、ゴールしたかどうかの確認はもう、大した意味がない。今日ここで、真波が負けて箱根学園は総合優勝を逃した。リザルト担当者もひとりで撤収指揮を取るレイさんも大忙しの頃だろう。あとで確認すればいい。とりあえずチームと合流しないと。
靴の裏がアスファルトに引っかかって、靴底が削れる嫌な感触。疲れすぎて足が上がっていない。別に、大した働きはしてないのにな。せめて、片付けでお役に立とう。意識してつま先を持ち上げる。すれ違う観戦客を避ける。ふたり組、満足そうに感想を語り合っていた。
「泉田は2枚で確定か?」
「ああ。初日は銅橋だったし、今年はハコガクがコンプだ」
「鳴子が3日とも全然出られなかったのが痛かったなー」
「あれは仕方ないだろ。最前線狙えるエース候補だってことだよ」
「総北のエース制度はマジでどうなってんだ」
え?思わず足が止まる。泉田さん、完走した?
