青く光っている
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「あっ雉の女」
グラスエリアで鈴音さんが声を上げた。視線の先には同い年くらいの女の子が腕を組んで立っている。
「おーい!そんなとこで見えないでしょ!おーいってば!」
そこはピットエリアからも離れていて、確かにレースを観戦するには少し遠い。声が聞こえていないのか、返事はなく鈴音さんがどんどん近づいていく。ボクも慌ててそれを追った。
「コラ!雉の女!無視するなっつーの!」
「……」
「無視するなってば!!」
「私、雉の女なんて名前じゃない」
「ちっ」
「鈴音ちゃんに舌打ちされたって雷音さんに泣きつこうかな」
「……名前ちゃん、こんにちは」
「こんにちは。鈴音ちゃん、やる気入ってるね」
名前さん……はようやく振り返って鈴音さんを見た。呼び方が不満だったらしい。帽子を深くかぶっていて顔はあまり見えない。鈴音さんに追いついたボクにも「こんにちは」と挨拶をしてくれて、ボクも慌てて返した。
「あったりまえでしょ!今日という今日は負けないからね!お兄ちゃんもすっごくやる気入ってるんだから!!」
「そうだね……今日の雷音さん、すごい気迫だ。スタート直後からかなりトバしてたしそのまま走ってる」
「雉も結構上げてたわ。まあ、お兄ちゃんほどじゃないけど!!」
チェイサーさんの話をする時に僅かに表情が緩むのがわかる。仲がいいのかもしれない。しかしこの人が、雉くんの……恋人。美男美女でお似合いだと思った。帽子と長袖の上着にタオルをかけて、日焼け対策を念入りにしているのが見てとれる。そこまでして、雉くんの応援に来てるんだなあとあったかい気持ちになる。が。
「弓射くんはいつもあんな感じだから、ほっといていいよ。こっちも好きに見るので」
「アンタはせっかく見にきたんだからもうちょっと盛り上がりなさいよ」
鈴音さんは名前さんにプンプン怒ってどうどうと宥められていた。鈴音さんの肩越しに目が合う。
「初観戦がこれか。やっぱりキミ、”持ってる”ね」
名前さんの帽子の下の目が無感動に、キラッと光ってボクを見た。
「それって……」
聞き返す前に視線を逸らされ、名前さんはポシェットをゴソゴソ漁った。
「……ラムネ食べる?水は足りてる?弓射くん、今日飲み物多めに持ってきてるみたいだから、足りなかったら言ってね」
「あ、ハイ!ありがとう、ございます……」
「鈴音ちゃんもどうぞ。倒れると弓射くんに怒られるよ」
「ありがと!ちなみに怒られるのはアンタだけだから!」
「……確かに、坂道くんのことは怒らないで心配するかも」
「え?」
ボクにむけられた意味深な視線に思わず声を上げるも、名前さんはそれをさえぎった。表情は一切変わらずに、右手を上げる。袖から僅かにのぞいた指先は真っ白で細い。
「先頭もうすぐ降りてくるよ」
「あっ!」
名前さんが山林を指さす。木々のせいでまだ姿は見えないが、きっと先頭の影は迫っている。
「さっさと行くわよ!」
「あ、」
鈴音さんは慌ててラムネを飲み込み、荷物をまとめる。名前さんはそれを黙って見てた。風が吹いて、一つに結んだ長い髪が草と一緒にひらひら揺れた。
「行かないんですか?」
「うん。6周あるし、ここからならどのエリアも遠目に見えるから」
せっかく来たんだし、雉くんも恋人に熱心に応援されたいんじゃないか?ボクは余計な気を回して、もうひと押しを試みる。
「ほ、本当にいいんですか?」
「うん、別に勝敗が見たいわけじゃないから。補給も私の仕事じゃないし……坂道くんは早く降りたほうがいいよ。2人とも速いから」
「はい」
随分、アッサリしてるなあ……なんならチェイサーさんの話をしてる時の方がワクワクしていたような気さえする。
「斜面、崖のとこあるから転ばないようにね」
「はい!」
とっくに先を走る鈴音さんを追って、走り出す。そして注意されたにも関わらず、急斜面でしっかり転んだ。
グラスエリアで鈴音さんが声を上げた。視線の先には同い年くらいの女の子が腕を組んで立っている。
「おーい!そんなとこで見えないでしょ!おーいってば!」
そこはピットエリアからも離れていて、確かにレースを観戦するには少し遠い。声が聞こえていないのか、返事はなく鈴音さんがどんどん近づいていく。ボクも慌ててそれを追った。
「コラ!雉の女!無視するなっつーの!」
「……」
「無視するなってば!!」
「私、雉の女なんて名前じゃない」
「ちっ」
「鈴音ちゃんに舌打ちされたって雷音さんに泣きつこうかな」
「……名前ちゃん、こんにちは」
「こんにちは。鈴音ちゃん、やる気入ってるね」
名前さん……はようやく振り返って鈴音さんを見た。呼び方が不満だったらしい。帽子を深くかぶっていて顔はあまり見えない。鈴音さんに追いついたボクにも「こんにちは」と挨拶をしてくれて、ボクも慌てて返した。
「あったりまえでしょ!今日という今日は負けないからね!お兄ちゃんもすっごくやる気入ってるんだから!!」
「そうだね……今日の雷音さん、すごい気迫だ。スタート直後からかなりトバしてたしそのまま走ってる」
「雉も結構上げてたわ。まあ、お兄ちゃんほどじゃないけど!!」
チェイサーさんの話をする時に僅かに表情が緩むのがわかる。仲がいいのかもしれない。しかしこの人が、雉くんの……恋人。美男美女でお似合いだと思った。帽子と長袖の上着にタオルをかけて、日焼け対策を念入りにしているのが見てとれる。そこまでして、雉くんの応援に来てるんだなあとあったかい気持ちになる。が。
「弓射くんはいつもあんな感じだから、ほっといていいよ。こっちも好きに見るので」
「アンタはせっかく見にきたんだからもうちょっと盛り上がりなさいよ」
鈴音さんは名前さんにプンプン怒ってどうどうと宥められていた。鈴音さんの肩越しに目が合う。
「初観戦がこれか。やっぱりキミ、”持ってる”ね」
名前さんの帽子の下の目が無感動に、キラッと光ってボクを見た。
「それって……」
聞き返す前に視線を逸らされ、名前さんはポシェットをゴソゴソ漁った。
「……ラムネ食べる?水は足りてる?弓射くん、今日飲み物多めに持ってきてるみたいだから、足りなかったら言ってね」
「あ、ハイ!ありがとう、ございます……」
「鈴音ちゃんもどうぞ。倒れると弓射くんに怒られるよ」
「ありがと!ちなみに怒られるのはアンタだけだから!」
「……確かに、坂道くんのことは怒らないで心配するかも」
「え?」
ボクにむけられた意味深な視線に思わず声を上げるも、名前さんはそれをさえぎった。表情は一切変わらずに、右手を上げる。袖から僅かにのぞいた指先は真っ白で細い。
「先頭もうすぐ降りてくるよ」
「あっ!」
名前さんが山林を指さす。木々のせいでまだ姿は見えないが、きっと先頭の影は迫っている。
「さっさと行くわよ!」
「あ、」
鈴音さんは慌ててラムネを飲み込み、荷物をまとめる。名前さんはそれを黙って見てた。風が吹いて、一つに結んだ長い髪が草と一緒にひらひら揺れた。
「行かないんですか?」
「うん。6周あるし、ここからならどのエリアも遠目に見えるから」
せっかく来たんだし、雉くんも恋人に熱心に応援されたいんじゃないか?ボクは余計な気を回して、もうひと押しを試みる。
「ほ、本当にいいんですか?」
「うん、別に勝敗が見たいわけじゃないから。補給も私の仕事じゃないし……坂道くんは早く降りたほうがいいよ。2人とも速いから」
「はい」
随分、アッサリしてるなあ……なんならチェイサーさんの話をしてる時の方がワクワクしていたような気さえする。
「斜面、崖のとこあるから転ばないようにね」
「はい!」
とっくに先を走る鈴音さんを追って、走り出す。そして注意されたにも関わらず、急斜面でしっかり転んだ。
