去る春、君の声だけが在るIF
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先輩たちが厄介なことに巻き込まれてるのは知ってた。なんか突然猫……?そう、猫が来るらしい。いいじゃん。寮暮らしでどこに来るのか知らないけど、猫来たら嬉しいよね。オレ、結構猫好きだし。
朝食、何か騒がしいなと思ったら、ジョーさんが説教していた。相手は向かいに座った名前ちゃん。その隣で泉田さんが黙々と食べてて、名前ちゃんは恐る恐るその様子を伺っている。何やってんだろ?名前ちゃんがジョーさんに怒られてるのは割といつものことだけど、そこに泉田さんがいてそれを黙認しているとなると珍しい。聞き耳を立ててしまう。名前ちゃん、今度は何やらかしたんだろうって。
「レイさん、勘弁してください……すでにいっぱい怒られたから……」
「別にオレから追加の説教があったとて問題ないな?」
「あ、朝ごはんくらい美味しく食べたい!」
「お前な……」
マジで何の説教?とりあえず朝食をもらって、空いた席に座る。泉田さんの反対、名前ちゃんの隣。
「おはよーございます」
「おはよう」
「苗字センパイ、何怒られてたんすか?」
「……」
オレの質問に、さっきまでネチネチ怒ってたジョーさんすら沈黙した。え?オレには教えてくれない感じ?銅橋さんと名前ちゃんが地獄みたいな雰囲気で沈黙したので、多分名前ちゃんが悪いんだけど。泉田さんのため息。
「自由すぎる猫がいてね。昨日は銅橋の部屋で随分暴れたみたいで、その説教を少ししただけだよ」
「ヒッ」
名前ちゃんの声にならない悲鳴。ジョーさんのメガネが光る。
「なんだ、事実だろう」
「そ、そうですね……」
名前ちゃんも銅橋さんも特に反論せず、朝食を再開した。何か言う方が問題があると判断したらしい。空いていたオレの向かいに人が座る。
「悠人にも話しておいた方がいいだろ、関係なくはないんだから」
「ゲッ黒田さん」
「言っとくが苗字、オレはもうこの件説教しねえからな」
「え!」
希望の光が見えたとばかりに名前ちゃんの声が上擦ったが、それは一瞬で叩き落とされる。
「朝食後に塔一郎にチェンジして第2ラウンドだよ。存分に絞られとけ」
「い、いやだ……」
……この話オレだけ知らない感じ?なに?秘密の話?名前ちゃんがオレの不満の表情を見て察したのか慌てて「あの、猫が、箱根の山神の呪いで、自転車部員の猫が、自転車部員の部屋に……!ね!?」と説明した。何にもわからない。
「は?何言って……っていうか寮は動物ダメでしょ」
「そ、それはごもっともです……」
名前ちゃんに呆れたジョーさんが説明してくれる。箱根の山神の呪いで部員が猫になること、猫を呼び出す人間の過大なストレスが原因であること。名前ちゃんが何度か猫を「呼び出し」ていて、昨日初めて「呼び出される」側に回ったこと。からかってるのかと思って先輩達の顔を順番に見るけど、誰も嘘だと言わなかった。マジ?
「そういうことだから、悠人も気をつけるように。何かあったら相談してくれ。ボクじゃなくて、ユキや拓斗でもいいから」
朝食を終えて泉田さんがさっさと席を立つ。
「名前、あとは部室で。ゆっくり食べるといい」
まだ全然食べ終わってない名前ちゃんが悲鳴をあげた。ゆっくり食べられるわけもなく、説教へのカウントダウンが始まった。
それにしたって、荒唐無稽なファンタジー。誰も否定しないどころか、気をつけろって。……待ってよ。
「ハア!?オレ呼ばれてないんだけど!おかしいでしょ!オレ、名前ちゃんのかわいいかわいい幼馴染なんだけど!?」
「呼び出されなかったことに感謝した方がいい。あれは地獄だ」
ジョーさんのマジレスで名前ちゃんが「本当にごめん」と呻く。つまり、ジョーさんは呼ばれたらしい。
「てかジョーさん呼ばれてオレ呼ばれてないのおかしくない!?っていうか他にも呼んでるってこと!?オレは!?名前ちゃんの!世界一かわいい幼馴染のオレ!!」
「世界一かわいい幼馴染の座をお前から奪うつもりはない。流石のオレもかわいさではお前に負けるよ」
「ハア!?」
「レイさんテキトーなこと言ってめんどくさくしないで!悠人もあんまり大騒ぎしないで。一応秘密なんだから……」
名前ちゃんはさっさと朝食を食べ終えて(と思ったら銅橋さんの皿がひとつ増えている。そのまま押し付けたらしい)、席を立つ。黒田さんがニヤっと笑う。
「もういいのか?ゆっくり食えよ」
「いや、説教第2ラウンドを前に喉を通らなくて……」
「頑張れよ。練習開始時刻には解放されるといいな」
「もう、レイさん!」
「幼馴染アドバイスだけどな、塔一郎の気が済むまで怒らせとけ。結構根に持つタイプだから」
「嫌なアドバイスですね……」
名前ちゃんはトボトボ食堂を出て行った。可哀想な後ろ姿だ。
「それじゃあ、銅橋さんの説教は?」
「こいつはさっき塔一郎から説教されて、この後交代してオレ」
「何やったんすかマジで!」
「あのな、悠人」
黒田さんは重々しい口調とともに正面に座っているオレを見つめ、箸までおいた。オレはいったい何を言われるのかと身構える。
「男子寮の居室棟に女子生徒呼び出してんだ。事の重大さ はわかるな?」
ごくり。ま、まあ確かにマズいかも。去年とか、かなり寮の入退管理は厳しくしてたって聞いてる。「かわいい1年女子が上級生に騙くらかされて起こりかねない、万が一の事態」を恐れ、当時の3年生(もちろん隼人くん達のこと)が目を光らせてたらしい。そしてその当時の3年生をリスペクトしている黒田さんも「寮の運営、部の信用にも関わる問題だからな」と、その辺りは厳しい。だから名前ちゃんは一度も男子寮の室内に入ったことがないはずだ。オレは神妙に頷く。黒田さんは苦々しげに言葉を続ける。
「それも全裸の、マネージャーだ。大問題だろ」
「黒田さん!」
耐えかねた銅橋さんの怒号。いや悲鳴?オレも黒田さんの直接的すぎる言い方に咽せた。ぜ、全裸って……猫の姿だったとはいえ、幼馴染のそういう話はちょっとイヤだ。
「これでわかったな。ひとつミスれば、レギュラー降格どころじゃねえ不祥事になんだよ。わかったらもう「オレは呼ばれなかった!」とかゴネんじゃねえぞ」
「はい……って、つまり名前ちゃんは全裸の自転車部員を呼び出してたってこと!?男子禁制の女子寮に!?そっちの方がマズいじゃないっすか!」
「マズいんだよだからこんなに困ってるんだよこっちは……!」
黒田さんが頭を抱え、その時スマホの通知が鳴った。黒田さんは画面をチラッと見て「拓斗が合流したな。あっちに」と呟いた。名前ちゃんにとっては考えられる最悪の事態である。憧れの先輩達からの説教2倍盛り、胃がシクシク痛む事だろう。
「きっと長引きますね……土曜でよかったのか、悪かったのか」
ジョーさんの深いため息。
それを聞いて、なんだよってなってた気持ちはしぼんでしまった。この先輩がこういう顔をしてるって時は本当に厄介なんだって、オレもジョーさんと組むようになってちょっとわかるようになったから。名前ちゃんが厄介なことに巻き込まれてるのは可哀想だけど、この件オレは手を引くことにするよ。がんばれ、名前ちゃん。
朝食、何か騒がしいなと思ったら、ジョーさんが説教していた。相手は向かいに座った名前ちゃん。その隣で泉田さんが黙々と食べてて、名前ちゃんは恐る恐るその様子を伺っている。何やってんだろ?名前ちゃんがジョーさんに怒られてるのは割といつものことだけど、そこに泉田さんがいてそれを黙認しているとなると珍しい。聞き耳を立ててしまう。名前ちゃん、今度は何やらかしたんだろうって。
「レイさん、勘弁してください……すでにいっぱい怒られたから……」
「別にオレから追加の説教があったとて問題ないな?」
「あ、朝ごはんくらい美味しく食べたい!」
「お前な……」
マジで何の説教?とりあえず朝食をもらって、空いた席に座る。泉田さんの反対、名前ちゃんの隣。
「おはよーございます」
「おはよう」
「苗字センパイ、何怒られてたんすか?」
「……」
オレの質問に、さっきまでネチネチ怒ってたジョーさんすら沈黙した。え?オレには教えてくれない感じ?銅橋さんと名前ちゃんが地獄みたいな雰囲気で沈黙したので、多分名前ちゃんが悪いんだけど。泉田さんのため息。
「自由すぎる猫がいてね。昨日は銅橋の部屋で随分暴れたみたいで、その説教を少ししただけだよ」
「ヒッ」
名前ちゃんの声にならない悲鳴。ジョーさんのメガネが光る。
「なんだ、事実だろう」
「そ、そうですね……」
名前ちゃんも銅橋さんも特に反論せず、朝食を再開した。何か言う方が問題があると判断したらしい。空いていたオレの向かいに人が座る。
「悠人にも話しておいた方がいいだろ、関係なくはないんだから」
「ゲッ黒田さん」
「言っとくが苗字、オレはもうこの件説教しねえからな」
「え!」
希望の光が見えたとばかりに名前ちゃんの声が上擦ったが、それは一瞬で叩き落とされる。
「朝食後に塔一郎にチェンジして第2ラウンドだよ。存分に絞られとけ」
「い、いやだ……」
……この話オレだけ知らない感じ?なに?秘密の話?名前ちゃんがオレの不満の表情を見て察したのか慌てて「あの、猫が、箱根の山神の呪いで、自転車部員の猫が、自転車部員の部屋に……!ね!?」と説明した。何にもわからない。
「は?何言って……っていうか寮は動物ダメでしょ」
「そ、それはごもっともです……」
名前ちゃんに呆れたジョーさんが説明してくれる。箱根の山神の呪いで部員が猫になること、猫を呼び出す人間の過大なストレスが原因であること。名前ちゃんが何度か猫を「呼び出し」ていて、昨日初めて「呼び出される」側に回ったこと。からかってるのかと思って先輩達の顔を順番に見るけど、誰も嘘だと言わなかった。マジ?
「そういうことだから、悠人も気をつけるように。何かあったら相談してくれ。ボクじゃなくて、ユキや拓斗でもいいから」
朝食を終えて泉田さんがさっさと席を立つ。
「名前、あとは部室で。ゆっくり食べるといい」
まだ全然食べ終わってない名前ちゃんが悲鳴をあげた。ゆっくり食べられるわけもなく、説教へのカウントダウンが始まった。
それにしたって、荒唐無稽なファンタジー。誰も否定しないどころか、気をつけろって。……待ってよ。
「ハア!?オレ呼ばれてないんだけど!おかしいでしょ!オレ、名前ちゃんのかわいいかわいい幼馴染なんだけど!?」
「呼び出されなかったことに感謝した方がいい。あれは地獄だ」
ジョーさんのマジレスで名前ちゃんが「本当にごめん」と呻く。つまり、ジョーさんは呼ばれたらしい。
「てかジョーさん呼ばれてオレ呼ばれてないのおかしくない!?っていうか他にも呼んでるってこと!?オレは!?名前ちゃんの!世界一かわいい幼馴染のオレ!!」
「世界一かわいい幼馴染の座をお前から奪うつもりはない。流石のオレもかわいさではお前に負けるよ」
「ハア!?」
「レイさんテキトーなこと言ってめんどくさくしないで!悠人もあんまり大騒ぎしないで。一応秘密なんだから……」
名前ちゃんはさっさと朝食を食べ終えて(と思ったら銅橋さんの皿がひとつ増えている。そのまま押し付けたらしい)、席を立つ。黒田さんがニヤっと笑う。
「もういいのか?ゆっくり食えよ」
「いや、説教第2ラウンドを前に喉を通らなくて……」
「頑張れよ。練習開始時刻には解放されるといいな」
「もう、レイさん!」
「幼馴染アドバイスだけどな、塔一郎の気が済むまで怒らせとけ。結構根に持つタイプだから」
「嫌なアドバイスですね……」
名前ちゃんはトボトボ食堂を出て行った。可哀想な後ろ姿だ。
「それじゃあ、銅橋さんの説教は?」
「こいつはさっき塔一郎から説教されて、この後交代してオレ」
「何やったんすかマジで!」
「あのな、悠人」
黒田さんは重々しい口調とともに正面に座っているオレを見つめ、箸までおいた。オレはいったい何を言われるのかと身構える。
「男子寮の居室棟に女子生徒呼び出してんだ。事の
ごくり。ま、まあ確かにマズいかも。去年とか、かなり寮の入退管理は厳しくしてたって聞いてる。「かわいい1年女子が上級生に騙くらかされて起こりかねない、万が一の事態」を恐れ、当時の3年生(もちろん隼人くん達のこと)が目を光らせてたらしい。そしてその当時の3年生をリスペクトしている黒田さんも「寮の運営、部の信用にも関わる問題だからな」と、その辺りは厳しい。だから名前ちゃんは一度も男子寮の室内に入ったことがないはずだ。オレは神妙に頷く。黒田さんは苦々しげに言葉を続ける。
「それも全裸の、マネージャーだ。大問題だろ」
「黒田さん!」
耐えかねた銅橋さんの怒号。いや悲鳴?オレも黒田さんの直接的すぎる言い方に咽せた。ぜ、全裸って……猫の姿だったとはいえ、幼馴染のそういう話はちょっとイヤだ。
「これでわかったな。ひとつミスれば、レギュラー降格どころじゃねえ不祥事になんだよ。わかったらもう「オレは呼ばれなかった!」とかゴネんじゃねえぞ」
「はい……って、つまり名前ちゃんは全裸の自転車部員を呼び出してたってこと!?男子禁制の女子寮に!?そっちの方がマズいじゃないっすか!」
「マズいんだよだからこんなに困ってるんだよこっちは……!」
黒田さんが頭を抱え、その時スマホの通知が鳴った。黒田さんは画面をチラッと見て「拓斗が合流したな。あっちに」と呟いた。名前ちゃんにとっては考えられる最悪の事態である。憧れの先輩達からの説教2倍盛り、胃がシクシク痛む事だろう。
「きっと長引きますね……土曜でよかったのか、悪かったのか」
ジョーさんの深いため息。
それを聞いて、なんだよってなってた気持ちはしぼんでしまった。この先輩がこういう顔をしてるって時は本当に厄介なんだって、オレもジョーさんと組むようになってちょっとわかるようになったから。名前ちゃんが厄介なことに巻き込まれてるのは可哀想だけど、この件オレは手を引くことにするよ。がんばれ、名前ちゃん。
