去る春、君の声だけが在るIF
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「こと」が判明してからの先輩達は早かった。速攻で黒田さんから電話が来て、「無事か?服は?なんかされてねえな?」としつこく問いただされた。
「普通に遊んでもらって、気づいたら部屋に戻っていましたよ」と答えたものの、若干の動揺をキッチリ見抜かれた。全国の猛者を出し抜いてきた黒田さんの観察眼に一般女子高生が敵うはずもなく……
「相手はあの、銅橋だぞ」って、何が「あの」なのかわからないが、黒田さんは「何かあったに違いない」と確信しているようだった。な、なぜ……!なぜバレている……!「とにかく無事で部屋に戻った」という言葉もあまり信じてもらえず、結局朝練より前に部室に呼び出された。
部室で待ち構えていたのは、黒田さん、泉田さん、それからバシさん。お、大事になってしまった……
「話は聞いているよ」という泉田さんの言葉の苦々しく、重いこと!
「それぞれに事情を聞こうと思ってね、銅橋 の事情聴取はすんでる。君も、嘘のないように」
私は沈黙した。バシさんが泉田さんに嘘をつけるはずがない。それは先輩達もわかってるはずだ。この局面でバシさんが疑われてる?なんで?寝起きの頭はすぐに正解に辿り着けない。
「口裏合わせはできねーからな」
黒田さんまで。バシさんは一体何を話したんだろう?
別にこれまでの3回自分が呼び出したのと同じように呼び出され、撫で回され、部屋に戻された。制服はなんか後ろ前反対だったりモゾモゾする違和感こそあれ、ちゃんと着ていた。「呼び出す側」としてのバシさんは優秀だった。パンツはなかったけど。いや、パンツ置き去りのことは伏せておいた方がいいだろう。それとも言ったのかな?泉田さんすっごい怖い顔してるし……パンツ、朝練の時に返してもらう約束だけど、今持ってきてんのかな。バシさん、この状況でパンツ持ってんの?
「……やっぱり何か、言いにくいようなことが」
「ないですないです己の不出来を反省していただけです」
黒田さんから大丈夫か?と再度聞かれて、返答に困る。とりあえず頷いておいた。大丈夫だった。多分。正直、振り返ってみれば情けなさすらある。自分が散々先輩方を撫で回したこと。誰かが苦しい時、誰かが呼ばれることはわかっていた。それが、尊敬や、信頼の証だと思っていた。多分、私は期待通りにできなかった。情けなくて、先輩たちの顔が見れない。「何もしなくていい」は多分、そこにいるだけでいいの意味だった。私ときたら、これまで築かれた信頼をいいことに、好き勝手暴れまわり挙句「かまってかまって」としつこくして……
自転車に乗れない苦しみ、どうにもならないことへの焦り、慕う後輩達、どんどん遠くなっていく真波。私が情けないって思うのは、バシさんがもどかしい思いをしてるってわかってたのに、その助けになれなかったこと。憧れの先輩に頼まれたのに、その期待に応えられなかったこと。
いっぱい撫でてもらえて私は嬉しかったけど、バシさんはそれに付き合わされて、ねこを部屋に戻すことに苦心して、心休まる暇はなかっただろう。多分、楽しくリフレッシュしたのは私の方……っていうかいつもそうだ。私はこれまで「呼ばれた」人の迷惑を考えてなかったし、「呼び出した」側の戸惑いにも寄り添えていない。ああ、もう。本当に、情けない。顔が熱い。耳まで赤い気がする。
絞り出した声は、震えていた。消え入りそうな声は、入部時の自己紹介を嫌でも思い出させる。恥ずかしすぎて顔を覆う。何って、己の未熟さがここにきてすごく恥ずかしい。右も左もわからない入部当初と違って、もう幹部学年だっていうのに。
「どうしよう、わ、私ばかりがいい思いをさせてもらって……こんな……」
「は」
黒田さんが絶句、泉田さんが怖い顔で「銅橋」と呼んだ。低く冷たく、よく通る、調教師の声。
その声にハッとして顔を上げる。そして、私は久しぶりに泉田さんの手に乗馬鞭の幻覚を見た。じ、女王様モードだ……私は椅子から飛び上がって泉田さんに追い縋った。
「待って待って何か特大の誤解が生じた気がします!」
「はあ……」
「何かってナニだよ!?銅橋てめー先輩に嘘つくとは大した度胸じゃねーか」
「誤解!誤解だ!泉田さん!!誤解だっ!!」
「話は別室で聞く。ユキ、そちらは任せたよ」
「ま、任せないでください、今なんかすんごい友情にヒビが入る音が聞こえました!弁明のチャンスをください!!」
「オレはな!?去年荒北さんから苗字のことよーーく見とけって頼まれてんだよ!危なっかしいからって荒北さんから直々に!!」
「し、知らない!なんですか!?その話!?私の知らないところで何があったんですか!?」
「銅橋。わかっているね」
「ハイ……」
「ば、バシさーん!」
嘆願虚しく、バシさんは泉田さんに連行されていった。私は初めて猫を呼び出した時、葦木場さんを巻き込んで特大の誤解を生んでいるのでまた罪を重ねてしまった……
「で、だ。『何もなかった』んなら説明できんだな?」
「う、う……」
私にできるのは今から全力で、なるべく事の次第を平和的かつほのぼのした感じで報告することだけ。この、怖い顔の黒田さんに……もちろん、パンツのことは伏せて……な、難易度が高い。やれる気がしないがやるしかない。私はいつものように右手をビシッと挙げて「2年、苗字。報告です!」と宣言した。バシさん、お互い生きて再会できるように名前頑張るね……
「普通に遊んでもらって、気づいたら部屋に戻っていましたよ」と答えたものの、若干の動揺をキッチリ見抜かれた。全国の猛者を出し抜いてきた黒田さんの観察眼に一般女子高生が敵うはずもなく……
「相手はあの、銅橋だぞ」って、何が「あの」なのかわからないが、黒田さんは「何かあったに違いない」と確信しているようだった。な、なぜ……!なぜバレている……!「とにかく無事で部屋に戻った」という言葉もあまり信じてもらえず、結局朝練より前に部室に呼び出された。
部室で待ち構えていたのは、黒田さん、泉田さん、それからバシさん。お、大事になってしまった……
「話は聞いているよ」という泉田さんの言葉の苦々しく、重いこと!
「それぞれに事情を聞こうと思ってね、
私は沈黙した。バシさんが泉田さんに嘘をつけるはずがない。それは先輩達もわかってるはずだ。この局面でバシさんが疑われてる?なんで?寝起きの頭はすぐに正解に辿り着けない。
「口裏合わせはできねーからな」
黒田さんまで。バシさんは一体何を話したんだろう?
別にこれまでの3回自分が呼び出したのと同じように呼び出され、撫で回され、部屋に戻された。制服はなんか後ろ前反対だったりモゾモゾする違和感こそあれ、ちゃんと着ていた。「呼び出す側」としてのバシさんは優秀だった。パンツはなかったけど。いや、パンツ置き去りのことは伏せておいた方がいいだろう。それとも言ったのかな?泉田さんすっごい怖い顔してるし……パンツ、朝練の時に返してもらう約束だけど、今持ってきてんのかな。バシさん、この状況でパンツ持ってんの?
「……やっぱり何か、言いにくいようなことが」
「ないですないです己の不出来を反省していただけです」
黒田さんから大丈夫か?と再度聞かれて、返答に困る。とりあえず頷いておいた。大丈夫だった。多分。正直、振り返ってみれば情けなさすらある。自分が散々先輩方を撫で回したこと。誰かが苦しい時、誰かが呼ばれることはわかっていた。それが、尊敬や、信頼の証だと思っていた。多分、私は期待通りにできなかった。情けなくて、先輩たちの顔が見れない。「何もしなくていい」は多分、そこにいるだけでいいの意味だった。私ときたら、これまで築かれた信頼をいいことに、好き勝手暴れまわり挙句「かまってかまって」としつこくして……
自転車に乗れない苦しみ、どうにもならないことへの焦り、慕う後輩達、どんどん遠くなっていく真波。私が情けないって思うのは、バシさんがもどかしい思いをしてるってわかってたのに、その助けになれなかったこと。憧れの先輩に頼まれたのに、その期待に応えられなかったこと。
いっぱい撫でてもらえて私は嬉しかったけど、バシさんはそれに付き合わされて、ねこを部屋に戻すことに苦心して、心休まる暇はなかっただろう。多分、楽しくリフレッシュしたのは私の方……っていうかいつもそうだ。私はこれまで「呼ばれた」人の迷惑を考えてなかったし、「呼び出した」側の戸惑いにも寄り添えていない。ああ、もう。本当に、情けない。顔が熱い。耳まで赤い気がする。
絞り出した声は、震えていた。消え入りそうな声は、入部時の自己紹介を嫌でも思い出させる。恥ずかしすぎて顔を覆う。何って、己の未熟さがここにきてすごく恥ずかしい。右も左もわからない入部当初と違って、もう幹部学年だっていうのに。
「どうしよう、わ、私ばかりがいい思いをさせてもらって……こんな……」
「は」
黒田さんが絶句、泉田さんが怖い顔で「銅橋」と呼んだ。低く冷たく、よく通る、調教師の声。
その声にハッとして顔を上げる。そして、私は久しぶりに泉田さんの手に乗馬鞭の幻覚を見た。じ、女王様モードだ……私は椅子から飛び上がって泉田さんに追い縋った。
「待って待って何か特大の誤解が生じた気がします!」
「はあ……」
「何かってナニだよ!?銅橋てめー先輩に嘘つくとは大した度胸じゃねーか」
「誤解!誤解だ!泉田さん!!誤解だっ!!」
「話は別室で聞く。ユキ、そちらは任せたよ」
「ま、任せないでください、今なんかすんごい友情にヒビが入る音が聞こえました!弁明のチャンスをください!!」
「オレはな!?去年荒北さんから苗字のことよーーく見とけって頼まれてんだよ!危なっかしいからって荒北さんから直々に!!」
「し、知らない!なんですか!?その話!?私の知らないところで何があったんですか!?」
「銅橋。わかっているね」
「ハイ……」
「ば、バシさーん!」
嘆願虚しく、バシさんは泉田さんに連行されていった。私は初めて猫を呼び出した時、葦木場さんを巻き込んで特大の誤解を生んでいるのでまた罪を重ねてしまった……
「で、だ。『何もなかった』んなら説明できんだな?」
「う、う……」
私にできるのは今から全力で、なるべく事の次第を平和的かつほのぼのした感じで報告することだけ。この、怖い顔の黒田さんに……もちろん、パンツのことは伏せて……な、難易度が高い。やれる気がしないがやるしかない。私はいつものように右手をビシッと挙げて「2年、苗字。報告です!」と宣言した。バシさん、お互い生きて再会できるように名前頑張るね……
