去る春、君の声だけが在る2
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>2日目、表彰式の前
選手が次々に榛名湖畔のゴールラインを越える頃、本部テントは対応に追われていた。
迷子、落とし物、選手の体調不良、観戦者の体調不良、迷子、迷子の2連続、会場案内、また落とし物……
声を詰まらせスプリントリザルトのアナウンスをしたのが、もう遠い昔のように感じる。早く終われ……!と祈りながら、次から次へと現れる迷子をお家の人に返す。会場内ではお子様から目を離さないようご注意ください。表彰式はもうすぐだけど、多分これは見に行けないだろうな……
その時、見覚えのある黄色のジャージが目に飛び込んできた。総北!しかし、前回優勝校に相応しからぬ落ち着きのなさで、あっちにうろうろこっちにうろうろ……黄色のジャージに派手頭は目を引く。オレンジ。
頼りなくあっちこっち彷徨う姿を見て私は確信する。ありゃ迷子だな。今日1日で迷子なら散々見たから、すぐわかる。
鏑木一差。今年の総北唯一の1年生メンバー。
流石にほっとくのもな、総北だし。友達の後輩だし。あいつ、昨日は具合悪かったし。今回総北の1年は1人で、上は総北信号機 だし、その上 最上級生コンビ は初インハイだし。その下に着く苦労は察するにあまりある。本人はあんまりわかってないみたいだけど、今日もあんまり元気ないって報告入ってるし……なんか困ってそうだし……
まあ、迷子じゃなかったらそれはそれで、いいか。
「すみません、来客対応で抜けます」
「はーい」
他校の部員に声をかけて、本部テントをするりと抜け出す。
真夏の日差しの下に出ると、とっくに太陽は南中を過ぎたというのにとにかく暑い。テントの日除けがあっても暑かったけど、直射日光がじりじり肌を痛めつける感覚は確実に体力ゲージを削っていく。こんな中選手は100キロ走ったのか。
「ちょっと君」
「あぇっ!?ハイ!!」
「千葉代表テントはあっち。表彰式を見るならそっち。落とし物とか状況聞きたいならここ。本部テントだよ」
「あっ、えっその……」
話に聞いてた感じと違うな。バシさんに聞いてたのは、もっとうるさくて、生意気で、礼儀知らずで、元気が良くて……
オレンジの瞳が不安げにこちらを見る。聞いてた印象より身長はずっと高い。170以上あるだろう。
「あっ」
「ななななななんすか!!」
もしかして、こいつが「女子が苦手な新入部員の子」?寒咲さんに聞いたな。お前か。お前なのか。意外すぎて、考えもしなかった。そうか、お前が……思わずまじまじ見ると、鏑木は怯えたように一歩後ずさる。
「バシさん相手にはあんなくそ生意気だったのに……」
「え?」
「なんでもない、チームのテントに戻るなら、あっち。連れてってあげようか?」
私は幼児相手にするようにゆっくり喋る。まんまるの目玉はいまだに警戒心を宿している。本気でビビってるらしく、指先の震えを隠すように握り込む。
かと思えば、顔はみるみるうちに紅潮して。ただの緊張ならいいが、相手は昨日完走後にぶっ倒れて、今日は万全じゃない体調で100キロ走っている。もし、具合が悪そうなら寒咲さんに連絡して、連れてってやらないと。私は少しの不調も見逃さないように、慎重に鏑木の顔を覗き込む。オレンジの瞳が涙で滲んだ。
「あの、オレ……」
あ、こいつ近くで見ると、結構……
「鏑木!」
突如割り入った声にふたりで振り返る。
「あっ青八木!!さん!!」
さっきまで怯えていたのが嘘みたいにデカい声。なんなら、ブンブン振り回す犬のしっぽが見える。王者ハコガク にはいないタイプだと、私は感心した。
「箱根学園の……!」
青八木一は鏑木が話していた相手が私と気づくと、中盤ボスモンスターを見るような警戒した目つきになった。お望みなら「そういう」振る舞いをしてやらないこともない。こういうことするから、すぐ鳴子に性悪って言われるんだけど……
「そういうあなたは総北の青八木さんですよね」
「!」
きゅう、と瞳孔が細くなって、後輩を守ろうと一歩前に出る。いい先輩だなあ。
誰が言ったのか知らないけど……箱根学園の陰湿マネージャーだと、話したことない人にも知られてるらしい。
「何にもしてないですよ、道を教えてあげようとしただけですって……」
「鏑木」
鏑木は青八木さんの後ろに張り付いて、こくこく頷いた。完全に、犬。中型犬。聞いてた印象となんか違う。青八木さん、懐かれてるし……もしや、バシさんが先輩だと思われてないだけ?ライバルだから?
「張り付くな!」
「だ、だって青八木〜!」
青八木さんが鏑木を引き剥がし、隣に立たせる。後頭部を手のひらで押さえつけ、無理やりお辞儀させて。……あれ?
「……ご迷惑おかけしました」
「ご迷惑しました!」
「いえいえ……私は何も!お迎え来てよかったね!鏑木一差くん」
「ななっなんでおれの名前っ」
「だって初日戦ってたでしょ。うちの人と」
「うちの……」
「銅橋正清。強かったでしょう」
バシさんの勝利を誇るように、堂々たる態度でバン!とキメたはずが鏑木一差はポカンとしてた。名前を聞いてもいまいちピンと来てないらしい。あれ?結構絡んだんじゃなかったの。もしやバシさんの一方通行 な感じ?
青八木さんがこいつまじかという目で鏑木を見た。
「箱根学園と!昨日のスプリントやりあっただろ!」
「あっブタ!やっべ一瞬忘れてた、オレ今日のことで頭がいっぱいで……」
「お前な……」
私もお前な……と言いたかったけど、青八木さんが心底疲れ果てた声を出したので、大人しく黙った。なんか、手を焼いてるぽいな。寡黙でクールだという前評判に反する振り回されっぷりだ。
鏑木が青八木さんにガミガミ叱られている間に私は鏑木を上から下まで観察した。こいつ、見れば見るほど……
じーっと見る視線に気がついたのか、青八木さんが慌てて鏑木を「帰るぞ」と引っ張る。後輩を守るように、私から遠ざけて。
私は確信する。これは間違いなく、総北同級生トリオから私の悪評聞かされてる人の態度だと……
私はこれ以上の悪印象を残さないために、愛想良く笑顔を作り、ヒラヒラ手を振ってみせた。
「もう迷子にならないようにね〜」
「べっ別に迷子ってわけじゃ!……っとおい、青八木!」
青八木さんは鏑木を引きずって足早に去る。……なんかまだ揉めてる。先輩にくどくど怒られるのは身に覚えがありすぎるので、なんだか同情してしまう。
うるさいふたりの会話は耳をそばだてなくても聞こえた。
「ええっあの人、箱根学園なんすか!?」
「バカ!箱根学園のマネージャーの話は昨日のミーティングでもしただろうが!!」
「え!?今のが!?ぜ……ぜんっぜん普通にかっ……かわいくないっすか!?聞いてた話と違うんすけど!」
「バカ!!」
……いったい今年の総北では、どんな悪評が広まっているのか。角の生えた鬼……あたりかな。うーん、誰が言ったのか、聞きたいような聞きたくないような。
さて、迷子を送り返したことだし、本部テントに戻ろうか。
それにしても……随分と顔の整った子だったな。ついうっかり、顔を凝視してしまった。
オレンジ、バカ、クソ生意気、総北の教育はどうなってんだ、と昨日散々聞かされた印象と比べて、言葉に詰まる様子はなんていうか……こう突ついていじめたくなるというか。そのくせ口を引き結んだ表情は端正さが際立つ。
あれは喋らなければモテるだろう。喋るとおバカぽかったけど。今度寒咲さんに聞いてみよう。
私はすっかり見えなくなったオレンジ頭を思う。顔だけはかなり、好みだったな……バシさんに聞かれたら「お前のシュミはどうなってんだ?」とドン引きされそう。だから、顔の話だって言ってるでしょ。
……それからもうひとつ、引っかかったこと。ちょっとした違和感。
青八木さん、脚ヘンだったな。走り終わりで疲れてる?でもそれにしては、庇うような感じで……膝かな?
今だけの疲労なのか、明日に支障をきたすような不調なのか、いまいち判断がつかない。
ひとまずレイさんにチャットを送る。私の引っ掛かりの真偽は、詳しい人たちに見てもらおう。
▫︎▫︎▫︎
千葉県代表テントまで戻ってきたオレはまだ青八木……さんにしつこく怒られていた。表彰式を見に行こうと思ったのに、逆戻りだ。
確かに、「箱根学園のマネージャーに気をつけろ」って言われてたのをすっかり忘れたオレが悪いけど……
でも、実際に目で見た感じでは。
「でも、そんな悪そうな人じゃなかったですよ」
「迷子かと思って声かけてきたんだろ?」
手嶋さんはオレが連れ戻された時点で笑ってた。「散歩か?」って。まだ笑うか。
「それは、本当に迷子だと思ったんだろうな。多分善意だよ」
「ほらあ」
「なんで表彰式のステージに行くのに迷うんだ……」
そりゃ初めてきた会場なんだから仕方ないだろ。オレは黙って手嶋さんの言葉を待つ。説教終わったら、今度こそ表彰式を見に行こう。
「でも気をつけろよ」
手嶋さんの言葉に青八木とふたり、顔を上げる。
「あれは箱根学園の勝利のためなら、なりふりかまわないやつだから」
手嶋さんは静かに呟く。噛みしめるように。手嶋さんはあの人の一体何を知っているのかと思ったけど、オレはとりあえず「わかりました」と静かに頷いた。そんな風には見えなかったけど、という言葉は飲み込んで。
選手が次々に榛名湖畔のゴールラインを越える頃、本部テントは対応に追われていた。
迷子、落とし物、選手の体調不良、観戦者の体調不良、迷子、迷子の2連続、会場案内、また落とし物……
声を詰まらせスプリントリザルトのアナウンスをしたのが、もう遠い昔のように感じる。早く終われ……!と祈りながら、次から次へと現れる迷子をお家の人に返す。会場内ではお子様から目を離さないようご注意ください。表彰式はもうすぐだけど、多分これは見に行けないだろうな……
その時、見覚えのある黄色のジャージが目に飛び込んできた。総北!しかし、前回優勝校に相応しからぬ落ち着きのなさで、あっちにうろうろこっちにうろうろ……黄色のジャージに派手頭は目を引く。オレンジ。
頼りなくあっちこっち彷徨う姿を見て私は確信する。ありゃ迷子だな。今日1日で迷子なら散々見たから、すぐわかる。
鏑木一差。今年の総北唯一の1年生メンバー。
流石にほっとくのもな、総北だし。友達の後輩だし。あいつ、昨日は具合悪かったし。今回総北の1年は1人で、上は
まあ、迷子じゃなかったらそれはそれで、いいか。
「すみません、来客対応で抜けます」
「はーい」
他校の部員に声をかけて、本部テントをするりと抜け出す。
真夏の日差しの下に出ると、とっくに太陽は南中を過ぎたというのにとにかく暑い。テントの日除けがあっても暑かったけど、直射日光がじりじり肌を痛めつける感覚は確実に体力ゲージを削っていく。こんな中選手は100キロ走ったのか。
「ちょっと君」
「あぇっ!?ハイ!!」
「千葉代表テントはあっち。表彰式を見るならそっち。落とし物とか状況聞きたいならここ。本部テントだよ」
「あっ、えっその……」
話に聞いてた感じと違うな。バシさんに聞いてたのは、もっとうるさくて、生意気で、礼儀知らずで、元気が良くて……
オレンジの瞳が不安げにこちらを見る。聞いてた印象より身長はずっと高い。170以上あるだろう。
「あっ」
「ななななななんすか!!」
もしかして、こいつが「女子が苦手な新入部員の子」?寒咲さんに聞いたな。お前か。お前なのか。意外すぎて、考えもしなかった。そうか、お前が……思わずまじまじ見ると、鏑木は怯えたように一歩後ずさる。
「バシさん相手にはあんなくそ生意気だったのに……」
「え?」
「なんでもない、チームのテントに戻るなら、あっち。連れてってあげようか?」
私は幼児相手にするようにゆっくり喋る。まんまるの目玉はいまだに警戒心を宿している。本気でビビってるらしく、指先の震えを隠すように握り込む。
かと思えば、顔はみるみるうちに紅潮して。ただの緊張ならいいが、相手は昨日完走後にぶっ倒れて、今日は万全じゃない体調で100キロ走っている。もし、具合が悪そうなら寒咲さんに連絡して、連れてってやらないと。私は少しの不調も見逃さないように、慎重に鏑木の顔を覗き込む。オレンジの瞳が涙で滲んだ。
「あの、オレ……」
あ、こいつ近くで見ると、結構……
「鏑木!」
突如割り入った声にふたりで振り返る。
「あっ青八木!!さん!!」
さっきまで怯えていたのが嘘みたいにデカい声。なんなら、ブンブン振り回す犬のしっぽが見える。
「箱根学園の……!」
青八木一は鏑木が話していた相手が私と気づくと、中盤ボスモンスターを見るような警戒した目つきになった。お望みなら「そういう」振る舞いをしてやらないこともない。こういうことするから、すぐ鳴子に性悪って言われるんだけど……
「そういうあなたは総北の青八木さんですよね」
「!」
きゅう、と瞳孔が細くなって、後輩を守ろうと一歩前に出る。いい先輩だなあ。
誰が言ったのか知らないけど……箱根学園の陰湿マネージャーだと、話したことない人にも知られてるらしい。
「何にもしてないですよ、道を教えてあげようとしただけですって……」
「鏑木」
鏑木は青八木さんの後ろに張り付いて、こくこく頷いた。完全に、犬。中型犬。聞いてた印象となんか違う。青八木さん、懐かれてるし……もしや、バシさんが先輩だと思われてないだけ?ライバルだから?
「張り付くな!」
「だ、だって青八木〜!」
青八木さんが鏑木を引き剥がし、隣に立たせる。後頭部を手のひらで押さえつけ、無理やりお辞儀させて。……あれ?
「……ご迷惑おかけしました」
「ご迷惑しました!」
「いえいえ……私は何も!お迎え来てよかったね!鏑木一差くん」
「ななっなんでおれの名前っ」
「だって初日戦ってたでしょ。うちの人と」
「うちの……」
「銅橋正清。強かったでしょう」
バシさんの勝利を誇るように、堂々たる態度でバン!とキメたはずが鏑木一差はポカンとしてた。名前を聞いてもいまいちピンと来てないらしい。あれ?結構絡んだんじゃなかったの。もしやバシさんの
青八木さんがこいつまじかという目で鏑木を見た。
「箱根学園と!昨日のスプリントやりあっただろ!」
「あっブタ!やっべ一瞬忘れてた、オレ今日のことで頭がいっぱいで……」
「お前な……」
私もお前な……と言いたかったけど、青八木さんが心底疲れ果てた声を出したので、大人しく黙った。なんか、手を焼いてるぽいな。寡黙でクールだという前評判に反する振り回されっぷりだ。
鏑木が青八木さんにガミガミ叱られている間に私は鏑木を上から下まで観察した。こいつ、見れば見るほど……
じーっと見る視線に気がついたのか、青八木さんが慌てて鏑木を「帰るぞ」と引っ張る。後輩を守るように、私から遠ざけて。
私は確信する。これは間違いなく、総北同級生トリオから私の悪評聞かされてる人の態度だと……
私はこれ以上の悪印象を残さないために、愛想良く笑顔を作り、ヒラヒラ手を振ってみせた。
「もう迷子にならないようにね〜」
「べっ別に迷子ってわけじゃ!……っとおい、青八木!」
青八木さんは鏑木を引きずって足早に去る。……なんかまだ揉めてる。先輩にくどくど怒られるのは身に覚えがありすぎるので、なんだか同情してしまう。
うるさいふたりの会話は耳をそばだてなくても聞こえた。
「ええっあの人、箱根学園なんすか!?」
「バカ!箱根学園のマネージャーの話は昨日のミーティングでもしただろうが!!」
「え!?今のが!?ぜ……ぜんっぜん普通にかっ……かわいくないっすか!?聞いてた話と違うんすけど!」
「バカ!!」
……いったい今年の総北では、どんな悪評が広まっているのか。角の生えた鬼……あたりかな。うーん、誰が言ったのか、聞きたいような聞きたくないような。
さて、迷子を送り返したことだし、本部テントに戻ろうか。
それにしても……随分と顔の整った子だったな。ついうっかり、顔を凝視してしまった。
オレンジ、バカ、クソ生意気、総北の教育はどうなってんだ、と昨日散々聞かされた印象と比べて、言葉に詰まる様子はなんていうか……こう突ついていじめたくなるというか。そのくせ口を引き結んだ表情は端正さが際立つ。
あれは喋らなければモテるだろう。喋るとおバカぽかったけど。今度寒咲さんに聞いてみよう。
私はすっかり見えなくなったオレンジ頭を思う。顔だけはかなり、好みだったな……バシさんに聞かれたら「お前のシュミはどうなってんだ?」とドン引きされそう。だから、顔の話だって言ってるでしょ。
……それからもうひとつ、引っかかったこと。ちょっとした違和感。
青八木さん、脚ヘンだったな。走り終わりで疲れてる?でもそれにしては、庇うような感じで……膝かな?
今だけの疲労なのか、明日に支障をきたすような不調なのか、いまいち判断がつかない。
ひとまずレイさんにチャットを送る。私の引っ掛かりの真偽は、詳しい人たちに見てもらおう。
▫︎▫︎▫︎
千葉県代表テントまで戻ってきたオレはまだ青八木……さんにしつこく怒られていた。表彰式を見に行こうと思ったのに、逆戻りだ。
確かに、「箱根学園のマネージャーに気をつけろ」って言われてたのをすっかり忘れたオレが悪いけど……
でも、実際に目で見た感じでは。
「でも、そんな悪そうな人じゃなかったですよ」
「迷子かと思って声かけてきたんだろ?」
手嶋さんはオレが連れ戻された時点で笑ってた。「散歩か?」って。まだ笑うか。
「それは、本当に迷子だと思ったんだろうな。多分善意だよ」
「ほらあ」
「なんで表彰式のステージに行くのに迷うんだ……」
そりゃ初めてきた会場なんだから仕方ないだろ。オレは黙って手嶋さんの言葉を待つ。説教終わったら、今度こそ表彰式を見に行こう。
「でも気をつけろよ」
手嶋さんの言葉に青八木とふたり、顔を上げる。
「あれは箱根学園の勝利のためなら、なりふりかまわないやつだから」
手嶋さんは静かに呟く。噛みしめるように。手嶋さんはあの人の一体何を知っているのかと思ったけど、オレはとりあえず「わかりました」と静かに頷いた。そんな風には見えなかったけど、という言葉は飲み込んで。
