SS
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2個下のとんでもない後輩……翔くんとは卒業後もなんだかんだ縁が続いている。高校3年生の時は随分めちゃくちゃな1年生が入ってきて、部もインターハイもめちゃくちゃにされたなと思っていたが、彼としては「めちゃくちゃにされたのは自分の方」と主張したいらしかった。私は見に行かなかったが、光太郎は律儀にインターハイを見に行ったりしたらしい。はるばる関東くんだりまで。
「名前ちゃん、いい加減そのゴミ会社辞めえや」
「こら、口が悪いぞ」
「御堂筋くん」などとクソ寒い呼び方をしていたのは3年の春から夏までの短い間。引退してからはほとんど話すこともなく、卒業後は大阪の大学に進学したので会うこともなかった。再会は私がなんとなく手伝ってた自転車インカレの人間経由で。
「石垣を出せって、レース荒らしがきてる」
こういう時頼りになる光太郎……双子の兄は東京に進学してしまった。前までなら光太郎を前に出して私はなーんにも知りませんと言う顔をしているだけでよかった。通報準備、いざという時に蹴り上げる準備(脳内の光太郎が「名前!がまんや」と喚いた)……までしていたというのに、私を呼び出したのは御堂筋翔だった。2個下の、困った……後輩。
3年間で多少は改善したようだが、傍若無人ならぬ暴虐無慈悲ぷりは相変わらずだった。曰く、レース帯同してあれこれ世話を焼く人間がいない。ひとつ下の……なんだっけ、あの子なら喜んでやるだろうが、彼も3年生。御堂筋に呼ばれたらインターハイ目前で部活を辞めかねない。御堂筋もさすがに後輩の集大成を潰すのは良心が咎めたようだ。1年の春を思えば大成長で、私は光太郎に早くこの事実を共有したいと思った。
「そんな時近場でヒマしてたんがキミや」
「はあ」
運命やねえ、と黒い瞳が歪んだ。運命だと?そんな簡単な言葉で。光太郎や辻の3年目のインターハイをめちゃくちゃにしたことを私は許せていない。
「分かってると思うけど」
「光太郎と同じで私も、そういう言い方に萎縮したりお前に媚びへつらうようなことはしない。手伝ってほしいなら、「かわいい後輩のために手ェ貸してください、先輩♡」くらい言ってみなさい」
御堂筋は「ほーんと変わらんねえ、キミたちは」と顔を歪めたが、「じゃ、頼みますウ、先輩」とにんまり笑って見せた。そして私は大学最後の2年を御堂筋の世話に費やすこととなった。次第に先輩後輩の気持ち悪い呼び方はなくなって「翔くん」「名前ちゃん」と呼びあうようになった。5文字は長いし、私の苗字は光太郎と同じなので。
各地のレースを荒らしまくり、方々に頭を下げる日々も会社員になれば終わると思っていたが、御堂筋はしつこかった。流石に平日休日お構いなしに連れ回すことこそないが、なけなしの有給休暇は御堂筋の遠征のために消費され、当の御堂筋は私の勤務先を「ゴミ」と呼び(確かにややブラックだが)、早く辞めろと急かす始末。
「あのね、翔くん安易に辞めろ辞めろ言うけど、辞めたら無職だからね。大学生にはわからないだろうけど!」
「ボクはあんなゴミ会社、早ゥ捨てたほうがいいと思うけど」
「無職になれと」
「……したらええ」
「なに?」
嫌な予感がするが聞かずにはいられなかった。翔くんも大学3年生になる。進路を考える時期、何か思うところがあるのかもしれない。
「永久就職したらええ。ボクんとこ」
「やだよ!!」
冗談でもやめてほしい。……冗談だよな?「つまらん、つまらん……」とブツブツ言ってるが、何割か本気だったということ?
「海外チームからオファーがきとる」
「え!?」
「一緒に来てや。名前ちゃん」
「い、嫌だ……関西離れて暮らしてける自信がない」
そもそも私は飛行機も乗ったことがないのに。海外って、多分飛行機でしょう?言葉も、文化も違う国に御堂筋と?無理無理無理。永久就職って結婚の古くてくっさい言い方のことでしょ?そもそも私たち付き合ってもないんですが、それは。
「ボクは自転車だけあったらええけど、名前ちゃんがおったらもっと黄色や」
「は?」
丸い目玉がこっちを見ている。高3の春に出会ってから本当の意味でこの男が何を言っているか理解できたことは一度もない。
「なア、ええやろ。ゴミ会社やめてボクゥに着いてきてや、先輩♡」
みみっちくてスポーツマンシップのかけらもない。光太郎の最後の1年をめちゃくちゃにした。基本的に他人を煽りまくり、人間を人間と思わない最低の性格をしている。常に奇行、レース中ともなれば人間の範疇をためらわず超える。それから、小姑みたいな彼の後輩がくっついてくる。昔を知っているから、今でこそ丸くなったように錯覚するが、普通にやばい。
「大事に手のひら乗せて、優しく握ったるよ。知っとるやろ、ボク得意やから」
丸みを持たせた手のひらを合わせて、虫でも捕まえるような仕草。なんとなく御堂筋の言語で愛を語られてるとわかるのが癪だ。詳細は全く不明だし、深く掘り下げるつもりもないが。私はため息をついた。
「もう少し話がまとまったらプレゼン持ってきて。そしたら、聞いてやらないこともないから」
「ざアんねん、もう持ってきてますう」
ぬるぬるっとノートパソコンが出てきて私はため息をついた。スライドの枚数は24枚、今度は諦めのため息だ。すまん光太郎、お前はいずれ御堂筋の義兄になる。
「名前ちゃん、いい加減そのゴミ会社辞めえや」
「こら、口が悪いぞ」
「御堂筋くん」などとクソ寒い呼び方をしていたのは3年の春から夏までの短い間。引退してからはほとんど話すこともなく、卒業後は大阪の大学に進学したので会うこともなかった。再会は私がなんとなく手伝ってた自転車インカレの人間経由で。
「石垣を出せって、レース荒らしがきてる」
こういう時頼りになる光太郎……双子の兄は東京に進学してしまった。前までなら光太郎を前に出して私はなーんにも知りませんと言う顔をしているだけでよかった。通報準備、いざという時に蹴り上げる準備(脳内の光太郎が「名前!がまんや」と喚いた)……までしていたというのに、私を呼び出したのは御堂筋翔だった。2個下の、困った……後輩。
3年間で多少は改善したようだが、傍若無人ならぬ暴虐無慈悲ぷりは相変わらずだった。曰く、レース帯同してあれこれ世話を焼く人間がいない。ひとつ下の……なんだっけ、あの子なら喜んでやるだろうが、彼も3年生。御堂筋に呼ばれたらインターハイ目前で部活を辞めかねない。御堂筋もさすがに後輩の集大成を潰すのは良心が咎めたようだ。1年の春を思えば大成長で、私は光太郎に早くこの事実を共有したいと思った。
「そんな時近場でヒマしてたんがキミや」
「はあ」
運命やねえ、と黒い瞳が歪んだ。運命だと?そんな簡単な言葉で。光太郎や辻の3年目のインターハイをめちゃくちゃにしたことを私は許せていない。
「分かってると思うけど」
「光太郎と同じで私も、そういう言い方に萎縮したりお前に媚びへつらうようなことはしない。手伝ってほしいなら、「かわいい後輩のために手ェ貸してください、先輩♡」くらい言ってみなさい」
御堂筋は「ほーんと変わらんねえ、キミたちは」と顔を歪めたが、「じゃ、頼みますウ、先輩」とにんまり笑って見せた。そして私は大学最後の2年を御堂筋の世話に費やすこととなった。次第に先輩後輩の気持ち悪い呼び方はなくなって「翔くん」「名前ちゃん」と呼びあうようになった。5文字は長いし、私の苗字は光太郎と同じなので。
各地のレースを荒らしまくり、方々に頭を下げる日々も会社員になれば終わると思っていたが、御堂筋はしつこかった。流石に平日休日お構いなしに連れ回すことこそないが、なけなしの有給休暇は御堂筋の遠征のために消費され、当の御堂筋は私の勤務先を「ゴミ」と呼び(確かにややブラックだが)、早く辞めろと急かす始末。
「あのね、翔くん安易に辞めろ辞めろ言うけど、辞めたら無職だからね。大学生にはわからないだろうけど!」
「ボクはあんなゴミ会社、早ゥ捨てたほうがいいと思うけど」
「無職になれと」
「……したらええ」
「なに?」
嫌な予感がするが聞かずにはいられなかった。翔くんも大学3年生になる。進路を考える時期、何か思うところがあるのかもしれない。
「永久就職したらええ。ボクんとこ」
「やだよ!!」
冗談でもやめてほしい。……冗談だよな?「つまらん、つまらん……」とブツブツ言ってるが、何割か本気だったということ?
「海外チームからオファーがきとる」
「え!?」
「一緒に来てや。名前ちゃん」
「い、嫌だ……関西離れて暮らしてける自信がない」
そもそも私は飛行機も乗ったことがないのに。海外って、多分飛行機でしょう?言葉も、文化も違う国に御堂筋と?無理無理無理。永久就職って結婚の古くてくっさい言い方のことでしょ?そもそも私たち付き合ってもないんですが、それは。
「ボクは自転車だけあったらええけど、名前ちゃんがおったらもっと黄色や」
「は?」
丸い目玉がこっちを見ている。高3の春に出会ってから本当の意味でこの男が何を言っているか理解できたことは一度もない。
「なア、ええやろ。ゴミ会社やめてボクゥに着いてきてや、先輩♡」
みみっちくてスポーツマンシップのかけらもない。光太郎の最後の1年をめちゃくちゃにした。基本的に他人を煽りまくり、人間を人間と思わない最低の性格をしている。常に奇行、レース中ともなれば人間の範疇をためらわず超える。それから、小姑みたいな彼の後輩がくっついてくる。昔を知っているから、今でこそ丸くなったように錯覚するが、普通にやばい。
「大事に手のひら乗せて、優しく握ったるよ。知っとるやろ、ボク得意やから」
丸みを持たせた手のひらを合わせて、虫でも捕まえるような仕草。なんとなく御堂筋の言語で愛を語られてるとわかるのが癪だ。詳細は全く不明だし、深く掘り下げるつもりもないが。私はため息をついた。
「もう少し話がまとまったらプレゼン持ってきて。そしたら、聞いてやらないこともないから」
「ざアんねん、もう持ってきてますう」
ぬるぬるっとノートパソコンが出てきて私はため息をついた。スライドの枚数は24枚、今度は諦めのため息だ。すまん光太郎、お前はいずれ御堂筋の義兄になる。
