神速一魂
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「長かったね」
言おう、言おうと暖めていた俺の言葉に番長さんは喜ぶかと思っていた。しかし現実のその人は口をへの字にして長かったねとそれだけ言った。その表情に俺が答えにたどり着くのが遅すぎたのか、と呆然とした。喜んで褒めてくれると思った。俺は、この人に恩を返して、俺の成長を喜んで欲しかったのに。
「えっなんで泣くのぉ」
堪らずこぼれたそれに番長さんはギョッとしておろおろとハンカチを出して背伸びをしても届かない俺の顔にそれを押し付けようとした。身を屈めて眼鏡をずらし柔らかなハンカチを押し当てた。彼女の好む柔軟剤の匂いがした。言葉に詰まりながら気持ちを端から端まで全て説明すれば余計に慌てて背中をさすられる。不意に衣装のリボンがだらりと垂れ、番長さんは器用にそれを結び直した。朱雀の方が手先は器用でこういう作業に俺はあまり向いてねぇ。今日はすでに一度解けて番長さんに結び直してもらったばかりだった。
「そっか、勘違いさせちゃったね。おめでとうって言いたかったの」
「そんな、祝われるような大層なことじゃない」
「ううん、朱雀くんや事務所の皆が大事にしてくれて、やっと玄武くんが大事にされてるって自分で気付いてくれたんだよ。玄武くんの幸せの閾値はきっとものすごく大きくて、今やっとそれを超えたんだね。今までに優しくしてもらったのが気づけるくらいいっぱい溜まったんだよ。長かったね、大変だったでしょう」
俺の様子に慌てた番長さんも一から十まで全部口にした。だからおめでとう、と続けて番長さんは俺の背中を叩く。
「なら、なおさら俺の力じゃない。朱雀や、番長さんや、周りのお陰で」
「そうだね。朱雀くんは中学の時からだから最大功労者かも。でも自分でそうだって気づけてひとつ大人になったんだよ。ふふ、めちゃくちゃお祝いしたい気分。寿司?やっぱりお赤飯かな」
「……全く敵わねぇな番長さんには……」
みっともなく泣いたせいで目元が赤くなっている。番長さんは、にこっと笑ったきりお赤飯と寿司なら寿司がいいよねえと振り向かないまま俺の二歩先を歩いていく。
言おう、言おうと暖めていた俺の言葉に番長さんは喜ぶかと思っていた。しかし現実のその人は口をへの字にして長かったねとそれだけ言った。その表情に俺が答えにたどり着くのが遅すぎたのか、と呆然とした。喜んで褒めてくれると思った。俺は、この人に恩を返して、俺の成長を喜んで欲しかったのに。
「えっなんで泣くのぉ」
堪らずこぼれたそれに番長さんはギョッとしておろおろとハンカチを出して背伸びをしても届かない俺の顔にそれを押し付けようとした。身を屈めて眼鏡をずらし柔らかなハンカチを押し当てた。彼女の好む柔軟剤の匂いがした。言葉に詰まりながら気持ちを端から端まで全て説明すれば余計に慌てて背中をさすられる。不意に衣装のリボンがだらりと垂れ、番長さんは器用にそれを結び直した。朱雀の方が手先は器用でこういう作業に俺はあまり向いてねぇ。今日はすでに一度解けて番長さんに結び直してもらったばかりだった。
「そっか、勘違いさせちゃったね。おめでとうって言いたかったの」
「そんな、祝われるような大層なことじゃない」
「ううん、朱雀くんや事務所の皆が大事にしてくれて、やっと玄武くんが大事にされてるって自分で気付いてくれたんだよ。玄武くんの幸せの閾値はきっとものすごく大きくて、今やっとそれを超えたんだね。今までに優しくしてもらったのが気づけるくらいいっぱい溜まったんだよ。長かったね、大変だったでしょう」
俺の様子に慌てた番長さんも一から十まで全部口にした。だからおめでとう、と続けて番長さんは俺の背中を叩く。
「なら、なおさら俺の力じゃない。朱雀や、番長さんや、周りのお陰で」
「そうだね。朱雀くんは中学の時からだから最大功労者かも。でも自分でそうだって気づけてひとつ大人になったんだよ。ふふ、めちゃくちゃお祝いしたい気分。寿司?やっぱりお赤飯かな」
「……全く敵わねぇな番長さんには……」
みっともなく泣いたせいで目元が赤くなっている。番長さんは、にこっと笑ったきりお赤飯と寿司なら寿司がいいよねえと振り向かないまま俺の二歩先を歩いていく。
