神速一魂
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「仕事のこととか考えないで、今はゆっくり休んでね」
名前さんが俺の家にいる。それどころかエプロンをつけて甲斐甲斐しくおかゆを作って食べさせ食後の薬を飲ませ、服を着替えさせ、冷えピタを貼り塗り薬まで塗られ、布団に寝かされた。熱のせいで朦朧としていてこれまでのことが夢かどうかもわからねぇ。
狭い部屋だから名前さんが皿を洗う後ろ姿がぼんやりと見えて名前さんと結婚したらこんな感じなのかと考えて、馬鹿な考えに苛立った。
「玄武くん……?寝ちゃったかな」
手を拭きながら名前さんが足音を殺して近寄ってくるから俺は目を開けて起きてることを伝えた。喉が引き攣れて声は出ねぇし頭はガンガン痛むし、熱が高いのか目を開ければ涙が伝った。
「スポドリ飲んで、お水で口ゆすいでから寝ようね……」
名前さんが助けてくれるのに甘えてゆっくり体を起こして飲み物をもらい、そのまま口をゆすいでマスクをつけ直す。
「うーんやっぱり熱が高いよね……寝たら下がるといいんだけど」
いつの間にか差し込まれていた体温計を抜かれ、再び手を借りて布団にもどる。ペタペタと首やら頬のあたりを触られるが、水に触れていたからか冷たい手が気持ちいい。
「私、お買い物行ってこようかな。何か食べたいものとかある?プリンとかゼリーとか……」
「……」
声が出ない。行かないでくれ、買い物なんていいから、ここにいてほしい。言いたいことは山ほどあるのに、声にならない、こんな情けないこと熱のせいだとしても、死んでも言えないから声が出なくてよかったのかもしれない。目尻からこぼれた水が頬を伝って枕を濡らした。無意味にばたばたと流れるそれを名前さんは拭って、枕元に正座した。
「玄武くんが寝るまでずっとここにいるよ。お買い物はまた後にするね」
名前さんの長い髪が肩口から垂れて影を作った。セットしていない髪を優しく撫でられて目を閉じた。目を閉じた拍子にまた涙が伝ったのを名前さんは黙って拭った。柔らかい指の感触が離れていく。
小さいころに熱を出した時も誰かがちゃんと面倒を見てくれた。それでもその誰かにこんな我儘を言おうと思ったことなんて未だ嘗てなく、名前さんがゆっくり髪に触れる感触もほとんど覚えがないものだった。熱のせいで頭の回りまで遅く、その原因を確かめるには至らないが重たい水の中にゆっくりと沈んでいくような感覚がした。名前さんに来てくれたお礼も言えてないというのに体は動かせず、意識さえも自由にならない。優しく触れる柔らかな温度だけが妙に鮮明だった。
名前さんが俺の家にいる。それどころかエプロンをつけて甲斐甲斐しくおかゆを作って食べさせ食後の薬を飲ませ、服を着替えさせ、冷えピタを貼り塗り薬まで塗られ、布団に寝かされた。熱のせいで朦朧としていてこれまでのことが夢かどうかもわからねぇ。
狭い部屋だから名前さんが皿を洗う後ろ姿がぼんやりと見えて名前さんと結婚したらこんな感じなのかと考えて、馬鹿な考えに苛立った。
「玄武くん……?寝ちゃったかな」
手を拭きながら名前さんが足音を殺して近寄ってくるから俺は目を開けて起きてることを伝えた。喉が引き攣れて声は出ねぇし頭はガンガン痛むし、熱が高いのか目を開ければ涙が伝った。
「スポドリ飲んで、お水で口ゆすいでから寝ようね……」
名前さんが助けてくれるのに甘えてゆっくり体を起こして飲み物をもらい、そのまま口をゆすいでマスクをつけ直す。
「うーんやっぱり熱が高いよね……寝たら下がるといいんだけど」
いつの間にか差し込まれていた体温計を抜かれ、再び手を借りて布団にもどる。ペタペタと首やら頬のあたりを触られるが、水に触れていたからか冷たい手が気持ちいい。
「私、お買い物行ってこようかな。何か食べたいものとかある?プリンとかゼリーとか……」
「……」
声が出ない。行かないでくれ、買い物なんていいから、ここにいてほしい。言いたいことは山ほどあるのに、声にならない、こんな情けないこと熱のせいだとしても、死んでも言えないから声が出なくてよかったのかもしれない。目尻からこぼれた水が頬を伝って枕を濡らした。無意味にばたばたと流れるそれを名前さんは拭って、枕元に正座した。
「玄武くんが寝るまでずっとここにいるよ。お買い物はまた後にするね」
名前さんの長い髪が肩口から垂れて影を作った。セットしていない髪を優しく撫でられて目を閉じた。目を閉じた拍子にまた涙が伝ったのを名前さんは黙って拭った。柔らかい指の感触が離れていく。
小さいころに熱を出した時も誰かがちゃんと面倒を見てくれた。それでもその誰かにこんな我儘を言おうと思ったことなんて未だ嘗てなく、名前さんがゆっくり髪に触れる感触もほとんど覚えがないものだった。熱のせいで頭の回りまで遅く、その原因を確かめるには至らないが重たい水の中にゆっくりと沈んでいくような感覚がした。名前さんに来てくれたお礼も言えてないというのに体は動かせず、意識さえも自由にならない。優しく触れる柔らかな温度だけが妙に鮮明だった。
