神速一魂
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タン塩、ハラミ、カルビ、ミスジ……言われるがままに次々に網に肉を乗せ、頃合いを見て返し、また頃合いを見ては玄武くんの手元の皿に混ざらないように移していく。玄武くんは黙々とそれをタレにつけたりそのままいったり、艶々の白米と一緒にしたり……という作業を繰り返していく。よく噛んで食べててえらい。私からしたら調子に乗って食べたら明朝胃にくるだろうなーと思う脂の多い肉もぺろりと食べてしまう。細くて白くて普段隣にいる相棒との対比もあって少食そうに見えるけど玄武くんの食べっぷりは見ていて気持ちいいくらいだった。
「一周したよ。次なにがいい?新しく頼む?」
「代わる……タン塩食うか?」
「え、いいよ私のことは……朱雀くんが来たら交互にやるし……主賓なんだから今日は何もしなくていいんだよ。なんでも言って」
トングと箸をさっと玄武くんから遠ざけた私に微妙な顔をしたあとしばらく宙を見つめて、それからまた私の顔を見た。普通の肉が食べたい、と言った。普通の肉っていつもどこ食べてるんだろう?ロースはスーパーでよく見るから普通の範囲かな。メニューを開いて2人でああでもないこうでもない、と言い合った。
「朱雀に食いたいもん聞いてみたらどうだ?流石にもう終わった頃だろ」
「たしかに。あ、終わったみたい、今からくるって」
「なに食うって?」
私は黙って3人で使っているグループのトーク画面を見せた。「玄武の食いたいもん!」秒で来た朱雀くんの返信に玄武くんは困ったようなめちゃくちゃ嬉しいような顔をした。俺だって、朱雀の食いたいものでいいって顔だ。見てるこっちが微笑ましくて顔が緩んでしまう。
そんな2人は朝は事務所で顔は合わせたらしいけど午後はのお仕事の都合で別行動、一緒にお店の門をくぐったのは玄武くんだけだった。いかにも高そうな店構えに玄武くんはちらりと私をみたので、黙って私のお財布を握らせた。玄武くんも黙って私の財布を開きいつもよりかなりお札の多いそれを見て「……なにして作った?」なんて怖い顔をしたから私は「失礼な!私が働いたお金と朱雀くんから預かった分。朱雀くんのというよりは斎藤社長からだけどね」と安心できるようなできないような返事をした。資金を援助してもらった斎藤社長には、2人の今後の働きで返そうという話を朱雀くんとしたので心置きなく肉を食べてほしい、と言うとようやく財布を私に返してくれた。そしてお店に入って私は主賓である玄武くんのためにひたすらに肉を焼いた。玄武くんはそれをひたすら食べた。朱雀くんが事務所の人たちに相談して決めた天道さんおすすめのお店なので間違いはない。
そろそろ着く、と追加連絡がきたので私はまた肉を焼き始めた。ついでにケーキ屋さんで受け取ったのだというケーキの写真も送られてきた。
「もうすぐ来るって」
玄武くんからの返事はなくて、黙って私が肉を焼くのを見ていた。
「玄武くん?」
「……悪い、聞いてなかった」
「朱雀くんもうすぐ着くって。わがまま言うとね、ケーキもあるからあと3時間くらい頑張ってほしい」
「ああ、朱雀が選んでたやつだろ」
「知ってたの!?」
「あれだけ悩んでたら流石に気づくだろ。聞いても下手なはぐらかし方しやがるし……」
その割には嬉しそうなのを隠しきれていないし、選んだケーキがどういうものかを知らないらしい。よかった、あれは初見でびっくりしてほしいやつだから。朱雀くんは今年誕生日プレゼントはもちろんケーキも熱心に選んでいたのでどんな顔が見られるか楽しみだ。
「プレゼントは完全にサプライズだったのに、どうしてああなっちまうんだろうな。朱雀も名前も」
「朱雀くんのプレゼントは成功だったでしょ?私は……失敗しましたけど……」
朱雀くんからのプレゼントは本日たいへん喜んでもらえたと聞いてるけど、私は選ぶ段階からだいぶ悩んでしまい玄武くんに「何悩んでるんだ?」と悩んでることをあっさり見破られた。それで今年は玄武くんのふんわりしたリクエストからプレゼントを選んだ。「特別な時に使うものじゃなくて普段使いできるものがいい」「仕事の時にも使えるものがいい」というリクエストもだいぶ悩んだけど喜んでくれたから悩んだ甲斐があった。
「玄武くん、お顔緩んでますよ」
「うるせえ」
うるせえなんて言われても全然怖くないし顔はゆるゆるしてるし、スマホをちらちら見ては朱雀くんが来るのを今か今かと待ってるし、どうせ朱雀がケーキは半分食うだろなんていうのも全然嫌とは思ってないんだろうな。
「朱雀くん、ご飯大盛りでいいかな?玄武くんもお代わり頼む?」
「飲み物もあるから来てからでいいんじゃねえか」
そうしたら玄武くんのと私のスマホの画面がついて待ちに待った、着いたぜ!のメッセージが届く。目に見えてぱあっと玄武くんの表情が明るくなって私までにこにこしてしまう。
「噂をすれば、だね」
「そうだな」
「玄武くんすごく今日うれしそうだよ」
「大事な人たちがこれだけ祝ってくれるんだから嬉しくないはずがないだろ」
「来年も再来年もめちゃくちゃ祝う予定だから覚悟しておいてね」
ぱたぱたと軽快な足音が遠くから近づいて来る。私が忘れていた肉を慌てて返していると、玄武くんはその音にちょっと笑って「肉も米も先に頼んだ方がよかったかもな」と言った。お腹ぺこぺこなのだろうその姿を想像して次からはそうしよう、って私が答えたところで個室のドアが元気よく開け放たれた。
「玄武!悪い!遅くなった!」
大きなケーキを左手に下げた朱雀くんの笑顔に玄武くんもまた破顔して、遅え!なんて言って朱雀くんを座らせた。お仕事も別行動だったみたいだし玄武くんにとっていい一日になったのかなとちょっと心配していたのだけど、こんな笑顔を見せられたらいい一日だったことは疑いようがない。
「名前さん!カンパイしようぜ!」
朱雀くんの頼んだという飲み物はまだ届いてないというのに、朱雀くんはお冷の入ったグラスを手にすでに待機している。玄武くんと私はがっつり食べるためにウーロン茶だ。元気のいい乾杯の声でグラスがぶつかり合って、冷えたグラスの水滴が勢いよく飛んだ。
「一周したよ。次なにがいい?新しく頼む?」
「代わる……タン塩食うか?」
「え、いいよ私のことは……朱雀くんが来たら交互にやるし……主賓なんだから今日は何もしなくていいんだよ。なんでも言って」
トングと箸をさっと玄武くんから遠ざけた私に微妙な顔をしたあとしばらく宙を見つめて、それからまた私の顔を見た。普通の肉が食べたい、と言った。普通の肉っていつもどこ食べてるんだろう?ロースはスーパーでよく見るから普通の範囲かな。メニューを開いて2人でああでもないこうでもない、と言い合った。
「朱雀に食いたいもん聞いてみたらどうだ?流石にもう終わった頃だろ」
「たしかに。あ、終わったみたい、今からくるって」
「なに食うって?」
私は黙って3人で使っているグループのトーク画面を見せた。「玄武の食いたいもん!」秒で来た朱雀くんの返信に玄武くんは困ったようなめちゃくちゃ嬉しいような顔をした。俺だって、朱雀の食いたいものでいいって顔だ。見てるこっちが微笑ましくて顔が緩んでしまう。
そんな2人は朝は事務所で顔は合わせたらしいけど午後はのお仕事の都合で別行動、一緒にお店の門をくぐったのは玄武くんだけだった。いかにも高そうな店構えに玄武くんはちらりと私をみたので、黙って私のお財布を握らせた。玄武くんも黙って私の財布を開きいつもよりかなりお札の多いそれを見て「……なにして作った?」なんて怖い顔をしたから私は「失礼な!私が働いたお金と朱雀くんから預かった分。朱雀くんのというよりは斎藤社長からだけどね」と安心できるようなできないような返事をした。資金を援助してもらった斎藤社長には、2人の今後の働きで返そうという話を朱雀くんとしたので心置きなく肉を食べてほしい、と言うとようやく財布を私に返してくれた。そしてお店に入って私は主賓である玄武くんのためにひたすらに肉を焼いた。玄武くんはそれをひたすら食べた。朱雀くんが事務所の人たちに相談して決めた天道さんおすすめのお店なので間違いはない。
そろそろ着く、と追加連絡がきたので私はまた肉を焼き始めた。ついでにケーキ屋さんで受け取ったのだというケーキの写真も送られてきた。
「もうすぐ来るって」
玄武くんからの返事はなくて、黙って私が肉を焼くのを見ていた。
「玄武くん?」
「……悪い、聞いてなかった」
「朱雀くんもうすぐ着くって。わがまま言うとね、ケーキもあるからあと3時間くらい頑張ってほしい」
「ああ、朱雀が選んでたやつだろ」
「知ってたの!?」
「あれだけ悩んでたら流石に気づくだろ。聞いても下手なはぐらかし方しやがるし……」
その割には嬉しそうなのを隠しきれていないし、選んだケーキがどういうものかを知らないらしい。よかった、あれは初見でびっくりしてほしいやつだから。朱雀くんは今年誕生日プレゼントはもちろんケーキも熱心に選んでいたのでどんな顔が見られるか楽しみだ。
「プレゼントは完全にサプライズだったのに、どうしてああなっちまうんだろうな。朱雀も名前も」
「朱雀くんのプレゼントは成功だったでしょ?私は……失敗しましたけど……」
朱雀くんからのプレゼントは本日たいへん喜んでもらえたと聞いてるけど、私は選ぶ段階からだいぶ悩んでしまい玄武くんに「何悩んでるんだ?」と悩んでることをあっさり見破られた。それで今年は玄武くんのふんわりしたリクエストからプレゼントを選んだ。「特別な時に使うものじゃなくて普段使いできるものがいい」「仕事の時にも使えるものがいい」というリクエストもだいぶ悩んだけど喜んでくれたから悩んだ甲斐があった。
「玄武くん、お顔緩んでますよ」
「うるせえ」
うるせえなんて言われても全然怖くないし顔はゆるゆるしてるし、スマホをちらちら見ては朱雀くんが来るのを今か今かと待ってるし、どうせ朱雀がケーキは半分食うだろなんていうのも全然嫌とは思ってないんだろうな。
「朱雀くん、ご飯大盛りでいいかな?玄武くんもお代わり頼む?」
「飲み物もあるから来てからでいいんじゃねえか」
そうしたら玄武くんのと私のスマホの画面がついて待ちに待った、着いたぜ!のメッセージが届く。目に見えてぱあっと玄武くんの表情が明るくなって私までにこにこしてしまう。
「噂をすれば、だね」
「そうだな」
「玄武くんすごく今日うれしそうだよ」
「大事な人たちがこれだけ祝ってくれるんだから嬉しくないはずがないだろ」
「来年も再来年もめちゃくちゃ祝う予定だから覚悟しておいてね」
ぱたぱたと軽快な足音が遠くから近づいて来る。私が忘れていた肉を慌てて返していると、玄武くんはその音にちょっと笑って「肉も米も先に頼んだ方がよかったかもな」と言った。お腹ぺこぺこなのだろうその姿を想像して次からはそうしよう、って私が答えたところで個室のドアが元気よく開け放たれた。
「玄武!悪い!遅くなった!」
大きなケーキを左手に下げた朱雀くんの笑顔に玄武くんもまた破顔して、遅え!なんて言って朱雀くんを座らせた。お仕事も別行動だったみたいだし玄武くんにとっていい一日になったのかなとちょっと心配していたのだけど、こんな笑顔を見せられたらいい一日だったことは疑いようがない。
「名前さん!カンパイしようぜ!」
朱雀くんの頼んだという飲み物はまだ届いてないというのに、朱雀くんはお冷の入ったグラスを手にすでに待機している。玄武くんと私はがっつり食べるためにウーロン茶だ。元気のいい乾杯の声でグラスがぶつかり合って、冷えたグラスの水滴が勢いよく飛んだ。
