Jupiter
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
事務所に戻る帰り道、北斗くんとふたり。
北斗くんが少し先の花屋さんを指差した。
「ちょっと見てもいい?」
「いいよ」
店先のバケツを北斗くんは真剣に見てる。僕は花のことはわからない。仕事で使うことがあれば、スタッフの人か、事前準備がいるならみのりさんに相談する。だけど、北斗くんのことならわかる。北斗くんは「ちょっといいな」って見たんじゃなくて、買う気で見ていた。
僕は北斗くんの背中に声をかける。
「名前さんにあげるの?」
「うん」
ほらね。北斗くんが好きな大きい派手な花じゃなくて、色も白とかだからすぐにわかった。
「あのさ、名前さんって花とか面倒見れる?」
「いや、苦手だよ」
そうだよね。僕たちがお花屋さんの仕事した時も、取り寄せた花をひきつった顔でデスクに飾っていた。ほっといて枯らすより、こまめに水を替えてそれが枯れないか気になりすぎてしまうタイプ。だから、北斗くんが花を渡しても喜びはしないだろう。渋い顔でお礼を言うのが目に浮かぶ。
僕の視線に気づいて、北斗くんは苦笑する。
「……だから贈るんだよ。枯れるまではいやでも俺のことを考えてくれるだろう?」
「えー……それってどうなの?」
名前さんが「北斗さん……」と恨めしい顔でたくさん花のささった花瓶を抱える姿を想像した。真面目だから、誰かに頼んだりせず、毎日自分で水を変えるだろう。それこそ、最後のひとつが枯れるまで。
「決めた、メインはこれにしよう」
北斗くんが選んだのは、白いチューリップ。学校の花壇に生えてるものより真っ白で花が細長く見える。何本か包んでもらうんだろう。高さもあるし、大きい花瓶がいるだろうな。
「僕は……花よりあっちかな」
指差したのは向かいの鯛焼き屋さん。名前さんは「宝くじ当たったらさ、アパート建てて、一階に鯛焼き屋さん開業するんだ。鯛焼き売ってのんびり暮らすの〜」と言っていたことがある。鯛焼きは「まあ本業にしてもいいかな」くらいのポジションにいるらしい。だから、お土産に買ってって、休憩しようって誘って。北斗くんが笑った。
「そうだね、いい案かも」
「あっちで買ってきていい?」
「うん。その間に花、包んでもらうよ」
「北斗くんは何味にする」
「俺?」
「うん。ライバルにもたまには塩を送らないとね」
「……翔太は優しいね」
北斗くんは笑って……笑いすぎて、それきり何味か答えられなくなっちゃった。
僕は北斗くんを放っておいて、お花屋さんに背を向ける。向かいのたい焼き屋さんのいいにおいをいっぱいに吸い込む。名前さんのお土産は、やっぱり粒餡かな。
北斗くんが少し先の花屋さんを指差した。
「ちょっと見てもいい?」
「いいよ」
店先のバケツを北斗くんは真剣に見てる。僕は花のことはわからない。仕事で使うことがあれば、スタッフの人か、事前準備がいるならみのりさんに相談する。だけど、北斗くんのことならわかる。北斗くんは「ちょっといいな」って見たんじゃなくて、買う気で見ていた。
僕は北斗くんの背中に声をかける。
「名前さんにあげるの?」
「うん」
ほらね。北斗くんが好きな大きい派手な花じゃなくて、色も白とかだからすぐにわかった。
「あのさ、名前さんって花とか面倒見れる?」
「いや、苦手だよ」
そうだよね。僕たちがお花屋さんの仕事した時も、取り寄せた花をひきつった顔でデスクに飾っていた。ほっといて枯らすより、こまめに水を替えてそれが枯れないか気になりすぎてしまうタイプ。だから、北斗くんが花を渡しても喜びはしないだろう。渋い顔でお礼を言うのが目に浮かぶ。
僕の視線に気づいて、北斗くんは苦笑する。
「……だから贈るんだよ。枯れるまではいやでも俺のことを考えてくれるだろう?」
「えー……それってどうなの?」
名前さんが「北斗さん……」と恨めしい顔でたくさん花のささった花瓶を抱える姿を想像した。真面目だから、誰かに頼んだりせず、毎日自分で水を変えるだろう。それこそ、最後のひとつが枯れるまで。
「決めた、メインはこれにしよう」
北斗くんが選んだのは、白いチューリップ。学校の花壇に生えてるものより真っ白で花が細長く見える。何本か包んでもらうんだろう。高さもあるし、大きい花瓶がいるだろうな。
「僕は……花よりあっちかな」
指差したのは向かいの鯛焼き屋さん。名前さんは「宝くじ当たったらさ、アパート建てて、一階に鯛焼き屋さん開業するんだ。鯛焼き売ってのんびり暮らすの〜」と言っていたことがある。鯛焼きは「まあ本業にしてもいいかな」くらいのポジションにいるらしい。だから、お土産に買ってって、休憩しようって誘って。北斗くんが笑った。
「そうだね、いい案かも」
「あっちで買ってきていい?」
「うん。その間に花、包んでもらうよ」
「北斗くんは何味にする」
「俺?」
「うん。ライバルにもたまには塩を送らないとね」
「……翔太は優しいね」
北斗くんは笑って……笑いすぎて、それきり何味か答えられなくなっちゃった。
僕は北斗くんを放っておいて、お花屋さんに背を向ける。向かいのたい焼き屋さんのいいにおいをいっぱいに吸い込む。名前さんのお土産は、やっぱり粒餡かな。
61/61ページ
