C.FIRST
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小学生の頃はだいたい週に一度、塾に通っていた。いつも母さんが仕事終わりに迎えに来てくれて一緒に帰った。あの街は結構好きだ。今でもたまにフラッと寄るし、ぴぃちゃんと出会った街にも近い。
ぴぃちゃんとアマミネくんがアイドルになろうって誘ってくれた。嬉しくてすぐに頷いたけど、親の許可がいるんだって。そんなの事後報告でいいって思ってたけど、ぴぃちゃんはうちにきてちゃんと説明してくれた。スーツでちゃんとお仕事してるぴぃちゃんにドキドキしてる間に説明が済んで、無事家族の承認を得た。さすがぴぃちゃんだね。
「百々人が、アイドルに……」
ただ母さんの様子が変だったかも。驚いていたけど、なんだかわざとらしい?
「勉強は?将来もずっと芸能界なの?大学はどうするの」
なんか……白々しい。ぴぃちゃんが一生懸命いろんな資料を見せてくれるけど、母さんは大して心が動いた様子はなかった。大学に通っているアイドルがいること、同じように頑張ってる同年代の子がいること。通信への転校もできること。母さんは他のことが気になっているみたいだったけど、黒野玄武くんの名前が出た時だけわずかに反応した。ああ、母さんは僕に黒野くんみたいになって欲しかったのかも。わかりやすい全国トップの称号、頭脳明晰でどこに出しても恥ずかしくない立派なアイドル。もしかして、模試の時探していた名前は……そんなわけないか。同い年だけど学年がひとつ違うもんね。
「今のまま、アイドルもやりたい……ダメ、かな」
「ダメじゃない、百々人がやりたいことは応援したい。母さんも、もちろん父さんも。ね」
じゃあ、母さんは一体何を言いたいんだろう。何が心配でこんなことを言うんだろう。
「きっと君は大丈夫だよ。優しくてかっこよくて、器用だから歌もダンスもすぐできるだろう。芸術の才能もあるからいろんな仕事ができるだろう。どこの誰より君をいちばん長く見てきた私が保証する……」
ぴぃちゃんの前で、実の親にこんなに褒められるのは恥ずかしい。ちらりと様子を伺うとぴぃちゃんはうんうんと真剣な表情で頷いている。ちょっとやめて、絶対親バカだと思われてる……
「自分のために頑張れるなら、絶対に成功するよ。そして、自分のために頑張るって言うなら家族も全力で応援します」
なんだかその言葉は妙に自信に満ちていた。母さんはあの日、模試の件を僕が見ていたことを知らない。知っていたら、きっとこんな風に平常心ではいられない。二度母の苦しみに触れた。絵で評価される、勉強や運動で良い成績をおさめる。他にできることがあるなら、自分自身でも表現しよう。自分のために。
「本当に僕が、なれるかな」
「なれます、絶対。ね、プロデューサーさん」
「はい。一緒に頑張りましょう」
なぜか僕に敬語で話しかけ、ぴぃちゃん相手に既知の友人のように親しみを持って笑いかけた。初めて見る、他人の顔をしている。家の顔でもない、仕事の顔でもない、他人の顔。ぴぃちゃんのことを知っていた?……もしかして初対面じゃない?そんなはずは。
「百々人。今まで通りとはいかないだろうけど、勉強もある程度は頑張ってね」
「うん」
うっすらと微笑む。取り繕う笑顔は得意だ。みんなを不快にさせないし、この顔はカッコいいとか綺麗とか褒められる。どこか他人のように距離を置き、見えない何かに怯えている母に血縁を思い知らせる微笑。親戚に、知り合いに「百々人は高校生になっても母親似だね」と言われる度に強張る母さんの笑顔。ぴぃちゃんが認めてくれたアイドルの才能は確かにこの家で育まれたものだ。上昇志向の両親と、それに応えようとあれこれ手を出して失敗を重ねてきた僕。母さんは僕が気に食わないようだけど、皮肉なことにアイドルになれたのは母さんのおかげだ。
「ありがとう……母さん」
ありがとう、僕にアイドルの才能の芽をくれて。僕は今度こそ一番になるよ。紛れもなく揺らぎもしない一番。ぴぃちゃんが認めてくれたアイドルの才能で一番になってみせるよ。
ぴぃちゃんとアマミネくんがアイドルになろうって誘ってくれた。嬉しくてすぐに頷いたけど、親の許可がいるんだって。そんなの事後報告でいいって思ってたけど、ぴぃちゃんはうちにきてちゃんと説明してくれた。スーツでちゃんとお仕事してるぴぃちゃんにドキドキしてる間に説明が済んで、無事家族の承認を得た。さすがぴぃちゃんだね。
「百々人が、アイドルに……」
ただ母さんの様子が変だったかも。驚いていたけど、なんだかわざとらしい?
「勉強は?将来もずっと芸能界なの?大学はどうするの」
なんか……白々しい。ぴぃちゃんが一生懸命いろんな資料を見せてくれるけど、母さんは大して心が動いた様子はなかった。大学に通っているアイドルがいること、同じように頑張ってる同年代の子がいること。通信への転校もできること。母さんは他のことが気になっているみたいだったけど、黒野玄武くんの名前が出た時だけわずかに反応した。ああ、母さんは僕に黒野くんみたいになって欲しかったのかも。わかりやすい全国トップの称号、頭脳明晰でどこに出しても恥ずかしくない立派なアイドル。もしかして、模試の時探していた名前は……そんなわけないか。同い年だけど学年がひとつ違うもんね。
「今のまま、アイドルもやりたい……ダメ、かな」
「ダメじゃない、百々人がやりたいことは応援したい。母さんも、もちろん父さんも。ね」
じゃあ、母さんは一体何を言いたいんだろう。何が心配でこんなことを言うんだろう。
「きっと君は大丈夫だよ。優しくてかっこよくて、器用だから歌もダンスもすぐできるだろう。芸術の才能もあるからいろんな仕事ができるだろう。どこの誰より君をいちばん長く見てきた私が保証する……」
ぴぃちゃんの前で、実の親にこんなに褒められるのは恥ずかしい。ちらりと様子を伺うとぴぃちゃんはうんうんと真剣な表情で頷いている。ちょっとやめて、絶対親バカだと思われてる……
「自分のために頑張れるなら、絶対に成功するよ。そして、自分のために頑張るって言うなら家族も全力で応援します」
なんだかその言葉は妙に自信に満ちていた。母さんはあの日、模試の件を僕が見ていたことを知らない。知っていたら、きっとこんな風に平常心ではいられない。二度母の苦しみに触れた。絵で評価される、勉強や運動で良い成績をおさめる。他にできることがあるなら、自分自身でも表現しよう。自分のために。
「本当に僕が、なれるかな」
「なれます、絶対。ね、プロデューサーさん」
「はい。一緒に頑張りましょう」
なぜか僕に敬語で話しかけ、ぴぃちゃん相手に既知の友人のように親しみを持って笑いかけた。初めて見る、他人の顔をしている。家の顔でもない、仕事の顔でもない、他人の顔。ぴぃちゃんのことを知っていた?……もしかして初対面じゃない?そんなはずは。
「百々人。今まで通りとはいかないだろうけど、勉強もある程度は頑張ってね」
「うん」
うっすらと微笑む。取り繕う笑顔は得意だ。みんなを不快にさせないし、この顔はカッコいいとか綺麗とか褒められる。どこか他人のように距離を置き、見えない何かに怯えている母に血縁を思い知らせる微笑。親戚に、知り合いに「百々人は高校生になっても母親似だね」と言われる度に強張る母さんの笑顔。ぴぃちゃんが認めてくれたアイドルの才能は確かにこの家で育まれたものだ。上昇志向の両親と、それに応えようとあれこれ手を出して失敗を重ねてきた僕。母さんは僕が気に食わないようだけど、皮肉なことにアイドルになれたのは母さんのおかげだ。
「ありがとう……母さん」
ありがとう、僕にアイドルの才能の芽をくれて。僕は今度こそ一番になるよ。紛れもなく揺らぎもしない一番。ぴぃちゃんが認めてくれたアイドルの才能で一番になってみせるよ。
