C.FIRST
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百々人が賞状をもらってきた。なるべく賞状の類は額に入れたりトロフィーは飾ったりしているがいかんせん数が多くて場所に困るようになってきた。トロフィー部屋を作るべきか。一人っ子でもう一部屋必要になると言うのは予想外だった。
更に言うと、読書感想文だとか水泳みたいなのは私でも褒められるが、絵画工作系はもっぱら夫が褒めると言うのが我が家の役割分担になりつつあった。百々人の絵画教室を長年見ていてもその良さを褒めることは難しい。美術史の本を読んだり、学生の芸術といえばと芸大の展示を見たりできそうなことはやったが、百々人の満足するようなコメントはできていない。正直、上手い下手以上のコメントが全然わからない。夫は今は大阪にいて、週末は帰ってくることも多いが、最近長期休みには百々人を呼び寄せる。関西圏の観光地や美術館巡りをふたりで楽しんでいる。大阪から帰ってきた百々人がパンフレットや図録を見せてあれこれ解説してくれるが、正直メモをとることで必死だ。しかも百々人の興味は古典芸術よりも現代美術に向いているらしく、最近は特に難しすぎる。
「はい、母さん」
「ありがとう。入賞だね、どこに飾ろうか……」
賞状に目を通す。いつもと同じだ。花園百々人、夫の苗字に私たちがつけた名前。私の平凡な旧姓よりずっとかっこいい名前。花園、百々人……アニメの登場人物みたいでかっこいい。名前負けしたらどうするのと親からは苦言を呈されたが、立派に育った。見てみろ、賞状に載るとこんなにかっこいい……字面が良すぎる、言われてみればアイドルの芸名みたいだけど……
……アイドル?
「母さん?」
派手なピンク色の瞳が私を見ていた。こんなの、カラコンでもなければあり得ない色。派手な金髪にグリーンのカラー。最近どんどん服装が派手になる、困った我が子のはずだ。百々人が訝しげに表情を伺う。え。うそ、うそでしょう。
花園百々人って、あの、クラファの花園百々人。え?SideMの、家庭環境に問題があって、ソロ曲が重くて……この子が、うちの子供が花園百々人?
「母さん……?顔色が悪いよ」
「あ、ああ。そうかな。ごめんね、これ……これ、どこに飾ろうか」
「そんなの、飾らなくていいよ」
「も、百々人」
「入賞だし、飾らなくていいよ」
聞いたことのある声音だ。慌てて顔を上げると知らない顔と目があった。いや、知っているのだ。私は、百々人の母親でない私は、スマホのガラス越しにこの顔を散々見たじゃないか。
冷え切った瞳、繕った笑顔。花園百々人の顔。
今までの行いが脳内を駆け巡る。私が、花園百々人をつくった。産んで、うまく育てられず、愛情は足りず。望む賞賛を与えられず、自信を奪った。私が、歪んだ自己認識を与えて、この子の絶望を。すでに記憶の彼方で風化したストーリーとは多少異なるけれど、私がこの子をこういう風に育てたのだ。
「母さん」
「もっと……もっとあなたを……」
「母さん?一回座って。倒れちゃいそうだよ」
「もっとわかりやすくて、褒めやすい子なら……」
「え」
言ってはいけないことを言ったと思う。
言ってはならない言葉だった。花園百々人というキャラクターに対しても、我が子に対しても。一生後悔する言葉だ。生涯をかけて訂正するべき言葉。百々人は口を開く。
更に言うと、読書感想文だとか水泳みたいなのは私でも褒められるが、絵画工作系はもっぱら夫が褒めると言うのが我が家の役割分担になりつつあった。百々人の絵画教室を長年見ていてもその良さを褒めることは難しい。美術史の本を読んだり、学生の芸術といえばと芸大の展示を見たりできそうなことはやったが、百々人の満足するようなコメントはできていない。正直、上手い下手以上のコメントが全然わからない。夫は今は大阪にいて、週末は帰ってくることも多いが、最近長期休みには百々人を呼び寄せる。関西圏の観光地や美術館巡りをふたりで楽しんでいる。大阪から帰ってきた百々人がパンフレットや図録を見せてあれこれ解説してくれるが、正直メモをとることで必死だ。しかも百々人の興味は古典芸術よりも現代美術に向いているらしく、最近は特に難しすぎる。
「はい、母さん」
「ありがとう。入賞だね、どこに飾ろうか……」
賞状に目を通す。いつもと同じだ。花園百々人、夫の苗字に私たちがつけた名前。私の平凡な旧姓よりずっとかっこいい名前。花園、百々人……アニメの登場人物みたいでかっこいい。名前負けしたらどうするのと親からは苦言を呈されたが、立派に育った。見てみろ、賞状に載るとこんなにかっこいい……字面が良すぎる、言われてみればアイドルの芸名みたいだけど……
……アイドル?
「母さん?」
派手なピンク色の瞳が私を見ていた。こんなの、カラコンでもなければあり得ない色。派手な金髪にグリーンのカラー。最近どんどん服装が派手になる、困った我が子のはずだ。百々人が訝しげに表情を伺う。え。うそ、うそでしょう。
花園百々人って、あの、クラファの花園百々人。え?SideMの、家庭環境に問題があって、ソロ曲が重くて……この子が、うちの子供が花園百々人?
「母さん……?顔色が悪いよ」
「あ、ああ。そうかな。ごめんね、これ……これ、どこに飾ろうか」
「そんなの、飾らなくていいよ」
「も、百々人」
「入賞だし、飾らなくていいよ」
聞いたことのある声音だ。慌てて顔を上げると知らない顔と目があった。いや、知っているのだ。私は、百々人の母親でない私は、スマホのガラス越しにこの顔を散々見たじゃないか。
冷え切った瞳、繕った笑顔。花園百々人の顔。
今までの行いが脳内を駆け巡る。私が、花園百々人をつくった。産んで、うまく育てられず、愛情は足りず。望む賞賛を与えられず、自信を奪った。私が、歪んだ自己認識を与えて、この子の絶望を。すでに記憶の彼方で風化したストーリーとは多少異なるけれど、私がこの子をこういう風に育てたのだ。
「母さん」
「もっと……もっとあなたを……」
「母さん?一回座って。倒れちゃいそうだよ」
「もっとわかりやすくて、褒めやすい子なら……」
「え」
言ってはいけないことを言ったと思う。
言ってはならない言葉だった。花園百々人というキャラクターに対しても、我が子に対しても。一生後悔する言葉だ。生涯をかけて訂正するべき言葉。百々人は口を開く。
