彩
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事務所のウェブサイトは専門の会社に組んでもらって、賢くんや私が文章をコピペするだけで簡単にアイドルの皆さんの新情報をお知らせできる。簡単だし便利な仕様だ。
「そうです、これは不要ですね。ここからここまで消して……」
「はい」
「こっちは上に移動させましょうか。その方が見やすいですよ」
一見機械に疎そうな九郎さんは実は「初歩的なインターネット」ならできると聞いていたが、その初歩が自分で「茶道のサイトを作ってバリバリ運営」だと知った時はひっくり返った。初歩とは。私が苦労して読み解き、書き換えている、HTML、CSSなるものを九郎さんは独学で習得しているらしい。心から尊敬する。面倒見の良い九郎さんはプライベートの時間に「個人的な趣味の」サイトに苦しんでいる私を見かねて、ああだこうだと助けてくれる。パソコンの画面を指し示す九郎さんの指先に従って、切って貼ってを繰り返す。九郎さんの横顔に見惚れそうになっては慌てて我に帰り、これじゃあ教わったことの半分も頭に入ってない。反省しなくちゃ。
しばらく切って貼ってと書き込みを繰り返し、最後に実際の画面が問題なく動いていることを確認する。
「すごい!ちゃんと反映されました!」
「ええ、よかったです」
それからさりげなくデスクトップ画面に表示を戻す。手取り足取り面倒見てもらった身で失礼だが、できればあまり九郎さんに見られたく無い私的なホームページである。
「お力になれたようで何よりです」
「助かりました!なんとな〜くで触ってたので、どこが間違ってるか全然わからなくて!さすが九郎さん。ありがとうございます!」
九郎さんは優雅に右手を胸に添えて、謙遜のポーズだ。優しい九郎さん。
「ところで……」
九郎さんがチラッと私を見た。いつにも増して目がキラキラしている。興味津々、未知なるものへの関心とやる気に満ちている時の目だ。仕事中や九郎さんが「お友達」といる時に見るのは大好き、でも今は嫌な予感がした。
「名前さんはどのようなホームページを運営しておいでですか?見たところ、画像と日記機能のような……」
「うわー!!」
「なっ何事ですか!」
「内緒!内緒です!!」
予感的中!私はノートパソコンをバタンと閉じて、それを抱えて九郎さんから逃げ出した。絶対見せない!見せられない!絶対!
「そんなに走ると危ないですよ!」
「うわーん!」
こういう時見せて見せてと執拗に迫ってこないところが九郎さんの優しいところ。でも、でも、あんなに手伝ってもらったのに逃げ出して申し訳ないけど、私のホームページは絶対見せられない。というのも、事務所を問わず好きなアイドルのライブレポとかテレビに出た時のレポとか、「写経」と言われるライブシーンをなるべく忠実に描いたイラストをアップしている、極めて個人的な趣味のやつだから。もちろん、そこには大好きなアイドルのひとりである清澄九郎さんの出演レポとライブの模写とラジオの好きなシーンをイラストにしたやつと、その他諸々が載っていて……うわー!絶対見せられない!!
「そ、そんなに逃げなくてもいいでしょう!?」
「九郎さんみたいに誰もがみんなに見せられる真っ当なサイトを作ってるわけじゃ無いんですよ!」
「……一体何をやっているんですか!?」
近頃ちょっとやそっとじゃ息切れしない九郎さん(陰で熱心にトレーニングに励む姿には本当に頭が下がる)が赤面しながら追ってきて、私は事態がより一層悪化していることを察した。私が「エッチなやつじゃないです!健全です!」と喚いて逃げ惑うのを九郎さんは全然信じてない目で見ている。
もちろん、この後ちゃんとバレました。「なんで隠したんですか……」と呆れられたけど、恥ずかしいからに決まってるじゃないですか。本人には見られないからって九郎さんのことカッコいい大好きってベタ褒めのブログ、絶対見せられません。
