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最近、765プロのやつらとよく一緒にいるアイドルの話をしようと思う。名前は苗字名前、弱小事務所をたったひとりで背負って立つ、年は俺らの一つ下。はじめて共演したのは音楽番組だった。
「はじめまして、苗字名前です。ジュピターの皆さんと共演できてとても嬉しいです!今日はよろしくお願いします」
リハーサル前に楽屋に挨拶に来て、にっこり笑った笑顔があまりに"できすぎていた"ので翔太がこっそり「なにあれ、キャラ作ってるよね」といったのを、覚えている。リハ中も甘ったるい笑顔でにこにこし続けていて、765プロのやつらとはまた違った意味でイライラした。そんなのでこの業界生きていけると思ってんのか。
「名前ちゃん、新曲は切ない恋の歌だけど、もしかして実体験ですか?」
「えっ……そんな、えっと、ちがくて……」
リハのくせに本気で顔を赤らめ俯く姿に、北斗が苦笑し翔太はおえっと声を上げた。カメラが向いてないからって好き勝手している。どうせあれも演技だろ。北斗に「冬馬、顔すごいよ」と声をかけられ、慌てて眉間を揉んだ。
「それでは歌っていただきましょう、話題のCMソング、苗字名前さんで……」
女性司会者がカメラに映る間に、暗いセットの中で俯く顔は無表情だった。やっぱり作ってるキャラかよ、と呆れながら足を組み替える。
しかし、曲が流れ、ライトが全開になった途端、雰囲気は一変した。作り笑いでもなく、俯いた髪の間から覗く無表情でもなく、恋に身を焦がす少女の顔になった。
歌がずば抜けて上手いわけではない。なのに、びっくりするほど、目を引く。本気で誰かのことを歌ってるんじゃないかと、勘ぐりたくなるほどに、彼女の歌は本気に聞こえた。先ほどのMCは、お世辞やからかいではなく経験則だったのだと察した。
「これも演じてるとしたら、大したものだね」
「テレビでこんな本気になってても問題でしょ」
呆然と見ている中、北斗と翔太の小さな囁きが耳に残った。
絶対に叶わないのに、それでも好きだと、不毛な恋を歌い終えた苗字名前は額の汗をぬぐってカメラに微笑んだ。リハのくせににカメラの前で本気の汗だくになって、その割に嘘ばかり、変な奴だ。
「テレビの前のみなさん、お待たせしました!続いてジュピターです!」
北斗と翔太がにっこり笑って手を振り、それに倣って軽く片手を上げた。
「ファンのみなさんも、登場を待ち望んでいたことでしょう!では、早速……」
俺たちにカメラが向けられ、トーク内容を確認している隙に、俺らの後ろを抜けて苗字名前がひっそりと席に戻った。
その時ふわっとした甘やかな匂いに思わず肩が小さく跳ねた。
「名前ちゃん、あのジュピターとの共演ですが、いかがですか?」
話題を振られて苗字名前は頬を染めて、「とっても嬉しいです」と微笑んだ。
数分前に汗みずくで歌っていたなんて嘘のような顔、しっとりと濡れた胸元、それと一瞬感じた甘やかな匂いを思い出して、俺は顔が熱くなるのを感じた。
「冬馬くん、顔、顔」
「冬馬、暑い?」
ニヤニヤ笑う翔太気遣う振りをしながらも楽しそうな声色の北斗に俺は静かにこめかみを引きつらせた。
楽屋に戻ったら思う存分怒鳴りつけてやる。とりあえず今は、「冬馬くん、名前ちゃんの歌どうでした?」なんて再び戻ってきたマイクに答えてやろう。
「はじめまして、苗字名前です。ジュピターの皆さんと共演できてとても嬉しいです!今日はよろしくお願いします」
リハーサル前に楽屋に挨拶に来て、にっこり笑った笑顔があまりに"できすぎていた"ので翔太がこっそり「なにあれ、キャラ作ってるよね」といったのを、覚えている。リハ中も甘ったるい笑顔でにこにこし続けていて、765プロのやつらとはまた違った意味でイライラした。そんなのでこの業界生きていけると思ってんのか。
「名前ちゃん、新曲は切ない恋の歌だけど、もしかして実体験ですか?」
「えっ……そんな、えっと、ちがくて……」
リハのくせに本気で顔を赤らめ俯く姿に、北斗が苦笑し翔太はおえっと声を上げた。カメラが向いてないからって好き勝手している。どうせあれも演技だろ。北斗に「冬馬、顔すごいよ」と声をかけられ、慌てて眉間を揉んだ。
「それでは歌っていただきましょう、話題のCMソング、苗字名前さんで……」
女性司会者がカメラに映る間に、暗いセットの中で俯く顔は無表情だった。やっぱり作ってるキャラかよ、と呆れながら足を組み替える。
しかし、曲が流れ、ライトが全開になった途端、雰囲気は一変した。作り笑いでもなく、俯いた髪の間から覗く無表情でもなく、恋に身を焦がす少女の顔になった。
歌がずば抜けて上手いわけではない。なのに、びっくりするほど、目を引く。本気で誰かのことを歌ってるんじゃないかと、勘ぐりたくなるほどに、彼女の歌は本気に聞こえた。先ほどのMCは、お世辞やからかいではなく経験則だったのだと察した。
「これも演じてるとしたら、大したものだね」
「テレビでこんな本気になってても問題でしょ」
呆然と見ている中、北斗と翔太の小さな囁きが耳に残った。
絶対に叶わないのに、それでも好きだと、不毛な恋を歌い終えた苗字名前は額の汗をぬぐってカメラに微笑んだ。リハのくせににカメラの前で本気の汗だくになって、その割に嘘ばかり、変な奴だ。
「テレビの前のみなさん、お待たせしました!続いてジュピターです!」
北斗と翔太がにっこり笑って手を振り、それに倣って軽く片手を上げた。
「ファンのみなさんも、登場を待ち望んでいたことでしょう!では、早速……」
俺たちにカメラが向けられ、トーク内容を確認している隙に、俺らの後ろを抜けて苗字名前がひっそりと席に戻った。
その時ふわっとした甘やかな匂いに思わず肩が小さく跳ねた。
「名前ちゃん、あのジュピターとの共演ですが、いかがですか?」
話題を振られて苗字名前は頬を染めて、「とっても嬉しいです」と微笑んだ。
数分前に汗みずくで歌っていたなんて嘘のような顔、しっとりと濡れた胸元、それと一瞬感じた甘やかな匂いを思い出して、俺は顔が熱くなるのを感じた。
「冬馬くん、顔、顔」
「冬馬、暑い?」
ニヤニヤ笑う翔太気遣う振りをしながらも楽しそうな声色の北斗に俺は静かにこめかみを引きつらせた。
楽屋に戻ったら思う存分怒鳴りつけてやる。とりあえず今は、「冬馬くん、名前ちゃんの歌どうでした?」なんて再び戻ってきたマイクに答えてやろう。
