Jupiter
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真白の砂浜、透き通るような海……バチャバチャと勢いよく水を跳ねながら翔太がもたつくことなく走っていく。
「冬馬くんっ!北斗くんっ!」
「おい、翔太後ろ後ろ!!」
「あっ……」
先を歩いていた2人は駆け寄る翔太に気づいて振り向くが、瞬間顔色を変えた。びちょびちょの白い大きなかたまりが猛スピードで翔太の背後から迫ってくる。
「えっなになに~~」
「後ろ見ろって!」
冬馬くんが引き倒されてはかなわないと慌てて翔太の腕を掴むが、引き倒さんとする白いケモノにはかなわず、大きな水しぶきがあがる。
「……2人とも大丈夫?」
水しぶきがおさまると、咄嗟に翔太に腕を掴まれたらしい北斗くんまで海の中に座り込んでいた。苦笑しながらも2人を気遣うのはさすがだ。
「俺はいいけど……って翔太!」
自身も水を盛大にかぶった冬馬くんが白いケモノにベロベロ舐められている翔太の救出に向かう。
「あはは、くすぐったーい!!」
当の翔太は楽しそうに笑い転げている。遠くから見ていても撮影が上手くいってるのがわかる。隣のカメラがパシャリと鳴った。こっそり盗み見るとみんな笑顔でいい一枚だ。
アイドルのバカンスをテーマにした撮影は、今回の被写体の仲間である大きな白い犬の乱入をもって終了した。他の写真は、夕暮れの中一緒に波打際を散歩する北斗くん、一緒に海を泳ぐ冬馬くん、砂浜で顔を寄せ合う翔太などこの白い犬と随分親しくなったようで撮影が終わっても翔太はボールを投げたりして遊んでいた。
「明日もあのこと、ずーっと遊んでたいな……」
ホテルに引き上げながらも翔太があまりに名残惜しそうなので、明日の予定を思うと心が揺らいだ。
「翔太は明日帰らなきゃだから、残念だけど……」
「わかってるけどさー……って僕はってどういうこと?」
「冬馬くんは次の写真集、北斗くんはアルバムの構想のためにあと2日こっちにいるの」
「えっそんなの聞いてないよ!」
後部座席の翔太が勢いよく北斗くんの座る助手席にしがみついた。
「翔太、危ないよ」
「ほら、シートベルト」
隣の冬馬くんが世話をやくも、翔太は不満そうに目を吊り上げて私に矛先を向けた。
「ねえ!僕だけ仲間はずれなの?!」
「ごめんね、翔太のお家の人も心配するし、ラジオの収録もあるから明日一緒に先に帰ろうね」
「……やだ……」
「明日は朝からジェットスキーするんだろ?機嫌直せよ、翔太」
せっかく楽しみにしていたマリンスポーツも翔太の気持ちを上向きにはできなかったようだ。失敗したな、と慣れない左ハンドルを回しながら反省した。
翌朝、早朝からジェットスキーに繰り出すとのことで同行した。カナヅチではあるが、翔太は持ち前の身体能力の高さ故に器用にこなしていた。こちらがハラハラするほどの角度に挑む翔太、負けずに何度もチャレンジする冬馬くんに私がカメラを構えていることにいち早く気づいた北斗くん。三者三様に楽しんだようでなによりだ。
「カメラマンを呼んでもいいレベルの画だったね」
「プロデューサーさんカメラばっかりだったけどちゃんと見てくれた?僕が一番上手だったでしょ?」
カメラを持つ腕に自分の腕を絡めて翔太はにっこり笑って見せた。
それから冬馬くんと北斗くんと食事をして、2人と別れるときも翔太は昨日の不機嫌が嘘のようだった。
「ラジオで撮影の話していいかなあ。それと帰ったら冬馬くんにまた今度昨日食べた料理作ってもらお。ねえ、冬馬くん、いいでしょ?北斗くんとプロデューサーさんも来るよね?」
「仕方ねえな、そんなに言うならとびきりのを作ってやるよ」
「やった!約束だよ、冬馬くん絶対作ってね!」
北斗くんと冬馬くんのシャツをぎゅっと握って笑う。安心したが、北斗くんが意味ありげな視線を送ってきた。それを問う間も無く、翔太と2人搭乗手続きに向かう。
飛行機が真っ暗な空を飛んでいた。翔太が寝ないでひたすらに窓の外を眺めているのに気づいて私は小さく声をかけた。
「翔太、寝れないの?」
「うん、色々考え事しちゃった」
翔太は肘掛に私の手を乗せて、その上に自分の手を重ねた。
「プロデューサーさん、昨日はごめんね」
「ううん、先に教えておけばよかったね。ごめん」
「僕のこと、考えてくれてるのちゃんとわかってるよ」
予想外に落ち着いた声で、はっとして視線を上げた。非常灯のあかりだけの中で翔太は優しく笑って見せた。いつもの元気な笑顔でなくて、不安になった。
「……翔太?」
「僕らがさ、事務所移ってきた時プロデューサーさんがいっぱい頑張ってくれたんでしょ?そのこともだし、帰る時間とかいっつもうちに連絡入れてくれるし、冬馬くんとか北斗くんの3倍は僕に……ううん、僕の家に気を使ってくれてるの知ってるんだよ?」
「……翔太」
翔太はまだ14歳だ。アイドルとしての活動に親御さんの許可は不可欠だし活動の時間にも制限が出てくる。成人している北斗くんや17歳の冬馬くんよりずっとそのあたりに気を使う必要が出てくるのは当然のことなのだ。
それに、前の事務所をやめた経緯からして翔太のご両親や家族が頷かなければ翔太はアイドルを続けることは難しかった。アイドルになった元のきっかけがお姉さんということもあって翔太の活動はご家族の支えが非常に大きい。
事務所を変える際に成人している北斗くんを除いて冬馬くんと翔太の家には挨拶に伺ったがハードルは断然翔太の方が高かった。
そういった大人の事情を、翔太は全部わかっている。かつて所属していた961プロの影響も少なからずあるのかもしれない。それでも、本来翔太が持つ勘によるところは大きいのだろうけど。
「プロデューサーさん、僕の家に僕の活動予定全部伝えてるんだってね」
「大事な息子さんをお預かりしてるわけだからね」
「帰ったらお仕事あるのもそうだけど、だからあんまり無理にお仕事足したり延ばしたりしないんでしょ」
「うん。翔太はさすがだね」
何1つ否定するところのない事実なのであっさり肯定した。
「昨日ね、ホテルの部屋で冬馬くんと北斗くんと話したんだ。プロデューサーさんは僕たち3人でいると1番に僕のこと、するよねって」
「えっ、2人何か言ってた?」
「北斗くんがね、それが普通のことなんだよって。でも、僕はそれに甘えてちゃダメなんだって。僕もそう思う」
だからね、プロデューサーさんありがとう。
はにかんでそれでもしっかり私の目を見て。鼻の奥がツンと痛んで私はどんな顔をしているのかわからなくなった。
多分すごく情けない顔をしているんだと思う。翔太が「プロデューサーさん、泣かないでよ」って私の目元に手を伸ばした。その翔太の目は潤んでなくてただひたすらに優しい目をしていた。
小さくて、大事にしなくちゃ、守らなくちゃとばかり思っていた翔太の方が今や頼もしい。どんどん大人になっていくから私はいつまで彼の手を引いていられるのだろうと不安になる。もしかしたら、気づいてないだけでもうすでに翔太のおかげで歩けているのかもしれない。
「冬馬くんっ!北斗くんっ!」
「おい、翔太後ろ後ろ!!」
「あっ……」
先を歩いていた2人は駆け寄る翔太に気づいて振り向くが、瞬間顔色を変えた。びちょびちょの白い大きなかたまりが猛スピードで翔太の背後から迫ってくる。
「えっなになに~~」
「後ろ見ろって!」
冬馬くんが引き倒されてはかなわないと慌てて翔太の腕を掴むが、引き倒さんとする白いケモノにはかなわず、大きな水しぶきがあがる。
「……2人とも大丈夫?」
水しぶきがおさまると、咄嗟に翔太に腕を掴まれたらしい北斗くんまで海の中に座り込んでいた。苦笑しながらも2人を気遣うのはさすがだ。
「俺はいいけど……って翔太!」
自身も水を盛大にかぶった冬馬くんが白いケモノにベロベロ舐められている翔太の救出に向かう。
「あはは、くすぐったーい!!」
当の翔太は楽しそうに笑い転げている。遠くから見ていても撮影が上手くいってるのがわかる。隣のカメラがパシャリと鳴った。こっそり盗み見るとみんな笑顔でいい一枚だ。
アイドルのバカンスをテーマにした撮影は、今回の被写体の仲間である大きな白い犬の乱入をもって終了した。他の写真は、夕暮れの中一緒に波打際を散歩する北斗くん、一緒に海を泳ぐ冬馬くん、砂浜で顔を寄せ合う翔太などこの白い犬と随分親しくなったようで撮影が終わっても翔太はボールを投げたりして遊んでいた。
「明日もあのこと、ずーっと遊んでたいな……」
ホテルに引き上げながらも翔太があまりに名残惜しそうなので、明日の予定を思うと心が揺らいだ。
「翔太は明日帰らなきゃだから、残念だけど……」
「わかってるけどさー……って僕はってどういうこと?」
「冬馬くんは次の写真集、北斗くんはアルバムの構想のためにあと2日こっちにいるの」
「えっそんなの聞いてないよ!」
後部座席の翔太が勢いよく北斗くんの座る助手席にしがみついた。
「翔太、危ないよ」
「ほら、シートベルト」
隣の冬馬くんが世話をやくも、翔太は不満そうに目を吊り上げて私に矛先を向けた。
「ねえ!僕だけ仲間はずれなの?!」
「ごめんね、翔太のお家の人も心配するし、ラジオの収録もあるから明日一緒に先に帰ろうね」
「……やだ……」
「明日は朝からジェットスキーするんだろ?機嫌直せよ、翔太」
せっかく楽しみにしていたマリンスポーツも翔太の気持ちを上向きにはできなかったようだ。失敗したな、と慣れない左ハンドルを回しながら反省した。
翌朝、早朝からジェットスキーに繰り出すとのことで同行した。カナヅチではあるが、翔太は持ち前の身体能力の高さ故に器用にこなしていた。こちらがハラハラするほどの角度に挑む翔太、負けずに何度もチャレンジする冬馬くんに私がカメラを構えていることにいち早く気づいた北斗くん。三者三様に楽しんだようでなによりだ。
「カメラマンを呼んでもいいレベルの画だったね」
「プロデューサーさんカメラばっかりだったけどちゃんと見てくれた?僕が一番上手だったでしょ?」
カメラを持つ腕に自分の腕を絡めて翔太はにっこり笑って見せた。
それから冬馬くんと北斗くんと食事をして、2人と別れるときも翔太は昨日の不機嫌が嘘のようだった。
「ラジオで撮影の話していいかなあ。それと帰ったら冬馬くんにまた今度昨日食べた料理作ってもらお。ねえ、冬馬くん、いいでしょ?北斗くんとプロデューサーさんも来るよね?」
「仕方ねえな、そんなに言うならとびきりのを作ってやるよ」
「やった!約束だよ、冬馬くん絶対作ってね!」
北斗くんと冬馬くんのシャツをぎゅっと握って笑う。安心したが、北斗くんが意味ありげな視線を送ってきた。それを問う間も無く、翔太と2人搭乗手続きに向かう。
飛行機が真っ暗な空を飛んでいた。翔太が寝ないでひたすらに窓の外を眺めているのに気づいて私は小さく声をかけた。
「翔太、寝れないの?」
「うん、色々考え事しちゃった」
翔太は肘掛に私の手を乗せて、その上に自分の手を重ねた。
「プロデューサーさん、昨日はごめんね」
「ううん、先に教えておけばよかったね。ごめん」
「僕のこと、考えてくれてるのちゃんとわかってるよ」
予想外に落ち着いた声で、はっとして視線を上げた。非常灯のあかりだけの中で翔太は優しく笑って見せた。いつもの元気な笑顔でなくて、不安になった。
「……翔太?」
「僕らがさ、事務所移ってきた時プロデューサーさんがいっぱい頑張ってくれたんでしょ?そのこともだし、帰る時間とかいっつもうちに連絡入れてくれるし、冬馬くんとか北斗くんの3倍は僕に……ううん、僕の家に気を使ってくれてるの知ってるんだよ?」
「……翔太」
翔太はまだ14歳だ。アイドルとしての活動に親御さんの許可は不可欠だし活動の時間にも制限が出てくる。成人している北斗くんや17歳の冬馬くんよりずっとそのあたりに気を使う必要が出てくるのは当然のことなのだ。
それに、前の事務所をやめた経緯からして翔太のご両親や家族が頷かなければ翔太はアイドルを続けることは難しかった。アイドルになった元のきっかけがお姉さんということもあって翔太の活動はご家族の支えが非常に大きい。
事務所を変える際に成人している北斗くんを除いて冬馬くんと翔太の家には挨拶に伺ったがハードルは断然翔太の方が高かった。
そういった大人の事情を、翔太は全部わかっている。かつて所属していた961プロの影響も少なからずあるのかもしれない。それでも、本来翔太が持つ勘によるところは大きいのだろうけど。
「プロデューサーさん、僕の家に僕の活動予定全部伝えてるんだってね」
「大事な息子さんをお預かりしてるわけだからね」
「帰ったらお仕事あるのもそうだけど、だからあんまり無理にお仕事足したり延ばしたりしないんでしょ」
「うん。翔太はさすがだね」
何1つ否定するところのない事実なのであっさり肯定した。
「昨日ね、ホテルの部屋で冬馬くんと北斗くんと話したんだ。プロデューサーさんは僕たち3人でいると1番に僕のこと、するよねって」
「えっ、2人何か言ってた?」
「北斗くんがね、それが普通のことなんだよって。でも、僕はそれに甘えてちゃダメなんだって。僕もそう思う」
だからね、プロデューサーさんありがとう。
はにかんでそれでもしっかり私の目を見て。鼻の奥がツンと痛んで私はどんな顔をしているのかわからなくなった。
多分すごく情けない顔をしているんだと思う。翔太が「プロデューサーさん、泣かないでよ」って私の目元に手を伸ばした。その翔太の目は潤んでなくてただひたすらに優しい目をしていた。
小さくて、大事にしなくちゃ、守らなくちゃとばかり思っていた翔太の方が今や頼もしい。どんどん大人になっていくから私はいつまで彼の手を引いていられるのだろうと不安になる。もしかしたら、気づいてないだけでもうすでに翔太のおかげで歩けているのかもしれない。
