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事務所の廊下を歩いていると小さな事務所に来たんだなと思うときがある。人より長い足では10歩も歩けば次のドアにたどり着いてしまう。ただ、それも1人で歩いてるときの話だ。
「北斗くん、おっはよー!」
「おはよう」
たとえば秋山くんとかかのんくんみたいな自分と体格差がそれなりにある子と歩いてるとき。
「かのん、先にいくねー!直央くんたちが待ってるんだー」
左に寄って道を開けるとかのんくんはありがとうと礼を言って勢いよく走って行った。朝から元気だなと羨ましく思う。
「北斗くん、おはようございます」
「おはようございます、プロデューサー」
それから、彼女が後ろから来るのを待つとき。
ちょっと後戻って彼女の隣に立ったりするととても10歩では廊下を渡りきらない。
「今日のお仕事なんですけど、レッスン室が変わったので確認よろしくお願いしますね」
「なら今日はいつもと違うエンジェルちゃんたちに会えるかもしれないってことですね……それはそれで」
「まだ月目標とか立ててるんですか?」
ジト目で俺を見つめて、手元は忙しなく手帳をめくっている。几帳面な字でスケジュールが詳細に記され、たまに気づいたこととかが走り書きで端の方に書かれているのを知っている。背が高いことの利点で、手元を上から覗き込みやすいのだ。うっかり紛失したとき困るからという理由でジャケット内側の胸ポケットにしまわれていくそれを目で追った。
「お待たせしました。行きましょう」
先を歩く彼女の綺麗に磨かれたローヒール、毎日違うスーツ、さりげなく巻かれた後ろ髪を順番に見ていたら遅れをとった。
「北斗くん?どうかしました?」
「ああ、いや……」
どうかしました、と尋ねる口の動きに気を取られ返事はおかしくなかっただろうか。
モデルやアイドルの仕事、その他プライベートでもそれこそ数え切れないほどの美人と接してきた。それに彼女に対する気持ちは恋愛でも友情でもないと整理をつけたはずがどうしても目で追ってしまう。
「かわいいなあ……」
思わず声に出て、慌てて口を押さえた。先を歩く彼女には聞こえなかったみたいで、「大丈夫?具合悪い?」なんて首を傾げている。
「どうしたの、北斗くん。子猫見るような顔でプロデューサーさん見て「かわいいなあ……」なんて言っちゃってさ!」
腰の温かい感触にぎょっとすると、反射で上げた腕の下から翔太が顔を出す。慌てて振り向くと、真っ赤な顔で冬馬が突っ立っていた。
「翔太、おはよう。冬馬も」
「おはよ、北斗くん」
「おはよう」
「じゃ、僕らは邪魔しないように先に行くね!」
「おい、翔太!いきなり走るなっ」
プロデューサーさんお先にー!なんて笑いながら翔太が冬馬を引っ張って駆け足で廊下を通り抜けた。急な展開にプロデューサーの振ろうとした手も中途半端に上げられたままだ。
「翔太くんも冬馬くんも、朝から元気ですね」
「はい、プロデューサー。お待たせしました」
やっと平静を取り戻し隣に追いついたが、プロデューサーの目線はなぜか俺の足元に注がれている。
「何か?」
「あっ、いや、その……やっぱり脚が長いなって思って、それで……」
恥ずかしそうに視線があちこちに逸らされ、予想外の発言に呆気にとられる。
「前からずっと思ってたんですけど、衣装の用意する時とか……それに、いつも誰かと歩く時はゆっくりですけど1人で歩いてる時とかすたすた歩くので、それで……ごめんなさい、忘れてくださいね」
恥ずかしそうに顔をパタパタと扇ぐ姿に心臓が変な音をあげた。
「かわいいなあ、本当に……」
2度目もうっかり口に出た。さすがに2度目だ、ここで慌てず、いつもエンジェルちゃんたちに言っているように平静を保ってにっこり目を合わせて笑顔を見せる。いつも通り、甘い言葉とその瞳がアピールポイントの俺のはずだ。
「なんで2回も言うんですか……」
「え?」
「1回目は空耳かなって思えたんですけど、さすがに2回は厳しいです……」
数分前のしっかりした姿が嘘のように狼狽える姿から目が離せない。
プロデューサーの顔が真っ赤なのは上から見える耳で明らかで、柄にもなく動揺した。プロデューサーもいつも通りさっさと歩けば顔の熱も引くのだろうけどペースを合わせてゆっくり歩いているからそんなことはきっと無理だ。
「かわいいところもあるんですね、プロデューサー」
「もう、いい加減にしてください……!」
追い打ちをかけるようにそう告げてから笑いながら歩くペースを上げて距離をとる。慌てた様子でプロデューサーが追いかけてきて、これで彼女の顔の熱も引くだろうか。
「北斗くん、おっはよー!」
「おはよう」
たとえば秋山くんとかかのんくんみたいな自分と体格差がそれなりにある子と歩いてるとき。
「かのん、先にいくねー!直央くんたちが待ってるんだー」
左に寄って道を開けるとかのんくんはありがとうと礼を言って勢いよく走って行った。朝から元気だなと羨ましく思う。
「北斗くん、おはようございます」
「おはようございます、プロデューサー」
それから、彼女が後ろから来るのを待つとき。
ちょっと後戻って彼女の隣に立ったりするととても10歩では廊下を渡りきらない。
「今日のお仕事なんですけど、レッスン室が変わったので確認よろしくお願いしますね」
「なら今日はいつもと違うエンジェルちゃんたちに会えるかもしれないってことですね……それはそれで」
「まだ月目標とか立ててるんですか?」
ジト目で俺を見つめて、手元は忙しなく手帳をめくっている。几帳面な字でスケジュールが詳細に記され、たまに気づいたこととかが走り書きで端の方に書かれているのを知っている。背が高いことの利点で、手元を上から覗き込みやすいのだ。うっかり紛失したとき困るからという理由でジャケット内側の胸ポケットにしまわれていくそれを目で追った。
「お待たせしました。行きましょう」
先を歩く彼女の綺麗に磨かれたローヒール、毎日違うスーツ、さりげなく巻かれた後ろ髪を順番に見ていたら遅れをとった。
「北斗くん?どうかしました?」
「ああ、いや……」
どうかしました、と尋ねる口の動きに気を取られ返事はおかしくなかっただろうか。
モデルやアイドルの仕事、その他プライベートでもそれこそ数え切れないほどの美人と接してきた。それに彼女に対する気持ちは恋愛でも友情でもないと整理をつけたはずがどうしても目で追ってしまう。
「かわいいなあ……」
思わず声に出て、慌てて口を押さえた。先を歩く彼女には聞こえなかったみたいで、「大丈夫?具合悪い?」なんて首を傾げている。
「どうしたの、北斗くん。子猫見るような顔でプロデューサーさん見て「かわいいなあ……」なんて言っちゃってさ!」
腰の温かい感触にぎょっとすると、反射で上げた腕の下から翔太が顔を出す。慌てて振り向くと、真っ赤な顔で冬馬が突っ立っていた。
「翔太、おはよう。冬馬も」
「おはよ、北斗くん」
「おはよう」
「じゃ、僕らは邪魔しないように先に行くね!」
「おい、翔太!いきなり走るなっ」
プロデューサーさんお先にー!なんて笑いながら翔太が冬馬を引っ張って駆け足で廊下を通り抜けた。急な展開にプロデューサーの振ろうとした手も中途半端に上げられたままだ。
「翔太くんも冬馬くんも、朝から元気ですね」
「はい、プロデューサー。お待たせしました」
やっと平静を取り戻し隣に追いついたが、プロデューサーの目線はなぜか俺の足元に注がれている。
「何か?」
「あっ、いや、その……やっぱり脚が長いなって思って、それで……」
恥ずかしそうに視線があちこちに逸らされ、予想外の発言に呆気にとられる。
「前からずっと思ってたんですけど、衣装の用意する時とか……それに、いつも誰かと歩く時はゆっくりですけど1人で歩いてる時とかすたすた歩くので、それで……ごめんなさい、忘れてくださいね」
恥ずかしそうに顔をパタパタと扇ぐ姿に心臓が変な音をあげた。
「かわいいなあ、本当に……」
2度目もうっかり口に出た。さすがに2度目だ、ここで慌てず、いつもエンジェルちゃんたちに言っているように平静を保ってにっこり目を合わせて笑顔を見せる。いつも通り、甘い言葉とその瞳がアピールポイントの俺のはずだ。
「なんで2回も言うんですか……」
「え?」
「1回目は空耳かなって思えたんですけど、さすがに2回は厳しいです……」
数分前のしっかりした姿が嘘のように狼狽える姿から目が離せない。
プロデューサーの顔が真っ赤なのは上から見える耳で明らかで、柄にもなく動揺した。プロデューサーもいつも通りさっさと歩けば顔の熱も引くのだろうけどペースを合わせてゆっくり歩いているからそんなことはきっと無理だ。
「かわいいところもあるんですね、プロデューサー」
「もう、いい加減にしてください……!」
追い打ちをかけるようにそう告げてから笑いながら歩くペースを上げて距離をとる。慌てた様子でプロデューサーが追いかけてきて、これで彼女の顔の熱も引くだろうか。
