もふもふえん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「プロデューサー!トリックアンドトリート!」
「んん~~?」
事務所の廊下を歩いていたところ、後ろから柔らかな衝撃があって立ち止まる。それよりもなんだかおかしな言葉が聞こえたみたいな。
「志狼くん?おはよ」
「おはよ、プロデューサー!なあなあ、ハロウィンだぜ!トリックアンドトリート!」
小さな手のひらを満面の笑みとともにわたしに差し出して、にこにこしている志狼くん。すでに事務所のお兄さん方からたくさんのお菓子をもらったみたいでかわいらしいかぼちゃのバッグには色とりどりのお菓子が入っていた。
「志狼くん、ハロウィンの挨拶間違えてない?トリックオア、トリートだよ。直央くんとかのんくんと一緒にこの間舞田先生に教えてもらったでしょ?」
「でもさ、どっちかなんて選べねー!アンドってどっちもってことだろ?」
「う~んあってるけど……」
誰だこんな入れ知恵をしたのは……舞田先生が気を利かせて教えたのだろうか?それならトリックオアトリートに続く言葉遊びを全部教えて、ハロウィンまでに覚えておいで、くらい言いそうだ。
「誰に教えてもらったの?トリックアンド、トリートって……」
「あめひこ!」
「あ、雨彦さんか~~!」
あの人のお茶目なところが変なところで発揮されているらしい。先日一緒にイベントに参加してもらった時には随分志狼くんが懐いて、雨彦さんの方も芸能界の小さな先輩から学ぶところは色々あったと聞いている。でもな~!こんなところでイベントで育んだ絆アピール発動しなくてもいいんだけどな~!!
頭をかかえていると、志狼くんはちょんちょんとわたしのスーツを引いた。顔を見るときらきらと期待に満ちた顔をしている。
東雲さんが本気で作ったハロウィンデコレーションのクッキーやら何やらはすでに受け取った後らしく、鮮やかなパッケージがのぞいていた。
私だって、東雲さん渾身のハロウィンスイーツには見劣りするだろうけど、ちゃんとハロウィン用のお菓子を用意している。皆本気でいたずらを仕掛けたくて来るわけじゃないから、お菓子をあげれば平穏な1日を過ごせるだろうと思っていたのだ。それに、子供大人問わずにアイドルの皆さんの喜ぶ顔が見れたらと思って。きらきらの目は私にどんな期待をしてるのだろうか。
「はい、とりあえずトリートの方ね。ハッピーハロウィン」
「ハッピーハロウィン!なあなあ!中身見ていい?」
「どうぞどうぞ。東雲さんみたいに手作りじゃないけどね」
結ばれたリボンを鮮やかに解いて、ぱくっと勢いよく口の中にプチケーキが消えていく。もぐもぐするうちに目がいっそうきらきらと光って、うまーい!と頬を抑えて喜んだ。一連の仕草がすごく絵になるから、こんなに小さい子なのに目が離せない魅力がある。小さい子だから、なのかも。
「で、プロデューサー!ハラゴシラエもすんだところでいたずらさせてもらうぜー!」
「さすがに忘れてなかったか~」
2人ともしゃがんで視線を合わせて、じっと見合う。いつ仕掛けられるからわからないから迂闊に瞬きもできず、私はハイヒールなので足もガタガタする。まんまるの目が溢れそうなくらいじーっと私を見つめている。タイミングをうかがっているらしい。
「えーいっ!」
「ふぎゃ!」
「ふははー!しろーさま渾身の鼻摘まみ!オレの兄ちゃんがよくやるやつ!!」
「う……全然反応できなかった……」
突然飛びかかって鼻を摘まれたので、対応ができず尻餅をついた。どうしてもやりたかった渾身の、いたずらがこれだなんて……めちゃめちゃかわいいいたずらだな……と呆然として、尻餅をついたまま摘まれた鼻を撫でた。
「プロデューサー?立てるか?」
「えっ?ああ、うん、大丈夫」
あまりにもかわいいので、茫然自失としていたのだけど志狼くんは心配そうに私を覗き込んだ。
そっと左手を差し出して、私を立ち上がらせようとする。
「ありがとう……ねっ!」
「んぎゃあ!」
手を借りるふりをして、加減して抱きつくと志狼くんはカエルが潰れたみたいな盛大な悲鳴をあげた。
「おら~!いたずらの仕返しだーっ!大人はお菓子をもらえないからねー!いたずらくらいさせてもらうぞー!!」
「やっやめろー!!こちょこちょなんでずりぃぞ!プロデューサー!!!んわーっ!!」
そのまま思いきり脇やお腹をくすぐると、志狼くんは身をよじって抵抗した。しかしながらまだ小学生、私全力のくすぐりにはかなわずにひいひい言うまでくすぐられた。
「………はあ、はあ……もう、ぜってー許さねえ~いつかビッグになったアカツキには~、はあ、プロデューサーが息もできなくなるくらい、はあはあ、仕返ししてやる……」
「いや、はあ、私も、もう、限界だから……志狼くんがビッグになる頃には、はあ~、今より体力落ちてるから……ひー、限界だ……」
くすぐられた側もくすぐった側も体力の限界で、2人ではあはあしながら息を整える。志狼くんが廊下に大の字で寝っ転がり、私も耐えきれずごろんと横になった。
「プロデューサーも、運動不足のオトナにしちゃあなかなかのこちょこちょだったぜ……」
「ふふ……大人の経験をなめちゃいかんよ……」
「お前さんたち……床の上で何してるんだ?」
私たちが検討を讃えあっていると、雨彦さんが通りかかった。呆れたように私達を見て「2人して床掃除かい?熱心なことだな」と笑うので私はなけなしの体力で床を蹴った。
「元はと言えば~~!!雨彦さんが志狼くんに変なこと教えるから~~!!」
心当たりがあるのかハハ、と雨彦さんは軽快に笑い、志狼くんを片手でひょいっと拾い、ついでにあいてる方の手で私もひょいっと立たせた。
「うお~~!たけー!!」
志狼くんはさっきまでひいひい言ってたのに、雨彦さんの視線の高さになった今はもう元気になって目をキラキラ光らせている。私は雨彦さんに支えられてようやく歩けてると言うのに、本当にアイドルって元気だな……
2/2ページ
