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彼女は甘いものが苦手だ。いかにもスイーツ大好き!生クリームおいしい!パンケーキおいしい!みたいな顔してるでしょ、と彼女も笑う。彼女はちょっと一口、ならいいのだけど小さなケーキ一つ食べるのにも苦労するし、だいたい半分でギブアップして俺に回ってくる。
たとえばデートでパンケーキを食べに行く時、彼女は主食系のパンケーキを頼むかコーヒーだけ飲むし、俺の注文したデザートっぽいメニューと大体逆に置かれて交換する。しかもコーヒーはブラックで飲む。初めての時はお互いに困惑したし笑いながら交換したものだけど、今となっては名前は「そうですよね、そう思いますよね、でも逆なんです」とでも言わんばかりの顔で「はい、英雄さん」と皿を差し出してくる。
「こないだのやつなんだけど」
「この間のお仕事の?」
今日も俺がイチゴのたくさん乗ったパンケーキ、名前は何も入れないブラックコーヒーをゆっくり飲んでいる。いつも通りだ。
またこちらもいつもの通りで、当然のようにふんわりしたかわいらしい雰囲気の名前の前にイチゴのパンケーキが置かれ、俺はコーヒーと一緒に砂糖とミルクのはいった銀色の入れ物を置かれた。名前は無言で皿を掲げ、俺に手渡したのが数十分前のことだ。その様子があんまりにも静かだったので、イチゴだけ食べるか?と聞いたら嬉しそうに頷いた。四当分だか八当分にされたイチゴをいくつかフォークで刺して渡したら花が咲くように笑うものだから、俺はいつもいい笑顔だよなあと思ってみている。
「土産、まだ渡してなかったからさ」
「ああ、ありがとう」
ふんわりした髪、優しげな顔に似合う優しい雰囲気で彼女は笑ってコーヒーカップを下ろした。その笑い方もかわいいよなあ。フランスに行くよと言った時も「え!すごいね、いってらっしゃい!」と朗らかに送り出されたのが懐かしい。
「名前甘いもの食べないし何がいいか迷ったんだけど……」
「それはご迷惑を……」
「迷惑じゃないって……ほら」
割らないように大事に持ち帰ったそれをそっと箱から出す。
両手で持てるくらいの小さなランプみたいなガラスのいれものに大きめのバラが一つ、つぼみや小さいバラが周りを取り囲むそれを「割るなよ」と釘を刺してから手渡した。深い金色の金具や少しくすんだピンク色を中心としたデザインがいかにも華やかなフランスらしい。金具や花の形がかわいすぎない印象を強めていて、見たときに好きそうだなって思った。ロココっていうのは前に美術館の仕事をした時に覚えたけどそれにちょっと似ている。それより派手すぎず、新しいものだからロココ風、とかになるのだろうか。
薄いガラス越しに見た名前の目はきらきらしていてすごい、と口が動いた。きれい……とつぶやいた口は先ほど下ろしたカップに付着したのと同じピンク色をしていた。甘いものが苦手でもやっぱり女の子だよなあと思わずにやけてしまう。
「プリザーブドフラワーってフランスで生まれたものらしいぜ……いろいろ売ってたよ」
「知らなかった!長持ちするんだよね。ドライフラワーとどう違うんだろう」
名前は光にかざしたりゆっくり回してみたりしていろんな角度から見ては感嘆のため息をついている。その顔もかわいいなあと言いかけ、黙ってお冷やに口をつけた。名前はまだ俺の視線に気づかずに熱心にバラのランプをみつめている。
たとえばデートでパンケーキを食べに行く時、彼女は主食系のパンケーキを頼むかコーヒーだけ飲むし、俺の注文したデザートっぽいメニューと大体逆に置かれて交換する。しかもコーヒーはブラックで飲む。初めての時はお互いに困惑したし笑いながら交換したものだけど、今となっては名前は「そうですよね、そう思いますよね、でも逆なんです」とでも言わんばかりの顔で「はい、英雄さん」と皿を差し出してくる。
「こないだのやつなんだけど」
「この間のお仕事の?」
今日も俺がイチゴのたくさん乗ったパンケーキ、名前は何も入れないブラックコーヒーをゆっくり飲んでいる。いつも通りだ。
またこちらもいつもの通りで、当然のようにふんわりしたかわいらしい雰囲気の名前の前にイチゴのパンケーキが置かれ、俺はコーヒーと一緒に砂糖とミルクのはいった銀色の入れ物を置かれた。名前は無言で皿を掲げ、俺に手渡したのが数十分前のことだ。その様子があんまりにも静かだったので、イチゴだけ食べるか?と聞いたら嬉しそうに頷いた。四当分だか八当分にされたイチゴをいくつかフォークで刺して渡したら花が咲くように笑うものだから、俺はいつもいい笑顔だよなあと思ってみている。
「土産、まだ渡してなかったからさ」
「ああ、ありがとう」
ふんわりした髪、優しげな顔に似合う優しい雰囲気で彼女は笑ってコーヒーカップを下ろした。その笑い方もかわいいよなあ。フランスに行くよと言った時も「え!すごいね、いってらっしゃい!」と朗らかに送り出されたのが懐かしい。
「名前甘いもの食べないし何がいいか迷ったんだけど……」
「それはご迷惑を……」
「迷惑じゃないって……ほら」
割らないように大事に持ち帰ったそれをそっと箱から出す。
両手で持てるくらいの小さなランプみたいなガラスのいれものに大きめのバラが一つ、つぼみや小さいバラが周りを取り囲むそれを「割るなよ」と釘を刺してから手渡した。深い金色の金具や少しくすんだピンク色を中心としたデザインがいかにも華やかなフランスらしい。金具や花の形がかわいすぎない印象を強めていて、見たときに好きそうだなって思った。ロココっていうのは前に美術館の仕事をした時に覚えたけどそれにちょっと似ている。それより派手すぎず、新しいものだからロココ風、とかになるのだろうか。
薄いガラス越しに見た名前の目はきらきらしていてすごい、と口が動いた。きれい……とつぶやいた口は先ほど下ろしたカップに付着したのと同じピンク色をしていた。甘いものが苦手でもやっぱり女の子だよなあと思わずにやけてしまう。
「プリザーブドフラワーってフランスで生まれたものらしいぜ……いろいろ売ってたよ」
「知らなかった!長持ちするんだよね。ドライフラワーとどう違うんだろう」
名前は光にかざしたりゆっくり回してみたりしていろんな角度から見ては感嘆のため息をついている。その顔もかわいいなあと言いかけ、黙ってお冷やに口をつけた。名前はまだ俺の視線に気づかずに熱心にバラのランプをみつめている。
