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「今日はいい天気だなー!降水確率30パーセント!干すぞー!!」
日曜朝早く、大きな声での宣言が聞こえて私は思わず足を止めた。
「龍くん?」
「あ、プロデューサーさん」
事務所備え付けの洗濯コーナーに顔だけ出すと大きなカゴにたくさん洗濯物を入れた龍くんの姿。大きな声がもわんと反響した。
「どうかしました?今日お休みですよね?」
「いや、目が覚めちゃって。ランニングしながら事務所の近く通ったら開いてて、」
社員が忙しそうだったので毎週末にまとめてやってる大物の洗濯を引き受けてくれたのだという。押し付けられたわけじゃないけどアイドルが休日に事務所に来て大量の洗濯物を……かなりの確率だ。しかし、それに応じて元気に洗濯をしてくれた……なんて心優しい人なんだろう……薄暗い洗濯コーナーだけど龍くんがきらきら輝いて見える。
「龍くん……いえ、ありがとうございます。それと、よかったらお手伝いさせてください」
「あれ、仕事は?」
「明日の会議の資料取りに来ただけで午後からなんです。お手伝いしますよ」
カゴを持とうとしたら、ひょいっと龍くんに奪われて「絶対俺の方が力あるんで!」って今日にふさわしい太陽みたいな明るい笑顔。あっ、今の顔撮っておけばよかった。
「よーし干すぞー!!!」
晴れてるならサンルームで、ただし屋根なしなので天気が悪ければ乾燥機を使うこと。そのルールに従ってサンルームにつながるドアを開けた瞬間、だーーーっと滝のような雨。
勢いよく笑顔のままドアを開けた龍くんが一瞬にして固まる。
「うわ龍くん、濡れちゃうから戻って戻って!」
近年よくあるゲリラ豪雨というやつだろうか。洗ったばっかりの洗濯物たちは無事だが龍くんが濡れた。なので、備品のバスタオルをかけてあげた。
「うう……30%快晴だったのに……」
「ゲリラ豪雨は本当に突発ですから……」
龍くんはため息をついてTシャツを脱いで、ドアをちょっとだけ上げてT シャツを絞った。バスタオルを引っ掛けただけの体はこの間虎牙道との合同イベントの時も思ったけど、締まってて筋肉が綺麗についてる。
気になって仕方ないけど不躾に見るものでもないし、と言い聞かせて目をそらす。
「替えのTシャツ、探してきます」
あ、って龍くんの呼び止める声がしたけど振り切って事務所Tシャツの仕舞ってある棚へ。
はあーって棚から下ろした315!のTシャツを口元に押し当てて大きなため息。龍くんはいつも不運に目が行きがちだけどそんなの差し引いてもアイドルとして十分魅力的で、かっこいい。ちゃんと自分の魅力の上限把握してる?!?!今の顔見せてあげたい!!と言いたくなるくらい龍くんがかっこよく見えてしまうのは、惚れた欲目もあるだろう。
「やば、お化粧ついちゃう」
はっとして慌ててTシャツを離す。
「プロデューサーさん?あ、いたいた」
「遅くなってごめんなさい」
肩にバスタオル引っ掛けただけで惜しみなく晒されたその肉体が直視できない。Tシャツを渡すために近寄ると身長差で、目の前にその筋肉が来る。
「プロデューサーさんの匂いがするなあ」
わかる?って肩を抱かれて龍くんのTシャツと密着する。腹ちら状態で笑顔で、ものすごい威力。Tシャツの下の、熱がすごくて顔を見られない。話、変えたい。
「雨やみませんね」
「あ、でもこれだけ勢いよく降ったらこの後絶対晴れるし……方角的には虹が出る!……はず!」
必死に頭回して、話題を逸らすために外を見たのに、にっこり笑って言うからまた龍くんに目が釘づけだ。
「Tシャツありがとう、プロデューサーさん」
そう言ってカゴの元へ戻る龍くんの、背中がぺろんと捲れたままだったので慌てて追いかけて裾を引き下ろす。なんていうか、めちゃめちゃえっちだ。ものすごくくびれてるとかいうわけじゃないのに、目が離せない。
「見てよ、プロデューサーさん!やっぱり虹だ!!」
そんな私を放って、龍くんは勢いよくドアを開けた。さっきまでの土砂降りが嘘みたいに太陽と真っ青な空、散り切らない雲、それから大きな虹。
それらを背負ってこちらを振り向く龍くんは、すごくかっこよくて思わずスマホのカメラを起動した。この一枚を雑誌のグラビアに採用したいくらいだ。
「あっプロデューサーさんまた写真?」
「信玄さんと握野さんにも後でお見せしようと思って。……それにしてもよく撮れたなあ。私もデスクに飾ろうかな」
見せて見せてと、カゴを下ろした龍くんが顔を寄せる。近い。鼻が高くて目がキラキラしてて、私の好きなアイドル木村龍のそのままの姿だ。
「あっ洗濯のCMみたいになるかも!プロデューサーさん、見ててくれ!!」
ぬかるみに足を取られつつもカゴまで走り、シーツをばさっと翻した。
見てて!とかこれ見て!とか仕事の時も龍くんはよく私に教えてくれる。こうやって同じものが同じ目線で見れるのはすごく幸せなことで、ずっとそうありたいって思う。
次々シーツやタオルが干されていって、なんだか今日はこのまま何事もなく終わる気がした。
「プロデューサーさん!今日はなんだか順調に行く気がするんだ!すっげぇ嬉しいよ!!」
そうだね、私も同じ気持ちって伝えるためにもう一枚。私の大好きなアイドルの彼は、今日も最高の笑顔だ。
