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ダンボールの山々に山村くんと2人怯えるのが2月の風物詩となりつつある。そうやって怯えている間にもドカドカ箱は積まれていって、今日も2人通路の確保に追われている。
「プロデューサー?」
積み上げられたダンボールの隙間から整った顔が突然現れて私は変な声をあげて、持っていたダンボールを落としかけた。
「…っと」
すかさず手が伸ばされ、ファンのみんなの気持ちが詰まった大事な贈り物が床に落ちることは避けられた。
「恭二くん、ありがとう」
「いや、驚かせたみたいで……悪い」
「ううん、危ないところでした」
恭二くんはそのままダンボールを受け取ってどこに置けばいい?と私に尋ねた。宛名を見て、恭二くん宛だからこっちに置いてと伝えると恭二くんは左右で色の違う目をわずかに細めた。嬉しいんだ、それでちょっと照れてる。
「チョコ、毎年増えてるのわかる?」
「ああ、知ってる」
駆け出しの頃はごくごく僅かだったチョコをまとめて渡したら照れた顔で「これ、全部俺に?」って聞いてきた。今じゃダンボール一箱じゃとてもおさまらなくて、恭二くんも感慨深そうにタワーを見た。
今年はあまりに多いので配送会社にお金を払ってアイドルごとに箱を分け、事務所にそれぞれ積み上げた。今事務所には46以上の島(ユニットごとや事務所へ、というチョコもあるしタワー1つじゃ足りないアイドルだっているのだ)が乱立している。
「そうか、今年は円城寺さんと信玄さんがいないんだな」
ハッとした顔で恭二くんは手を打ち私は困った顔で同意した。そう、毎年バレンタインには力持ちな道流さんと誠司さんが率先して仕分けと積み上げをやってくれていたのだ。そんな2人は今年、コンビニとのコラボでバレンタインは大忙しだ。テレビをつければキリオくんや直央くん、道夫さんと一緒にキラキラしてる2人の姿。今回のお仕事の関係でもらったチョコもたくさんあってそれで、てんてこ舞いというわけなのだ。
「でも、今年は強力な助っ人がいるんですよ。山村くんも大助かりだと言ってたので多分そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「助っ人?だれかうちに、そんな力仕事のできるようなやつが……」
「プロデューサー、今届いている分はこれで全部みたいですよ」
割って入った声に恭二くんと2人顔を向ける。ダンボールを4箱ほど抱えていて顔は見えないけれど、声、真冬にもかかわらず袖をまくった白いシャツで恭二くんもわかったらしい。
「北斗くん、お疲れさまです。とりあえずそれは降ろしてもらって仕分けしますね」
「ああ、手伝いますよ」
意外と力仕事ができるんだな、と恭二くんが驚いているのでこっそり北斗くんってグランドピアノ動かせるし腕立て300回できますよ、と耳打ちする。
「せっかくの誕生日なのに手伝わせてしまってすみません」
「プロデューサー、俺は謝られるよりお礼の方が嬉しいですよ」
下ろしたダンボールの宛名から目線を外し北斗くんはにっこり微笑んで見せた。眩しい。いつも恭二くんを見た時も思うけど、本当にうちのアイドルたちは眩しい。
「北斗くんがいてくれて助かりました。ありがとう」
「プロデューサー、事務所宛の箱はどうしたらいい?」
「あ、社長室に持っていくので廊下に出しておいてください」
そこに割って入る恭二くんの声に慌てて作業を再開する。そうだ、まだまだダンボールはたくさんあるのだから。
それでも北斗くんが運んできた分と頭に雪を積もらせた山村くんが台車で連れてきた分で今日の分はおしまい。外で業者の駐車場案内だの連絡だのをしてくれた山村くんは冷え切ってて北斗くんも動いていたけど薄いシャツ一枚で作業してくれたわけなので、休憩にあたたかいものを出すことにした。
「先日、チョコに合うっていう紅茶とコーヒーいただいたんですけど、どっちにします?」
北斗くんと山村くんのリクエストを聞き届けて、恭二くんと2人給湯室へ。その間に山村くんが事務所宛のチョコから1番いいやつを選んでおいてくれるはずだ。
「あんなにたくさんのチョコ、全部片付くのか?」
「うーん、前は賞味期限順に並べて計画的に食べきった人もいたけど……さすがに今年は厳しいよね」
「そうだな……とりあえずあんたのとこに行くのにこの迷路がずっとあるのは困る」
「手紙とかプレゼントは分けていつも通り皆さんにお渡しするんですけど……手作りのものがあれば申し訳ないですけど廃棄して既製品も消費が難しければこちらでお預かりしますよ。恭二くんなんて来年のバレンタインまでチョコ買わなくても良さそうですしね」
恭二くんはそれもそうだなと言ってやかんを火にかけ、シンクに寄りかかった。
「そういえば、あんたからはアイドルたちにはやらないのか?」
「あはは、事務所にたくさん届くのでチョコはいいかな~と思ってみなさんには今年も用意してません。でも代わりに今日はおいしい紅茶とコーヒー、淹れますね」
「俺にも?」
色違いの目が、すっと細まったのを見て私は黙った。
私たちの他には社長しか知らないことだが、私と恭二くんはお付き合いをしている。お付き合いをしてから今年が初めてのバレンタインで、私も浮かれなかったわけがない。でも恭二くんには食べきれないほどのプレゼントが贈られることが予想できたからチョコは買わなかったし、一般人の作った衛生管理がなっているとはいえないチョコをアイドルに食べさせるのも気が引けて作ることもしなかった。結果、何もなしということになった。
「ポケットにチョコ入ってるんだろ」
「え?GABAだよ。これ、そんな特別なやつじゃないよ」
餌付け用、というと聞こえが悪いが若い男ばかりの事務所なのでしばしばお腹すいた~!とおやつをねだられる時がある。その時あげる用のチョコがスーツの左ポケットに入ってることを恭二くんも当然知っている。Beitで社用車で移動する時、助手席に座ったピエールに渡すと必ず後部座席のみのりさんと恭二くんにもそれが回るからだ。
チョコレート、ストレス解消!と笑顔で一粒ずつ手渡されるのだがそのピエールの笑顔がチョコよりストレス解消に効果がある、というのがみのりさんと私の見解だ。事実あの物質自体に明確な効果はないし。
「それでいい、1つくれ」
「本当にこれでいいの?」
こんなことになるならちゃんと買っておけばよかったと思いながら見慣れた赤いパッケージを取り出すと恭二くんがぱかりとチャックを開けて私の手を掴み、一粒とらせた。差し出された手のひらにその見慣れた丸いチョコを落とすと、それで満足したらしい。
「こんなのでよかったの?」
「まあ、これもちゃんとあんたにもらったチョコだからな」
「間違ってはないけど……」
しゅんしゅんと音を上げるヤカンだけがうるさくて恭二くんはチョコを食べていて私だけが手持ち無沙汰だ。安上がりだなあ。
「ところで恭二くん、北斗くんに嫉妬した?」
「……してない」
「したでしょ」
「してない」
「……まあ、いいけど。助かったよ、手伝ってくれてありがとう」
北斗くんが楽々4つ持ち上げたダンボールだけど恭二くんは仕分けする時1つずつ運んだ。それが実はちょっとショックだったらしい。そのあと私が北斗くんにお礼を言った時すぐさま割って入ったのもなんとなくわかってる。北斗くんの笑顔にも面白そうな色が見て取れた。経験値の高い北斗くんにはやっぱりかなわない。
お湯が沸いたのでむっすりとどことなく不満気な恭二くんを壁に押しやって、紅茶を2つコーヒーを2つ用意する。今度は恭二くんが手持ち無沙汰になっている。
「お疲れ様。コーヒー運んでくれる?」
「俺を選んでくれたんだ、やってみせるさ」
不敵な顔でいつかと同じことを言って、たったそれだけの仕事なのにやる気を出してくれて笑ってしまう。コーヒーは恭二くんが持ってくれたので私は紅茶が乗ったトレーを持った。
「いつか、」
「え?何、」
「いつか必ず、ちゃんと俺を選んだこと正しかったって思わせてやるよ……あんたはただ、待ってればいい」
「えっ!」
恭二くんが少しかがんで首を傾けると、目尻にリップ音。恭二くんは背が高いから身長差でいつもキスは不恰好になる。
恭二くんは何事もなかったかのようにすたすた歩き出すから、追いつこうと焦って紅茶のカップをガタガタ言わせてしまった。それに気を良くしたみたいで鼻で笑うような顔。ファンの間で「王子の笑顔ってスカしてるよね」と言われることの多いあの笑顔だ。
「プロデューサーさん、遅かったですね」
もうチョコ選んじゃいましたよと山村くんはにこにこ笑って、何も言わない代わりに全部わかってるんですよと言いたげに北斗くんも笑って、私はいたたまれなくなる。
見事私に仕返しを遂げた恭二くんといえば、呑気に一粒数百円もするチョコをつまんでいた。
「これもうまいけど、俺はさっきのやつも好きだな」
「え?恭二くんもうファンからのチョコ食べたんですか?」
山村くんの言葉に頭を抱えたくなるけど、ここでそうしたら本当に負けだ。北斗くんからの視線が痛い。
来年はチョコ、ちゃんと準備しよう。密かに決意を固める私をよそに北斗くんと山村くんと恭二くんはパクパクお高いチョコを食べている。
「プロデューサー?」
積み上げられたダンボールの隙間から整った顔が突然現れて私は変な声をあげて、持っていたダンボールを落としかけた。
「…っと」
すかさず手が伸ばされ、ファンのみんなの気持ちが詰まった大事な贈り物が床に落ちることは避けられた。
「恭二くん、ありがとう」
「いや、驚かせたみたいで……悪い」
「ううん、危ないところでした」
恭二くんはそのままダンボールを受け取ってどこに置けばいい?と私に尋ねた。宛名を見て、恭二くん宛だからこっちに置いてと伝えると恭二くんは左右で色の違う目をわずかに細めた。嬉しいんだ、それでちょっと照れてる。
「チョコ、毎年増えてるのわかる?」
「ああ、知ってる」
駆け出しの頃はごくごく僅かだったチョコをまとめて渡したら照れた顔で「これ、全部俺に?」って聞いてきた。今じゃダンボール一箱じゃとてもおさまらなくて、恭二くんも感慨深そうにタワーを見た。
今年はあまりに多いので配送会社にお金を払ってアイドルごとに箱を分け、事務所にそれぞれ積み上げた。今事務所には46以上の島(ユニットごとや事務所へ、というチョコもあるしタワー1つじゃ足りないアイドルだっているのだ)が乱立している。
「そうか、今年は円城寺さんと信玄さんがいないんだな」
ハッとした顔で恭二くんは手を打ち私は困った顔で同意した。そう、毎年バレンタインには力持ちな道流さんと誠司さんが率先して仕分けと積み上げをやってくれていたのだ。そんな2人は今年、コンビニとのコラボでバレンタインは大忙しだ。テレビをつければキリオくんや直央くん、道夫さんと一緒にキラキラしてる2人の姿。今回のお仕事の関係でもらったチョコもたくさんあってそれで、てんてこ舞いというわけなのだ。
「でも、今年は強力な助っ人がいるんですよ。山村くんも大助かりだと言ってたので多分そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「助っ人?だれかうちに、そんな力仕事のできるようなやつが……」
「プロデューサー、今届いている分はこれで全部みたいですよ」
割って入った声に恭二くんと2人顔を向ける。ダンボールを4箱ほど抱えていて顔は見えないけれど、声、真冬にもかかわらず袖をまくった白いシャツで恭二くんもわかったらしい。
「北斗くん、お疲れさまです。とりあえずそれは降ろしてもらって仕分けしますね」
「ああ、手伝いますよ」
意外と力仕事ができるんだな、と恭二くんが驚いているのでこっそり北斗くんってグランドピアノ動かせるし腕立て300回できますよ、と耳打ちする。
「せっかくの誕生日なのに手伝わせてしまってすみません」
「プロデューサー、俺は謝られるよりお礼の方が嬉しいですよ」
下ろしたダンボールの宛名から目線を外し北斗くんはにっこり微笑んで見せた。眩しい。いつも恭二くんを見た時も思うけど、本当にうちのアイドルたちは眩しい。
「北斗くんがいてくれて助かりました。ありがとう」
「プロデューサー、事務所宛の箱はどうしたらいい?」
「あ、社長室に持っていくので廊下に出しておいてください」
そこに割って入る恭二くんの声に慌てて作業を再開する。そうだ、まだまだダンボールはたくさんあるのだから。
それでも北斗くんが運んできた分と頭に雪を積もらせた山村くんが台車で連れてきた分で今日の分はおしまい。外で業者の駐車場案内だの連絡だのをしてくれた山村くんは冷え切ってて北斗くんも動いていたけど薄いシャツ一枚で作業してくれたわけなので、休憩にあたたかいものを出すことにした。
「先日、チョコに合うっていう紅茶とコーヒーいただいたんですけど、どっちにします?」
北斗くんと山村くんのリクエストを聞き届けて、恭二くんと2人給湯室へ。その間に山村くんが事務所宛のチョコから1番いいやつを選んでおいてくれるはずだ。
「あんなにたくさんのチョコ、全部片付くのか?」
「うーん、前は賞味期限順に並べて計画的に食べきった人もいたけど……さすがに今年は厳しいよね」
「そうだな……とりあえずあんたのとこに行くのにこの迷路がずっとあるのは困る」
「手紙とかプレゼントは分けていつも通り皆さんにお渡しするんですけど……手作りのものがあれば申し訳ないですけど廃棄して既製品も消費が難しければこちらでお預かりしますよ。恭二くんなんて来年のバレンタインまでチョコ買わなくても良さそうですしね」
恭二くんはそれもそうだなと言ってやかんを火にかけ、シンクに寄りかかった。
「そういえば、あんたからはアイドルたちにはやらないのか?」
「あはは、事務所にたくさん届くのでチョコはいいかな~と思ってみなさんには今年も用意してません。でも代わりに今日はおいしい紅茶とコーヒー、淹れますね」
「俺にも?」
色違いの目が、すっと細まったのを見て私は黙った。
私たちの他には社長しか知らないことだが、私と恭二くんはお付き合いをしている。お付き合いをしてから今年が初めてのバレンタインで、私も浮かれなかったわけがない。でも恭二くんには食べきれないほどのプレゼントが贈られることが予想できたからチョコは買わなかったし、一般人の作った衛生管理がなっているとはいえないチョコをアイドルに食べさせるのも気が引けて作ることもしなかった。結果、何もなしということになった。
「ポケットにチョコ入ってるんだろ」
「え?GABAだよ。これ、そんな特別なやつじゃないよ」
餌付け用、というと聞こえが悪いが若い男ばかりの事務所なのでしばしばお腹すいた~!とおやつをねだられる時がある。その時あげる用のチョコがスーツの左ポケットに入ってることを恭二くんも当然知っている。Beitで社用車で移動する時、助手席に座ったピエールに渡すと必ず後部座席のみのりさんと恭二くんにもそれが回るからだ。
チョコレート、ストレス解消!と笑顔で一粒ずつ手渡されるのだがそのピエールの笑顔がチョコよりストレス解消に効果がある、というのがみのりさんと私の見解だ。事実あの物質自体に明確な効果はないし。
「それでいい、1つくれ」
「本当にこれでいいの?」
こんなことになるならちゃんと買っておけばよかったと思いながら見慣れた赤いパッケージを取り出すと恭二くんがぱかりとチャックを開けて私の手を掴み、一粒とらせた。差し出された手のひらにその見慣れた丸いチョコを落とすと、それで満足したらしい。
「こんなのでよかったの?」
「まあ、これもちゃんとあんたにもらったチョコだからな」
「間違ってはないけど……」
しゅんしゅんと音を上げるヤカンだけがうるさくて恭二くんはチョコを食べていて私だけが手持ち無沙汰だ。安上がりだなあ。
「ところで恭二くん、北斗くんに嫉妬した?」
「……してない」
「したでしょ」
「してない」
「……まあ、いいけど。助かったよ、手伝ってくれてありがとう」
北斗くんが楽々4つ持ち上げたダンボールだけど恭二くんは仕分けする時1つずつ運んだ。それが実はちょっとショックだったらしい。そのあと私が北斗くんにお礼を言った時すぐさま割って入ったのもなんとなくわかってる。北斗くんの笑顔にも面白そうな色が見て取れた。経験値の高い北斗くんにはやっぱりかなわない。
お湯が沸いたのでむっすりとどことなく不満気な恭二くんを壁に押しやって、紅茶を2つコーヒーを2つ用意する。今度は恭二くんが手持ち無沙汰になっている。
「お疲れ様。コーヒー運んでくれる?」
「俺を選んでくれたんだ、やってみせるさ」
不敵な顔でいつかと同じことを言って、たったそれだけの仕事なのにやる気を出してくれて笑ってしまう。コーヒーは恭二くんが持ってくれたので私は紅茶が乗ったトレーを持った。
「いつか、」
「え?何、」
「いつか必ず、ちゃんと俺を選んだこと正しかったって思わせてやるよ……あんたはただ、待ってればいい」
「えっ!」
恭二くんが少しかがんで首を傾けると、目尻にリップ音。恭二くんは背が高いから身長差でいつもキスは不恰好になる。
恭二くんは何事もなかったかのようにすたすた歩き出すから、追いつこうと焦って紅茶のカップをガタガタ言わせてしまった。それに気を良くしたみたいで鼻で笑うような顔。ファンの間で「王子の笑顔ってスカしてるよね」と言われることの多いあの笑顔だ。
「プロデューサーさん、遅かったですね」
もうチョコ選んじゃいましたよと山村くんはにこにこ笑って、何も言わない代わりに全部わかってるんですよと言いたげに北斗くんも笑って、私はいたたまれなくなる。
見事私に仕返しを遂げた恭二くんといえば、呑気に一粒数百円もするチョコをつまんでいた。
「これもうまいけど、俺はさっきのやつも好きだな」
「え?恭二くんもうファンからのチョコ食べたんですか?」
山村くんの言葉に頭を抱えたくなるけど、ここでそうしたら本当に負けだ。北斗くんからの視線が痛い。
来年はチョコ、ちゃんと準備しよう。密かに決意を固める私をよそに北斗くんと山村くんと恭二くんはパクパクお高いチョコを食べている。
