林檎紅茶の余韻〜星降る夜の小品集〜

 春の花々が咲き乱れ、光に溢れた庭園。
 薄紅のドレスに白いタブリエを着けた愛らしい王太女が、古い民謡を口遊くちずさみながら花を摘んでいる。
 星座の神話にある冥界の王が恋した春の女神はこのような姿だったのだろうかと、傍らで見守る騎士団長は思った。
「花の砂糖漬けを作るのですわ」
 小さな籠を抱えた王太女が言った。
「砂糖漬け……リゼット様、花を召し上がるのですか?」
 騎士団長は、彼女の瞳の色に似た菫の花を籠からひとつ取って訊いた。
「ええ。お菓子の飾りにしたり紅茶に浮かべたり、そのままでも。宝石みたいに綺麗なのよ。あ、シラス君と父上様が飲むお酒にも使えますわ」
 そう言って満開の花のような笑みを見せた王太女は、どうやら花より団子らしい。
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