残雪とハデスの兜

【ガブリエラの最期】

中盤以降 数多の魂が集まったことにより現世でも原型になれるようになったしろがね 本調子ではないが自ら戦場に姿を現わし、命を刈り取ろうとする

 冥府の王の降臨に敵味方問わず恐怖に支配された。唯一、平然としているバリオスが気安く声をかける。

「おいおい、大将自ら出てきちまったのか?」
『ようやくここまで回復したから、みんなをきちんとこの目で見てみたくて。……だめ?』
「だめじゃねえがよ。まだまだ本調子じゃねえんだからだから無理はすんなよ」
『うん。ありがとう』

 これで、本調子ではないですって?
 ガブリエラはギリッと奥歯を噛みしめ、鋭い眼光で睨み上げた。
 全滅だけは何としても避けねばならない。仲間を、国を、民を、守らなくては。そのための最善策は──今ここでこのバケモノを殺す。例えこの身がどうなろうとも。

「総員退避ッ!!わたくしが行きます!!」

 隊長、という部下の声は無視して右腕を高く掲げる。そこに燦然と輝くはメガリング。この国の叡智の結晶。

「2つの石よ、我が身を捧げる!すべてを貫くつるぎとなれ!!メガシンカ!!」

 ガブリエラの右腕と体内に埋め込まれた石が眩い光を放つ。目を焼くほどの輝きの中から現れたのは、巨大な紅蓮の翼をはためかせ、猛る金の瞳でまっすぐ前を見据える勇ましき竜──メガボーマンダ。彼女は数少ない単独メガシンカの成功例だった。

「ガブリエラ!!」
『ヨハン。後は頼みましたわ』

 友へ微かに微笑んで、力強く羽ばたいた。りゅうのまいを重ねがけしながらぐんぐん上昇していく。ガブリエラが何をしようとしているのかいち早く察したバリオスが彼女へシャドーボールを放つが、ヨハンのこおりのつぶてで相殺される。

「改めて命じる!総員退避!!必ず生還しろ!!」

 背中越しにヨハンの声が響く。ええ、その通りですわ。こんなところで終わらせはしない。あなたは盾。わたくしつるぎ。己が務めを果たしましょう。

『りゅうせいぐん!!』

 轟音と共に巨大な隕石がいくつも降り注いだ。星に抉られ、地を這うような声で呻く冥府の竜の心臓に狙いを定める。

『まだまだァッ!!──ギガインパクト!!!!』
 
 持てる力のすべてを賭して突撃する。ビキビキビキッ!全身の骨や肉が悲鳴を上げた。知ったことか。必ず穿つ。

 あと少し、もう少し――。
 
 突如、巨大な漆黒の翼が動き、深紅の爪が目の前に振り下ろされた。



ガブリエラの気高く苛烈な輝きに心を動かされたしろがねは思わずドラゴンクローで応戦し、彼女の魂を奪い取る 肉体は無茶な特攻と神の爪が直撃したことで跡形もなく塵と化す
ガブリエラの美しさにはしゃいだしろがねが広範囲にりゅうのはどうをぶっ放すせいで彼女が守ろうとした仲間たちの大半が焼かれて死ぬ しろがねに大ダメージを与えられた代償がこれ わりと無駄死にだし命懸けの特攻がむしろ逆効果だった

負傷したしろがねを連れて撤退するバリオス
「ったく、せっかく回復してきたのに何で躱さなかったんだよ。せめて防御くらいしろっての」
「すごく綺麗だったから躱しちゃうのもったいなくて。あの子に殺されたがるネレイダの気持ち、よくわかるなあ」「でも、惜しいことしちゃったな。ほんとはもう少し育ててから刈り取るつもりだったのに、あんまり綺麗だったから……」
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