カミサマの玩具箱

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主人公

※注意※
このお話は人を選ぶ描写・要素がかなり強めです。本当に何でも許せる方、地雷がない方のみご覧ください。
ネタバレあり要素
胸糞、裏切り、洗脳NTR、惨殺、死ネタ


ウツロイド編※ GL 名前変換推奨
【クロカンブッシュを積み上げて】

 カランコロン、軽快なベルが鳴る。一旦手を止めて顔を上げ、カウンターから「いらっしゃいませ!」と微笑んだ。
 すぐさまホールスタッフが訪れた2人組に近付き、席へ案内する。それを横目で見ながら手元のガトーショコラに意識を戻した。
 真っ白なお皿の上でおすまししているガトーショコラにクリームを添え、ミントとラズベリーで飾り付け。よし!素早く、されど静かにお皿を持ち上げてカウンターへ。

「5番さんのガトーショコラ、できました」

 ちょうどオーダーを伝えにきた後輩にお皿を渡し、代わりにオーダーを受けとった。ざっと目を通して作業に取り掛かる。
 今はランチタイムだから次から次へ注文が舞い込んでくる。ニャースの手も借りたいとは正にこのこと。カウンターの内側でもホールでも皆くるくる忙しなく動き回っている。本日何個めかわからないランチAセットを見送り、額の汗を拭った。

 カフェ・はねやすめ。ハウオリシティの一角にあるこのお店で、私は2年前からキッチンスタッフとして働いている。
 子どもの頃から料理を作るのが大好きで、作った料理を食べた人が笑顔になってくれることがもっと好きだった。だから料理に関わる仕事がしたくて、今に至る。
 毎日家と職場の往復で、失敗することも大変なことも度々あるけれど、お客さんの笑顔を見るとお腹から力が湧いてくる。私の料理でもっとたくさんのひとを笑顔にしたい。

「ん~、おいしー!」

 カウンター席の端に座る女性客がフォークを片手に表情をとろけさせた。思わず緩みそうになる唇を慌てて引きしめる。よしっ、頑張るぞ!



 本日の業務を全て終え、口々に「お疲れ様でした」を交わし合う。今日はお客さんいっぱい来たなあ。お腹すいた~。早く帰ろう。

ナマエさん」

 突然後ろから凛とした声に呼び止められ、ばっと振り返った。声の主は赤縁眼鏡にピンク色の髪を持つ綺麗な男のひと――ラランテスのララくんだ。同期で歳も近いから結構話すんだよね。

「ララくん、お疲れ様!どうかしたの?」
「お疲れ様です。大した用ではないのですが……先日、僕のトレーナーが出張でシンオウに行ったんです。お土産をたくさん買ってきてくれたので皆さんにもお裾分けしようと思って。もりのヨウカン、お好きですか?」
「わーっ、いいの!?餡子大好き!ありがとう!」

 はしゃぐ私に「よかった」とほっとしたように微笑むララくん。促されるまま両手を出すと、ひとくちサイズのもりのヨウカンが乗せられた。えへへ、久しぶりに食べるなあ……って、ひい、ふう、み、よ……多くない?

「ちょっと待って、私だけこんなにもらえないよ!」
「いいんです。僕があげたいので」

 予想外の返答に思考が止まる。……それ、どういう……? ララくんは穏やかに微笑んだまま、さらに1つヨウカンを重ねた。

「今日、お客さん多かったですよね。それにキッチンの方もひとりお休みで、いつもより少ない人数で回すのはとても大変だったと思います。疲れた時は甘いものが一番ですから。よかったら貰ってくれませんか」

 ほんのり顔に熱が宿る。クールでちょっと目つきが鋭いから誤解されちゃうこともあるけど、ララくんはすごく優しい。優しくてかっこよくて何でもスマートにこなす彼に密かに憧れていた。

「ありがとう……!大事にいただきます!」
「どういたしまして。あ、他の方々には内緒ですよ」

 人差し指を唇に当てたララくんの悪戯っぽい笑顔に心臓が跳ねた。こ、こんな顔ずるい……!!

「長々と引き留めてしまってすみません。帰り道、お気をつけて。また明日」
「うっ、うん!いろいろありがとう!また明日ね!」

 手を振り合ってそれぞれ反対方向に歩き出す。もらった5つのヨウカンを大切に鞄へしまい、弾んだ足取りで愛する我が家を目指した。

 ハウオリシティの郊外に建ち並ぶマンションのうち、手前から7番目の青いビル。そこの903号室に鍵を差し込み、がちゃりとドアノブをひねった。

「ただいま~!」
『おかえり』

 玄関でお出迎えしてくれたパートナー・クワガノンにぎゅっと抱きつく。厳密に言うと私じゃなくてお父さんのポケモンだけど。2年前、就職と同時に実家のポニ島を出ることになった時に「知らない土地で働きながらひとり暮らしをするのは大変だろう」って預けてくれたんだよね。兄妹同然に育ったこの子がいてくれてすっごく心強い。

『何かいいことでもあったか?』
「えへへ、わかる?聞いて聞いてー」
『飯食いながらな。今日はロコモコだ』
「やったー!ありがとう!」

 濃い青緑色の頭を撫で、洗面所へ向かった。クワガノンは私が仕事に行ってる間、家のことをやってくれている。ほんと助かる……いつもありがとうお兄ちゃん。
 家事する時は擬人化してるらしいんだけど、私はクワガノンの擬人化態を見たことがない。なんでも、アゴジムシの頃に初めて擬人化したら頭だけ原型のままになっちゃって、それを見た幼い私が怖がって大泣きしたんだって。それ以来、私の前では絶対に擬人化しない。今はもう完全にヒト型になれるみたいだし、私だって大人になったんだから見せてくれてもいいのになあ。

 ぶくぶくうがいをしていると、鏡越しにひょっこり顔を出すクワガノンと目が合った。

『そういえば、明日の降水確率は90%らしい。傘忘れるなよ』
「はーい」



 今日も1日仕事をこなしてお店を出ると、大粒の雨が降り注いでいた。
 あっちゃあ……。せっかくクワガノンが傘持って行けって言ってくれたのに。寝坊して慌てて出てきたから忘れてきちゃった。
 しょうがない、一番近いコンビニまで走ろう。腹を括って鞄をしっかり抱きしめる。いざ走りだそうとして――「何してるんですか?」と声をかけられた。この凛々しい声は……。振り返るとやっぱりララくん。

「実は傘忘れちゃって。コンビニまでひとっ走りしようかと」

 たはは、と笑いながら頬をかく。ララくんは「それは困りましたね」と呟き、傘立てから赤い傘を引き抜いた。

「よかったら使ってください。僕はもう1本ありますので」
「えっ!いや、でも……」

 昨日のヨウカンに続いてまたしてもララくんのご厚意に甘えるわけには……!でも正直めちゃくちゃありがたいし嬉しいし、雨だって強くなってきてるような……。

「うう……お言葉に甘えてもいいですか……?」
「勿論です」
「うわーんありがとう!!このご恩は必ずや!!」
「ふふ、お気になさらず。ではまた明日」

 ララくんは貸してくれたものと同じ色の折り畳み傘を差し、やわらかな笑顔を残して颯爽と帰っていった。遠ざかるピンクの背中に頭を下げ、鮮やかな赤い傘をそっと開く。
 激しい雨のせいか、帰り道は珍しく全然人がいなかった。普段ならこの時間は観光客をよく見かけるけど、わざわざこんな日に観光しようって思わないよね。

 それにしても、ララくんほんと優しいなあ。ますます……って、何考えてんの!?
 ぶんぶん首を振って邪念を追い払う。ララくんは誰にでも優しいから!私はララくんのそういうとこに憧れてるだけ!!

 ふと視界の端で白を捉える。あの木の下……何か、いる?
 よくよく目を凝らしてみれば――女の子だ。抱えた膝に顔を埋めて蹲っている。透き通るような長い銀髪が土の上に散らばり、泥で汚れてしまっている。あんなに綺麗なのにもったいない。
 見た感じ10歳くらいかな。あんな場所で傘も差さずにどうしたんだろう。風邪引いちゃう。
 声をかけようと近付いていくと、不意に女の子が顔を上げた。まず認識したのは、白銀の星。宇宙を溶かし込んだような瞳に意識ごと吸い込まれ――。

「……だれ?」

 つぼみのような唇から零れるか細い声。眉は八の字に垂れ下がり、星空の瞳が不安げに揺れている。
 言葉を紡ごうと息を吸ったらむせて咳き込んでしまった。あれ、私、息止まってた?

「けほっ、……あの、ごめんね!怪しい者じゃないよ!あなたみたいな小さい子がこんな所で雨に打たれてるから、つい気になっちゃって!」

 わたわたバリヤードみたいに手を動かしながら弁明する。「怪しい者じゃない」って逆に怪しいんですけど!なんか墓穴掘ってない!?
 じっと私を見つめる女の子が小さくくしゃみをした。そうだ、傘!冷たい雨粒を遮ろうと慌てて駆け寄り――目を見開いた。

「ねえっ!あなた、怪我してるじゃない!!」

 オーガンジー生地のワンピースから覗く華奢な腕は大きく切り裂かれ、悲惨な青い傷跡が刻まれている。よく見てみると、顔や服にこびりついているのは泥だけじゃなかった。
 急いで鞄からハンカチを引っ張り出す。しっとり濡れた銀髪の上に傘を傾け、痛々しいその傷をそっとハンカチで包んだ。何もしないよりきっといいはず。もう1枚あれば顔とか拭いてあげられたのに。

「さっきは大きい声出しちゃってごめんね。この怪我、どうしたの?」
「……ここのポケモンたちに〝よそ者は出ていけ〟って。わたし、ずっと遠くから来たから」
「ひどい……」

 語られた言葉に思わず顔をしかめた。そんな理由で小さな女の子を寄ってたかってひどい目にあわせるなんて。許せない。

「ありがとう。優しいのね、あなた」

 ふわり、向けられた笑顔に心臓が大きく跳ねた。白魚のような手がそっと重ねられ、ピリッと甘い痺れが背骨を走る。
 あどけなくて、同時に底知れない色香をまとった微笑み。熱が出た時みたいに胸のどきどきが鳴り止まない。……この子のこと、もっと知りたい。

「ねえ……あなた、おうちはどこ?お母さんやお父さんは?」
「……いないわ……」

 再びか細い声。女の子は膝をぎゅっと抱きしめ、視線を落としてぽつぽつ呟いた。

「わたし、迷子になっちゃって……。家族も、帰るところも、ないの」

 知らない土地でたったひとり。ポケモンたちに襲われて、怪我もして、冷たい雨まで降っている。どんなに心細いだろう。
 私がこの子を守らなきゃ。

「よかったら、うちに来ない?」

 ひんやりした小さな手を両手で包み込む。女の子は大きく目を見開き――やがて、こくんと頷いた。



 1つの傘をふたりで分け合いながら帰路に着く。
 女の子はウツロイドというポケモンらしい。足が透けてるのは原型もそうだからなんだって。
 初めて聞く名前だけど、私もポケモンに詳しいわけじゃない。後でどんなポケモンなのか調べてみよう。とにかく今はこの子を早くうちに連れて行かないと。

「ただいまー」
『おかえり。お前、傘忘れて行っただろう。大丈夫だったか?』
「うん、ララくんが傘貸してくれたの。それよりクワガノン、キズぐすりってどこにあったっけ?」

 唐突な質問にクワガノンは怪訝そうに瞬きした。次いで、私の後ろに隠れるように佇むウツロイドへ視線を向けた瞬間――『ナマエから離れろ!!』と鋭く叫んだ。

「どうしたのクワガノン、急に大声出して……」
『そいつはひどく嫌な気配がする……!!早く家の中へ!俺が追い払う!』
「ちょっと待ってよ、この子怪我してるんだよ!?しかも嫌な気配がするとか……何でそんなひどいこと言うの……?」
『お前はニンゲンだからわからないのかもしれない。だが……とにかくそいつは危険だ!!』

 クワガノンはばちばちと青いスパークを放ち、ウツロイドを威嚇する。声を荒げるところも、激しい敵意を剥き出しにした眼差しも、初めて見た。何でこんなに怒ってるの?何でそんなにウツロイドを嫌うの?家族なのにわからない。
 ピリッ。背中に甘い痺れ。ふと視線を下ろすと、私の手にしがみつき、不安げに見上げてくるウツロイドと目が合った。可哀想に。怯えてる。

「大丈夫だよウツロイド。そんな顔しないで。私が守ってあげるから」
『な……ッ!?』
「クワガノン。いきなり知らない子を連れてきたりしてごめんなさい。びっくりしたよね。でもこの子、ひどい怪我をしてるの。それに迷子で……。せめて怪我が治るまでうちに居てもらっちゃだめかな?」
ナマエ……!』

 何か言いかけたクワガノンがびたりと動きを止める。目を見開いて大きくわななき、ギリッと牙を嚙みしめた。やがて電撃を収め、絞り出すように『……わかった』と呟く。

「よかったねウツロイド!クワガノンも居ていいって!」
「ありがとう。お世話になります」

 ウツロイドの可憐な笑顔に甘いときめきが胸に広がる。ああ、この子が笑ってくれるなら何でもしてあげたい。

『治ったらすぐ出て行ってもらうぞ。……キズぐすり取ってくる』

 クワガノンは苦々しげに言い放ち、ふいっと背を向けて行ってしまった。今まで誰かにあんな態度取ったことないのに。本当にどうしちゃったんだろう。

「彼、もしかしてヤキモチ焼いてるのかしら」

 何気なくウツロイドが口にした言葉に目から鱗が落ちる。そっか!クワガノンってば、かわいいなあ。後でいっぱいぎゅーってしてあげよう。

「ねえウツロイド、お水平気?手当ての前に体洗ってあげたいんだけど」

 小さく首を振るので、お風呂はやめて濡れタオルで体を拭いてあげることにした。陶器のような肌やさらさらの髪を丁寧にぬぐって汚れを落とし、傷口にキズぐすりを吹きかける。

「ごめんね。私、トレーナーじゃないからこれしかなくて……」
「いいの。お陰で少し楽になったわ」
「ほんと?よかったあ。明日はすごいキズぐすり買ってくるね」

 手当てが済んだら食卓を囲む。だいぶ弱ってるみたいだからウツロイドのメニューはすり下ろしたオレンのみとオボンのみ。食べてくれるか不安だったけど、完食してくれて一安心。食後に出したエネココアも喜んでくれてよかった。
 ……ただ、クワガノンはあれからずっと無言のままで。こんなにヤキモチ焼きだなんて知らなかった。ウツロイドが寝たら、ぎゅーってして、なでなでして、ポケじゃらしで遊ぼうね。



「それじゃあ行ってきます!クワガノン、ウツロイドをいじめちゃだめだよ」
『早く行け。遅刻するぞ』

 玄関で軽口を叩く私に軽口で返し、しっしっと角を振るクワガノン。昨日たっぷり遊んだからか機嫌直してくれたみたい。それにしても、クワガノンとあんなにいっぱい遊んだの久々だったなあ。私も楽しかったし、これからはもっと頻繁に遊ぼうって絡んでみよう。

「いってらっしゃい。頑張ってね」

 クワガノンの後ろでウツロイドが手を振ってお見送りしてくれる。向けられた言葉も笑顔も心にほわんと火を灯す。離れがたいのをぐっと堪え、手を振り返して外へ出た。

 今日は比較的お客さんが少なくて、ララくんと同じ時間に休憩をもらえた。先に休憩室にいたララくんに借りた傘とお菓子の箱を差し出す。

「ララくん、昨日は本当にありがとう!とっても助かりました!こっちはお礼です!前に好きって言ってたから」
「マゴのみチョコレート……!僕の好きなもの、覚えていてくれたんですね。わざわざありがとうございます。嬉しいです」

 大切そうに傘とお菓子を受けとってふんわり微笑むララくん。喜んでもらえて嬉しい……のに、なんか、いつもと違う、ような。
 微かに芽生えたモヤモヤは仕事をしているうちにどこかへ飛んで行った。お客さんの笑顔を見る度に心がぽかぽかになる。
 オーダーを受けとって、料理して、食器を洗って、閉店後は皆で清掃や後片付け。全部終わったらお疲れさまでした。

 お店を出たら足早にポケモンセンターを目指す。ポケモンと暮らしてるけどバトルは全然したことないし、クワガノンも健康だから、この赤い屋根の建物にはあまり馴染みがない。
 自動ドアをくぐると消毒液の匂いが鼻をくすぐる。受付のジョーイさんに軽く会釈し、回復マシンの右手側にあるフレンドリィショップへ足を向けた。すごいキズぐすりを10個買って回れ右。ちょっと買い過ぎちゃったかもだけど、足りないより多い方がいいよね。

 ……そうだ。ウツロイドのこと、ジョーイさんに相談したらいいんじゃない?素人の私なんかより専門家に任せた方がウツロイドも早く元気になれるかも。
 そこまで考えて、ぴたりと足を止めた。
 昨日ネットで調べたけど〝ウツロイド〟は1件もヒットしなかった。ずっと遠くから来たって言ってたし、もしかするとあの子は珍しいポケモンなのかもしれない。世の中にはポケモンハンターみたいな悪い人たちがいる。ハンターじゃなくても珍しいポケモン、綺麗なポケモンが好きな人はたくさんいる。あの子を人目に晒したら、また危ない目に遭っちゃうんじゃ……。

 居ても立っても居られなくて逃げるようにポケモンセンターを飛び出した。だめ、だめ、そんなの絶対だめ!!
 私がウツロイドを守らなきゃ。

 アスファルトの上を乱暴に走り抜ける。道行く人たちとぶつかりそうになりながらマンションに駆け込み、鍵を開けることすらもどかしく思いつつようやくドアを開けた。
 体をすべりこませて即座に鍵とドアチェーンをかける。鞄を放り、靴を脱ぎ捨て、だけど薬が入った紙袋はしっかり抱きしめたままあの子を呼んだ。

「ウツロイド!」
「なあに?」 

 目の前で微笑むウツロイドを見た途端、へにゃへにゃと腰の力が抜けた。よかった……ここに居たあ……。
 ウツロイドは膝をつき、へたりこんだ私を覗き込んだ。白銀の星に至近距離から見つめられて心臓の音が速くなる。……綺麗。

「なんだか顔色がよくないわ。なにかあった?」

 蜂蜜みたいな声が耳を伝って脳に染み渡っていく。なんだかぼんやりする頭でゆっくり首を振った。

「ううん、なんでもないの。ウツロイドが心配だっただけ」
「そう?……あら、これ」

 華奢な指がピンク色のスプレー式薬品を拾い上げる。へたりこんだ拍子に袋から1つ転がり落ちてたみたい。

「ほら、昨日話したすごいキズぐすり。仕事終わりに買ってきたの」
「わたしのために?」

 小さな宇宙が見開かれる。ふわりと銀髪が揺れたかと思えば、ウツロイドに抱きしめられていた。びっくりしすぎて頭が真っ白になる。

「お仕事で疲れてるでしょうに。わたしのためのお薬を買ってきてくれるなんて、本当にありがとう。ナマエはいい子ね」

 ピリッ。とろけてしまいそうなくらい甘くて優しい言葉が全身を満たしていく。すがるように細い体に腕を回した。

「ねえ、もっと言って」
「いいわよ。えらいわナマエ
「もっと」
ナマエはがんばりやさんね」
「もっと」
「わたしには好きなだけ甘えていいのよ、ナマエ

 背中を撫でる手が、耳元で囁く声が、心地よくて。
 私の意識は紅茶に落とした角砂糖みたいにゆっくりゆっくり溶けていった。



 ウツロイドは順調に回復に向かっていた。嬉しい反面、なんだか寂しい。もっと一緒にいたい。
 少しでも長く一緒にいたくて仕事が終わるとまっすぐ家に帰った。前は職場のひとたちと飲みに行ったり買い物したりしていたけど、何だかんだと理由をつけて断っている。せっかく誘ってくれたのに申し訳ないなと思うけど、ウツロイドと過ごす時間の方がずっと大切だ。

「ただいまー」
「おかえりなさい」

 いつの間にか、玄関で私を迎えてくれる役はクワガノンではなくウツロイドになっていた。ふわりと細い腕が背中に回される。私も抱きしめ返し、華奢な肩に顔を埋めた。頬にあたるさらさらの髪がちょっとくすぐったい。

「今日もお仕事お疲れ様。毎日頑張っていてえらいわ」
「ありがとう。ウツロイドもどんどん顔色よくなるね」
「ふふふ、あなたがくれたお薬のお陰よ」

 ウツロイドの言葉で疲れた体がすうっと軽くなる。蝋燭に火を灯すみたいに心もほわんとあたたかくなる。触れ合って言葉を交わすだけでどうしようもなく満たされていく。

 そろそろごはんにしましょ、とウツロイドが離れた。それすら名残惜しく思いながら手洗いうがいを済ませ、1人と2匹で食卓を囲む。
 はじめはあんなにウツロイドを敵視していたクワガノンもすっかり大人しい。日中ずっとふたりで家にいるから仲良くなったのかな。嬉しいけどちょっと複雑だ。いいなあ。
 ピピカウラを切り分けながらウツロイドがふと口を開いた。

「わたし、怪我が治ったら一緒に旅をしてくれるポケモンお友達が欲しいの。連れてきてくれない?」
「いいよ。どんな子がいい?」
「そうね……あくタイプがいいわ」

 あくタイプかあ。スマホで調べてみると、2番道路にコラッタとニャースがいるみたい。しかもあくタイプの弱点はむしタイプなんだって。

「クワガノン、一緒に来てくれる?」
『……ああ』
「ありがとう!頑張ろうね、クワガノン!」

 濃い青緑色を撫でる。捕獲なんてしたことないけどクワガノンと一緒だもん。なんとかなるよね!
 後片付けを済ませたらウツロイドに留守番をお願いして家を出る。玄関で何度も何度も「外は危ないから家で待ってて」「誰が来ても開けちゃだめ」と言い聞かせる私をクワガノンが『早くしろ』とつついた。

 星空に覆われたハウオリシティをふたりで歩く。クワガノンとふたりで出かけるの、なんだかすごく久しぶりな気がする。なんでだろう。……なんでもいっか。スマホで調べた捕獲のコツを読み上げる。

「ポケモンを捕獲する時は状態異常にしたり動きを鈍らせたりするといい……だって。クワガノン、そういうわざ使える?」
『でんじはやエレキネットだな。でんじはでまひにしたらエレキネットで捕まえてすばやさを下げる。その隙にボールを当てろ』
「うん!頼りにしてるよ!」

 途中でポケモンセンターに寄ってモンスターボールを30個買った。クワガノンが「はじめてだから多めに買っておけ」って。
 ぴかぴかな新品のボールとおまけでもらったプレミアボールをまとめて鞄に放り込む。これだけあれば大丈夫でしょ。

『……ナマエ

 2番道路へ踏み出す直前、クワガノンに呼ばれた。振り返ると思いつめたような金の瞳と視線が絡まる。数秒の沈黙を置いて、大きな顎がゆっくり開きかけ――閉じた。

『……いや。なんでもない』

 それだけ呟いて先に草むらへ入っていく。絶対なんでもなくない顔だったけど……クワガノンがそう言うならそういうことにしておこう。

 コラッタを追い回すこと30分。ようやく命中したプレミアボールに黒い体が吸い込まれ、地面に転がった。ころん、ころん、ころん、……ぱちん。

「やっ……たあ~!やっと捕まえた!!」

 白いボールを拾い上げて思いっきりガッツポーズ。結局、捕まえたのはコラッタの進化系のラッタだ。まひとエレキネットで動きを止めたところまではよかったんだけど、ボールが当たらなすぎて手こずってるうちに親らしきラッタが出てきて、エレキネットを噛みちぎってコラッタを逃がしちゃったんだよね。
 悔しさをぐっと飲み込み、ラッタの方が大きいから捕まえやすいかも、と思い直してもう一回でんじはとエレキネットを使ってもらい――今に至る。自分がこんなにノーコンだと思わなかったけど結果オーライ!本日最大の功労者であるクワガノンにぎゅっと抱きついた。

「やったねクワガノン!ウツロイドのために頑張ってくれてありがとう!!」

 金色の瞳が大きく揺れる。ウツロイド、喜んでくれるかなあ。
 急いで家に帰ってボールを渡すと、ウツロイドはにっこり微笑んだ。

「ありがとう、ナマエ、クワガノン。ふたりともとってもいい子ね」

 無邪気で妖艶なその笑顔が私の心を捕らえて離さない。ううん、むしろずっと捕らわれていたい。
 ウツロイドが喜んでくれるならなんだってする。そう思った矢先、ウツロイドのつややかな唇が持ち上がった。

「ねえ、次は〝ララくん〟が欲しいわ」
「……え……?」

 ふわふわと夢心地だった意識が一瞬で引き戻された。何でここでララくんの名前が出てくるの?

「だ……だめだよ。ララくんはトレーナーがいるの。ひとのポケモンを取ったら泥棒だよ」

 顔を引きつらせて首を横に振る。野生のポケモンを捕まえるのとはわけが違う。
 ララくん。優しくてかっこいいラランテスの男の子。私の憧れ。そうだ、私は、ララくんが――。

 するり、小さな両手が伸びてきて頬を包まれた。視界が小さな宇宙でいっぱいになる。
 ピリッ。

「それじゃあ借りてきて。借りるだけなら泥棒じゃないでしょう?」

 ウツロイドがふんわり微笑む。
 ……そっか。そうだね、そうだよね。借りるだけなら、いいよね。



 ララくんはいつも誰より早く出勤する。一番に来て皆が働きやすいようにっていろいろ準備をしてくれていた。狙うなら、そこ。
 カランコロン、ベルの音と共に現れたララくんは、制服姿でテーブルを拭く私を見て目を見開いた。

「おはようございます。早いですね、ナマエさん」
「おはようララくん。なんか変な時間に目が覚めちゃって。二度寝したらそのまま起きられなそうだったから来ちゃった」

 そうだったんですね、と微笑むと更衣室へ姿を消し、2分もしないうちに制服姿で戻ってきた。ふたりで他愛のないおしゃべりをしながら開店準備をする。

「そういえば、ララくんってどんなボールに入ってるの?」
「ヒールボールですよ。彼と初めて出会った時、僕はどく状態だったんです。だからそれで捕獲してくれたらしくて」
「へえ~素敵!ね、よかったら見せてくれない?」
「どうぞ」

 ちょっとだけはにかんで、ララくんはピンクのボールを渡してくれた。よく磨かれた表面が照明を反射してつやりと輝く。

「綺麗なボールだねえ。デザインももちろん可愛いけど、大切にされてるんだなってよくわかるよ」
「ええ。僕のパートナーは、ボールごと僕を大事にしてくれるひとなんです」

 そう言ったララくんが照れくさそうに視線を逸らした隙に、ボタンを押してヒールボールを突きつけた。大きく目を見開いたララくんが赤い光になって吸い込まれていく。
 ガタガタ暴れるボールをガツン!とテーブルに叩きつければ大人しくなる。ウツロイドが言ってた通り。こうすると中のポケモンは脳震盪を起こすんだって。

 さて、皆が来る前に終わらせなくちゃ。縮小したボールをハンカチで丁寧に包み込んで開かないようにしっかり結ぶ。それを鞄の奥底に押し込んだ。
 お次にララくんのロッカーから服と鞄を取り出し、ごみ袋に入れてダストボックスへ。今日はごみ収集日だから9時になったら業者の人が回収してくれる。あとはいつも通り仕事をして、うちに帰るだけ。
 カランコロン、再びベルが鳴り、店長が姿を見せる。

「あら、ナマエさん。おはよう」
「おはようございます、店長」

 ララくんが来た時と同じような会話をして笑い合う。店長はくるりと店内を見回し「ララくんはまだ来てないの?」と尋ねた。

「そうなんです。珍しいですよね」
「そうねえ。寝坊しただけ、とかならいいんだけど……。もし何も連絡がなかったら私から連絡してみるわ」
「わかりました。お願いします」

 ひとりふたりと出勤してくるけれど、ララくんは一向に現れないし連絡もない。当然だ。私の鞄の中にいるんだから。
 そろそろ店を開けようかという頃、スーツを着た男の人がばたばた駆け込んできた。呼吸も整えず、血の気の失せた表情で近くにいた私の両肩をガッと掴む。

「あのッ、俺、ララのトレーナーです!店長さんからララがまだ店に来てないって、何かあったのかって連絡もらって……!でも俺、今日もララと一緒に家を出てて!あいつが理由なく仕事を放りだすわけなくて!ララ……ララは、まだ来てませんか!?」
「……いえ。私、今日は一番早くお店に来たんですけど、ララくんは、まだ……」
「そんな……」

 ゆっくり首を振ると、ララくんのトレーナーさんは呆然と手を離した。ぐしゃりと前髪を掴み、「ララ……!!」と悲痛な声が溢れる。つきん、胸の奥に刺すような痛み。
 今にも泣きだしそうな彼を店の奥へ案内し、店長は従業員一同をぐるりと見回した。

「彼が落ち着いたらジュンサーさんの所へ行ってくるわ。私がいない間、お店のことよろしくね」

 皆は戸惑いながらひそひそ囁き合ったり視線を交わしたりしていたけど、いざお店がオープンすればいつも通りだった。それぞれの持ち場で忙しなく動き回る。私も手を動かしながら、幾度となく時計を確認した。

 長い1日が終わり、やっと労働から解放された。逸る気持ちを抑えていつも通り帰路に着く。ララくんのボールはちゃんと鞄に収まっている。時々小さく揺れてるから意識は取り戻したみたい。
 大丈夫。ちょっと借りるだけ。私は何も悪いことしてない。

「おかえりなさい」
「ただいま!」

 出迎えてくれたウツロイドにぎゅっと抱きつく。ああ、会いたかった!会いたすぎてのろのろ動く時計の針がじれったくて仕方なかった。

「あのね、ウツロイド。あなたに見せたいものがあるの」
「なあに?」

 鞄から取り出したハンカチの包みをするりと解いた。途端にガタガタ暴れ出すから壁に叩きつけて黙らせる。

「はい、これ!ララくんのボール。借りてきた・・・・・よ」

 ウツロイドは「まあ」と嬉しそうにヒールボールを受け取った。反対の手で私の頬を撫で、甘く綺麗な微笑みを浮かべる。

ナマエ、あなたって本当にいい子ね。嬉しいわ」

 ピリッ。真綿でくるまれたみたいにやわらかな幸福感で胸がいっぱいになる。
 もう、悪いとか悪くないとか、全部どうでもいいや。
 ウツロイドのためなら、ウツロイドが喜んでくれるなら、私は何だってする。



 人気のない深夜の2番道路を女の子とキュウコンが歩いている。方向的に目的地はハウオリ霊園かな。ちょうどいい。

「クワガノン、でんじは」

 背後からトレーナーに向かって・・・・・・・・・・・小さな電撃を放つ。意識を失い、がくんと崩れ落ちたその子をクワガノンが大きな顎で受け止めた。
 青みがかった銀の毛並みを逆立て、キュウコンが鋭く吠える。少しだけクワガノンが顎に力を入れると女の子の体がみしりと悲鳴を上げた。今にも飛びかかろうとしていたキュウコンはびたりと制止する。

「いきなりごめんね。乱暴するつもりはないの。あなたが大人しくしてる限りは」

 ぐるる、と低く唸った青い瞳は激しい怒りに燃えている。お構いなしに女の子の荷物を漁り、ボールを見つけ出した。それをまっすぐキュウコンに向ける。

「入って」

 キュウコンはじり、と後ずさる。賢いポケモンだからボールに入れられてしまえば自分がどうなるのかとっくに理解しているだろう。けれど、一度だけ自分のトレーナーへ視線を送り、大人しく赤い光に包まれた。
 自然と口角が持ち上がる。ウツロイドの言う通り、どのポケモンもトレーナーを盾にされると面白いくらい従順だ。お陰で順調にウツロイドの〝お友達〟が増えている。

 重みが増したボールをクワガノンの糸で縛り上げ、気絶したままの女の子を解放する。黒いフードを目深に被り直すと、その子をそのまま放置してクワガノンの足に掴まった。靴底が地面から離れていく。
 居場所が割れないように遠回りしてから家に帰れば、ウツロイドがいつものように「おかえり」と出迎えてくれた。

「ただいまウツロイド!今日はキュウコンを捕まえたよ!」
「あら。もしかして、前にこおりタイプが好きって言ったの覚えててくれたの?」
「もちろん!」
「ふふふ、そう。いい子ね」

 ラッタ、ララくんを含めた5匹目の〝お友達〟を差し出すと、ウツロイドは微笑みながら優しく私の頭を撫でくれた。顔が緩むのを止められない。

「次はゴーストタイプがいいわ。見つけてきてくれる?」
「うん!頑張ろうね、クワガノン」
『ああ』

 ふと時計を見ると、午前3時。すっかり生活が昼夜逆転したから眠気はまだやってこない。仕事?さあ……いつから行ってないんだっけ。スマホもあんまり鳴ってうるさいからクワガノンに壊してもらったし。

「ねえ、お腹すいちゃった。何かおやつ食べない?」
『ホットケーキミックスが残っていたはずだ。それでパンケーキでも作るか』
「やったあ!」
『作り終わるまでナマエは部屋で待っていろ。覗きに来るなよ』
「行かないってば、スワンナの恩返しじゃないんだから。ね、ウツロイドはパンケーキに何乗せる?」
「そうね。何があったかしら」

 1人と2匹でわいわい冷蔵庫を覗き込む。深夜のお茶会はまだまだこれから。



 月が出ていない夜は絶好の〝お友達〟探し日和。ウツロイドが喜びそうなポケモンを求めてハウオリシティ周辺を飛び回った。……あ、ガラガラ発見!あの子にしよう。
 いつものように背後から襲い掛かり、トレーナーを捕まえる。ガラガラにボールへ入るよう促すと――「何やってるの、あなたたち!」と鋭い声が響いた。直後、眩しいライトに目を焼かれる。ジュンサーさんだ!
 慌ててガラガラをボールに押し込み、ポケットに忍ばせていたけむりだまを投げつける。トレーナーを放り出したクワガノンと煙に紛れて逃げ出した。
 どうしよう。顔を見られた。クワガノンも見られちゃった。なんで、なんで、ちゃんと見つからないようにしてたのに!!

 ハウオリシティ中にけたたましいサイレンが響き渡る。グランブルやウインディの吠え声もする。もうここには居られない。早く知らせなきゃ。早く逃げなきゃ。ウツロイド、ウツロイド、ウツロイド!!
 ガラガラの入ったボールを握りしめ、ばたばた家に駆け込んだ。銀の髪をさらりと揺らしてウツロイドが振り返る。

「なんだか外が騒がしいわ。何かあったの?」
「ごめんなさいウツロイド、ジュンサーさんに見つかっちゃった……!で、でもね、今日もあなたのために捕まえてきたよ!」

 だいすきなウツロイド。誰より大事なウツロイド。あなたのためなら何でもできる、何だってする。誰にも渡さない。私があなたを守ってあげる。だから一緒に逃げよう。
 それらを口にする前に、星の浮かぶ瞳がすっと細められた。

「そう、バレてしまったのね。なら……あなた、もういいわ」

 冷たく突き放すような声。思わず「え」と声を漏らした瞬間、

 バツンッ

***

 ごとん。
 切断された女の首が床に落ち、数秒遅れて体もぐしゃりと崩れ落ちた。フローリングにじわじわ赤黒い染みが広がっていく。
 ウツロイドは薄く笑みを浮かべ、血塗れのクワガノンを撫でた。

「よくできました。上手ね、いい子よクワガノン」
『心配するなウツロイド。俺がお前を守ってやる』
「ありがとう。心強いわ」

 首と一緒に転がったボールをサイコキネシスで拾い上げる。ウツロイドの手にはモンスターボール、プレミアボール、ヒールボール……合計7つのボールが握られていた。いずれも最初は暴れていたが、今ではすっかり彼女の虜だ。

「7匹……今回はこんなものかしら。こっちの世界のニンゲンはつくづく便利なものを作ったわね」

 くすくす笑いながらスカートの裾を摘んで軽く振る。内側に広がる異次元空間から色とりどりの球体がばらばら音を立てて降り注ぐ。そのうちの3つを選んで放れば、白い光と共にマニューラ、バルジーナ、ウツボットが姿を現した。甘えた声ですり寄ってくるので順に撫でてやる。

「それ、片付けてちょうだい。喧嘩しちゃだめよ」

 ウツロイドが女の死体を指差すとポケモンたちは素直に頷いた。しばらく何やら話し合い、頭をバルジーナが、胴体をマニューラが、腰から下をウツボットがそれぞれ食べ始める。ぐちゃぐちゃ、ぶちぶち、ぼりぼり、すっかり人間の味を覚えた彼らは主から与えられたおやつに夢中だ。
 皆、いい子ね。そう微笑んだウツロイドは女には一度も目もくれず、その場にいる4匹以外のボールをスカートの内側にしまっていった。ひとつ、ふたつと宇宙に吸い込まれていく。

 無惨に食い散らかされていくかつてのトレーナーの成れの果てをクワガノンは無表情で眺めている。虚ろな金の瞳は何の感情も映さない。
 そんな彼を抱き寄せ、少女の皮を被ったバケモノは甘ったるく囁いた。

「わたし、次はトロピウスとお友達になりたいわ」

Fin.
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