番外編・SS

自宅&うちよそきょうだい いい兄さんの日ネタ

【カエルラとアマランスの場合】
 いい兄さんの日と聞いて、弟にかっこいいところを見せようと張り切るカエルラ。しかしはりきりすぎて空回り、いつも以上にドジを連発。己の情けなさに凹むカエルラだが「にぃにはいつもかっこいいよ」というアマランスの言葉と笑顔に危うく泣きかける。というかちょっと、いやかなり泣いた。
 その後、夕飯のカレーの具を(アマランスの好きな)ヴルストにしたいカエルラVS(カエルラの好きな)ゆでタマゴにしたいアマランスで大喧嘩。結局どっちも入れたし、仲直りの印にカエルラはヴルストを、アマランスはタマゴをあげっこした。


【炮佳と燈子の場合】
 いい兄さんの日と聞いて、兄の威厳を示すチャンスと思い、妹を喜ばせたくていろいろ事前に準備をする炮佳。いざ当日の朝、燈子に「お兄様、今日はいい兄さんの日なのでしょう?日頃の感謝を込めてお手紙を書いたの」と先手を打たれ、危うく泣きかけるも死ぬ気で耐え、「ありがとう」と優雅な微笑みと共に受け取ることに成功。その後は燈子をきっちりエスコートして兄妹水入らずの素敵な休日を過ごす。
 夜に自室でひとり手紙を読み大号泣。翌日、嶄からその報告を受けた燈子は「ふふふ。本当にかわいいひと」と楽しげに笑みを零した。


【嶄と仁の場合】
 いい兄さんの日と聞いてはりきる炮佳を見て、自分も仁に何か兄らしいことをしてやりたくなる嶄。いろいろ考えてみたものの特に何も思いつかないな、と悶々とするが幼い息子と戯れている時に不意に閃く。幼い頃は自分の特性・さめはだを使いこなせずに触れたもの全て傷つけてしまった。そのトラウマから未だに素肌を晒すことにも素手で他者に触れることにも躊躇と恐怖がある。……それでも。
 いざ当日、タイミングを見計らって声をかける。
「仁。今お時間よろしいですか」「はい、嶄兄さん」「ありがとうございます。……少々、動かないでください」
 穏やかに微笑みながら常に身につけている手袋を外し、ほんの数秒だが仁の頭を撫でた。
「貴方は私の自慢の弟ですよ」
 兄同然に慕っているこの従兄にはこれまで何度も撫でてもらったことも抱き上げてもらったこともあるが、素手で触れられたのは初めてで思わず胸が熱くなる仁。
「嶄兄さん……」「用事は以上です。引き止めてすみません。今日も1日頑張りましょう」
 素早く手袋を嵌めて颯爽と身を翻す。実はめちゃくちゃ照れ臭くて、物陰で頭をガシガシやりつつボソリと「ガラにもねえことするもんじゃねえな」と素の口調で独りごちる。
 翌日、燈子から「あの子、とっても嬉しそうだったわよ」と聞いて思わず口元が緩んでしまったし、仁から渡された日頃の感謝・如何に自分が従兄を尊敬し敬愛しているかを綴られた手紙に物凄くグッときた。


【月羽根と宵羽根さんの場合】
 いい兄さんの日と聞いて、勝手に「弟を好きなだけ甘やかして可愛がっていい日」と都合よく解釈する月羽根。早速宵羽根さんのスケジュールを押さえ、まずは彼の好物や食べたいものを一通り作って一緒に食べる。宵羽根さんは普段とやってること変わらないのでは??と思いつつ、兄が楽しそうだし自分も楽しいので付き合ってくれる。
 夜はお高めの旅館で露天風呂付き客室を借り、ゆっくり羽を伸ばす。お風呂と食事を楽しんだら、「そなたの目と手は大切な商売道具だろう。時にはたっぷり労ってやらねばな」とどこで覚えてきたのかスーパーマッサージテクを披露。目と手を中心にガチガチにこり固まった宵羽根さんを心身ともにふにゃふにゃに解す。「兄さんばっかりずるいよ。僕にも兄さんを労わせて」と攻守交替。自覚がなかったが実は月羽根も非常に肩こりしていて今度は自分がふにゃふにゃに。
「いつもありがとう、兄さん」「それはこちらの台詞だとも。我輩の弟に生まれてきてくれてありがとう。これからも存分に甘やかしていくので覚悟するがいい」「ふふ、望むところだよ」
 お互い特性ふみんなので酒を飲み交わしつつ朝までのんびりお喋りを楽しんだ。


【北爪とアレルシャの場合】
 いい兄さんの日と聞いて、無愛想だけど優しい兄貴分に日頃の感謝の気持ちを示すいい機会なのではと思い至るアレルシャ。寒がりな北爪のためウールーの毛糸で靴下を編むことに。毎日せっせと進めて前日の夜には完成し、綺麗にラッピングしたもののいざ当日になって日和る。
 結局ウダウダしまくって渡せないまま夜になり、渡そうか渡すまいか迷いながら廊下でうろうろしていたら風呂上がりの北爪とばったり鉢合わせ。
「なした」「な……な、んでもね」「そうか。明日もステージあんだ、はえぐ寝ろ」
 ぽん、とアレルシャの頭を撫でて部屋に戻ろうとする彼の服の裾を思わず捕まえる。顔が熱い。逃げ出したい。けれど。貰って嬉しい言葉があること、気持ちを言葉や物に込めて伝えることの大切さを、今の自分は知っている。だってわたくし、変わったの。みんなと、あなたのお陰で。
「こ、これ!!おめさやる!!」半ば叩きつけるようにプレゼントを渡す。北爪は微かに目を丸くして「今日、なんがあっだが?」と首を傾げる。「なんもねえけんど……いい兄さんの日、なんだと。だはんで……」耳まで真っ赤にして俯いた妹分を暫し見つめ、包みを開け始める。「ちょっと!!なして勝手さ開けるだ!!こういう時は開けていいか聞くもんだべや!!」「もう貰ったもんどうすっがなんておれの自由だ」
 包みから現れたのは若草色と薄い黄色のモコモコ靴下。「……おめが作っだんが」「……うん」ちらりと見上げた先で、北爪は珍しくやわらかな笑みを浮かべていた。「めやぐだな。大事にする」「……うん!!」
 その日の晩に早速履いて就寝。翌日の夕飯はいつもよりちょっぴり豪華で、アレルシャの好物ばかりだったとか。
4/10ページ
    スキ