番外編・SS
※注意※
このお話は「殺人・食人描写」が含まれます。問題ない方のみ閲覧推奨です。
若き日のライコウ
【雷 と柘榴の種】
黒雲を運び、雷 を轟かせ、大地を潤し、稲穂を育む。ひたすらそれをくり返す。定められた通りに。
己が呼んだ雨は時に田畑や家々を飲み込み、押し潰した。荒れ狂う濁流を横目に疾駆する。
あれはいつだったか。己を見つけたニンゲンが何やら喚いていた。煩わしくも爪を振り上げるのが面倒で、徐に首から上を噛み砕いた。
美味い。
脳天を稲妻が貫く。二重の意味で目を見開いた。甘酸辛苦の区別はつくが、ただそれだけだった。世界の機構 たる我らに何故味覚などという機能が備わっているのか、理解できなかった。ああ、そうか。このため か。
足下に転がる肉塊に牙を立てる。やわらかな肉の裂ける感触がして、コクのある脂と塩気を含んだ血液がじゅわりと舌に広がり、混ざり合い、とろけていく。
美味い。偶然でも気まぐれでもない。美味い。
ふと顔を上げれば眼前には赤黒い染みだけが残っていた。口の周りを舌で拭い、もうないのかと眉根を寄せる。
……いいや。あるだろう、そこかしこに。
口端が持ち上がり、柘榴石の瞳に獰猛な光が宿った。遠くにぽつぽつと二本足の肉塊がうろついている。
そのうちの1つに狙いを定めて大地を蹴る。風を切る体は翼を得たかのようだ。
跳ねる四肢の動きに合わせ、曇天に落雷が閃いた。
Fin.
このお話は「殺人・食人描写」が含まれます。問題ない方のみ閲覧推奨です。
若き日のライコウ
【
黒雲を運び、
己が呼んだ雨は時に田畑や家々を飲み込み、押し潰した。荒れ狂う濁流を横目に疾駆する。
あれはいつだったか。己を見つけたニンゲンが何やら喚いていた。煩わしくも爪を振り上げるのが面倒で、徐に首から上を噛み砕いた。
美味い。
脳天を稲妻が貫く。二重の意味で目を見開いた。甘酸辛苦の区別はつくが、ただそれだけだった。世界の
足下に転がる肉塊に牙を立てる。やわらかな肉の裂ける感触がして、コクのある脂と塩気を含んだ血液がじゅわりと舌に広がり、混ざり合い、とろけていく。
美味い。偶然でも気まぐれでもない。美味い。
ふと顔を上げれば眼前には赤黒い染みだけが残っていた。口の周りを舌で拭い、もうないのかと眉根を寄せる。
……いいや。あるだろう、そこかしこに。
口端が持ち上がり、柘榴石の瞳に獰猛な光が宿った。遠くにぽつぽつと二本足の肉塊がうろついている。
そのうちの1つに狙いを定めて大地を蹴る。風を切る体は翼を得たかのようだ。
跳ねる四肢の動きに合わせ、曇天に落雷が閃いた。
Fin.
14/14ページ