番外編・SS
ウィリデを待つズワルトの独白
【You are my astral】
へーかが死んでから、何度も何度も後を追おうと思った。つらくて、さみしくて、苦しくて、耐えられなかった。
なんでおいてったの。なんで一緒に連れてってくれなかったの。生きるのも死ぬのもへーかと一緒がよかったのに。いつまで待てばいいの。もう無理だよ、オレもそっちに行きたい。
けど、心臓を穿とうとする度にへーかの言葉が蘇る。死にたくて、死ねなくて、泣きながら夜を明かした。冷たいのはブリザのせいで慣れっこなのに、濡れたたてがみがやけに冷たくてもっと泣いた。
最初の千年は死にたい気持ちと戦いながら泣いて暮らした。
次の千年はこの世の全ての生き物に憎悪を燃やして暮らした。
へーかが命と引き換えにオマエらを守ったから今のオマエらがあるのに。へーかのことをすっかり忘れてのうのうと生きながらえている。なんでへーかが死んでオマエらが生きてるんだ。
全員殺してやりたかった。何度も何度も殺そうとした。けど、蹄を振り上げる度にへーかの笑顔が蘇る。へーかはこいつらを守るために命をかけた。へーかはニンゲンやポケモンが楽しく暮らしているのを見るのが好きだった。へーかは生きとし生けるものすべての繁栄を願っていた。
へーかが愛したものを踏み躙れるわけない。オレがそんなことしたらへーかの死に意味がなくなる。何よりへーかが悲しむ。オレに殺された命と、殺したオレを思って。へーかを悲しませるくらいならオレが我慢する方がよっぽどいい。
いっそブリザみたいに狂ってしまえば楽だったのに。でもあいつを責める気はない。責めることもできない。ブリザにとってオレは正気に繋ぎ止める楔にはならなくて、オレが正気を保てているのはブリザがいるからじゃなかった。だからおあいこだ。あの時へーかを乗せていたのがオレじゃなくてブリザだったら、狂気に落ちたのはオレだったかもしれない。
オレたちは結局、いちばん大事なのはへーかだから。片割れなんて二の次だ。
その次の千年はひたすらへーかとの再会を願って暮らした。
悲しみに沈むのも憎しみを燃やすのも疲れた。ただ、もう一度、へーかに会いたい。
記憶をたどれば、暗闇と冷気の世界に星のかけらが散りばめられている。ひとつひとつが明るくてあったかくて、ぬるい涙が出た。暗いのも寒いのも普通だったのに。
ねえへーか。へーかの黒馬はここだよ。白馬はバカだからどっか行っちゃったけど、へーかが起きたら迎えに行ってやろうよ。あいつもさみしがってたからさ。
ねえへーか。オレ、待ってるよ。聞きたいことも話したいこともいっぱいあるんだ。へーかがまた目を開けて、オレを見て、呼んで、触れて、笑ってくれるのを、ずっとずっと待ってる。
ねえ、へーか。
「どうした、我が黒馬」
「べつにー。呼んでみただけ」
オレが死ぬまでそばにいるから、オレが死んでもそばにいてよね。
Fin.
▼
タイトルの和訳は「あなたは私の星の世界」
【You are my astral】
へーかが死んでから、何度も何度も後を追おうと思った。つらくて、さみしくて、苦しくて、耐えられなかった。
なんでおいてったの。なんで一緒に連れてってくれなかったの。生きるのも死ぬのもへーかと一緒がよかったのに。いつまで待てばいいの。もう無理だよ、オレもそっちに行きたい。
けど、心臓を穿とうとする度にへーかの言葉が蘇る。死にたくて、死ねなくて、泣きながら夜を明かした。冷たいのはブリザのせいで慣れっこなのに、濡れたたてがみがやけに冷たくてもっと泣いた。
最初の千年は死にたい気持ちと戦いながら泣いて暮らした。
次の千年はこの世の全ての生き物に憎悪を燃やして暮らした。
へーかが命と引き換えにオマエらを守ったから今のオマエらがあるのに。へーかのことをすっかり忘れてのうのうと生きながらえている。なんでへーかが死んでオマエらが生きてるんだ。
全員殺してやりたかった。何度も何度も殺そうとした。けど、蹄を振り上げる度にへーかの笑顔が蘇る。へーかはこいつらを守るために命をかけた。へーかはニンゲンやポケモンが楽しく暮らしているのを見るのが好きだった。へーかは生きとし生けるものすべての繁栄を願っていた。
へーかが愛したものを踏み躙れるわけない。オレがそんなことしたらへーかの死に意味がなくなる。何よりへーかが悲しむ。オレに殺された命と、殺したオレを思って。へーかを悲しませるくらいならオレが我慢する方がよっぽどいい。
いっそブリザみたいに狂ってしまえば楽だったのに。でもあいつを責める気はない。責めることもできない。ブリザにとってオレは正気に繋ぎ止める楔にはならなくて、オレが正気を保てているのはブリザがいるからじゃなかった。だからおあいこだ。あの時へーかを乗せていたのがオレじゃなくてブリザだったら、狂気に落ちたのはオレだったかもしれない。
オレたちは結局、いちばん大事なのはへーかだから。片割れなんて二の次だ。
その次の千年はひたすらへーかとの再会を願って暮らした。
悲しみに沈むのも憎しみを燃やすのも疲れた。ただ、もう一度、へーかに会いたい。
記憶をたどれば、暗闇と冷気の世界に星のかけらが散りばめられている。ひとつひとつが明るくてあったかくて、ぬるい涙が出た。暗いのも寒いのも普通だったのに。
ねえへーか。へーかの黒馬はここだよ。白馬はバカだからどっか行っちゃったけど、へーかが起きたら迎えに行ってやろうよ。あいつもさみしがってたからさ。
ねえへーか。オレ、待ってるよ。聞きたいことも話したいこともいっぱいあるんだ。へーかがまた目を開けて、オレを見て、呼んで、触れて、笑ってくれるのを、ずっとずっと待ってる。
ねえ、へーか。
「どうした、我が黒馬」
「べつにー。呼んでみただけ」
オレが死ぬまでそばにいるから、オレが死んでもそばにいてよね。
Fin.
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タイトルの和訳は「あなたは私の星の世界」
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