トリカブトと手を繋ぐ
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あちこちで腹の虫が鳴り響く中、全員に行き渡ったのを確認して、社長さんが立ち上がった。
「そんじゃ……いただきます!」
いただきますの大合唱をしてスプーンをひっ掴む。どっちから食べようかちょっと迷って、カレーの方にスプーンを入れた。ご飯と一緒に掬い上げ、ぱくりと頬張る。
「「うめえ~~ッ!!」」
隣で食べていたベトベターと声が重なった。噛めば噛むほどコクと旨味がどんどん溢れてくる。それに絡むピリリとしたルーがまたたまらない。夢中になってスプーンを動かすうちに、あっという間に皿が空になった。ベトベターの方を見れば山盛りだったポトフの皿が綺麗になっていて、パンもなくなっている。やっぱりそっちから食べたのか。
「いやァ~うめェ!具がごろごろで食べ応えあるし、ガツンとくる風味がサイッコーだ!」
「だろー!そのまま食べてもうまいけど、パンにも合うよな。隠し味にニンニク入れてるんだって」
「あーこれニンニクか、なるほどなァ。おし、カレー食ったらおかわりする!」
そう宣言するが早いか、カレーの山がみるみる小さくなっていく。それを眺めながら、俺も大ぶりの人参を一口。まろやかな甘みを噛みしめて、ニンニクの利いたコンソメスープを啜る。時々パンを挟みながら野菜とスープを交互に口に運んだ。うめえ……。
ポトフのおかわりをたっぷり貰ってきたベトベターが戻ってくるのと同時に、最後の一口を飲み干した。ふー、腹いっぱい!空っぽの皿を重ねて手を合わせる。
「ごちそうさまでした!」
「あれ、もう終わりかァ?それしか食わねェからでかくならねェんじゃねェ?」
「関係ねえし、胃袋ブラックホールのお前らと一緒にすんな」
腹をさすりながら言い返す。少し瞼が重くなってきたから、急いでカフェオレを啜った。苦い味は好きだけどブラックコーヒーはまだ飲めない。もう一口飲んで、ふと見知った顔を見ていないことに気が付く。
「そういや、おっさんは?」
「あそこ」
ベトベターが示した方に顔を向ければ、いつもの喫煙所の辺りでひとり黙々とスプーンを動かしていた。あ、意外と近くにいた。そこに社長さんやベトベトンたちが絡みに行き、何か話し始めた。鬱陶しそうにしつつも相手してるあたり、律儀だよなあ。俺にも毎日授業してくれるし。
ちびちびカフェオレを啜りながらぐるりと視線を巡らせた。社員さんやベトベターたちは思い思いの場所で固まり、笑顔でカレーやポトフを頬張っている。うんうん、どっちもうまいもんな。ちょっと手伝っただけだけど、ジンコのメシがうまいって言われると俺まで誇らしくなる。
そのうち鍋も皿もバスケットも全部綺麗に空になって、片付けが始まった。それが終わると、ブランケットにくるまったりコーヒーを飲んだりしながら、のんびり流星群を待つ。今19時半だから、もうちょっとだ。
くああ、と隣から大きな欠伸。ベトベターのやつ、じっとしてるの苦手だもんな。社員さんからランタンを借りてきて、その明かりを頼りにリュックを漁った。欠伸をもう1つ零し、ベトベターが首を傾げる。
「何か持ってきたのかァ?」
「お前が見たいって言ってたやつ」
お目当てのものを引っ張り出し、それぞれ広げて四隅に小石を乗せる。そこに描かれたものを認識したのか、とろんとし始めていたベトベターの目がばっちり見開かれた。
「地図だ!」
「うん。これがウラウラ島の、こっちがアローラ地方ので、一番でかいのが世界地図」
ランタンを掲げて1つ1つ指し示す。目を輝かせたベトベターは、まずウラウラ島の地図を覗き込んだ。
「はずれの岬どこだァ?」
「えーと……この辺」
「はは、ちっちぇー」
カントーってのは?ここだな。ここの右側。へェ、随分遠いなァ。ここのどっかにじっちゃんの故郷があんのかァ。カントーのベトベトンの主な生息地はタマムシシティとその周辺だから……この辺りかな。昔はグレン島のポケモン屋敷ってとこにもいたらしいけど。何で今はいねェの?噴火で町ごとなくなっちゃったんだって。ふゥん……。他の地方のベトベトンはどこに住んでんだァ?
ふたりであれこれ言い合いながら3つの地図を見比べて、ベトベトンの生息地を探す。そこからどんどん話が逸れて、いつの間にか各地方の名所の話で盛り上がっていた。
「世界って広ェんだなァ。俺さんもいつか、色んなとこ行って、色んなモン見て回りてェなァ」
楽しそうに地図を眺めるベトベターが何気なく口にした言葉に思わず顔を上げる。急に速度が増した鼓動を落ち着かせようとこっそり深呼吸して、ゆっくり口を開いた。
「……あの、さ」
「ん?」
小さな青い目が瞬きする。数秒、もしくは数分、沈黙が訪れる。ごくんと唾を飲み下し、もう一度口を開いて――吐き出す直前、言葉を変えた。
「……やっぱりいい」
「何だよ勿体つけてェ。言えよォ、気になるだろォ!」
「言・わ・な・い!」
どうにか白状させようとくすぐってくるベトベターの脇腹を逆にくすぐり返してやる。すぐに形勢逆転し、ベトベターの気が逸れるまで徹底的にくすぐり倒した。
今はまだ、言わない。言えない。
***
それぞれのんびり過ごすみなさんにコーヒーを注いで回る。その度に「おいしかった」「ありがとう」「ごちそうさま」を言ってもらえて、お腹だけじゃなく胸の中までぽかぽかになる。ふふふ、頑張ってよかった~~。
最後に、リサイクルプラントの壁に背を預けて煙草をふかしている、紫のヒトに声をかけた。
「ベーやんさん~~。コーヒーのおかわり、いかが~~?」
彼はちらりとこちらを向くと、「……ども」と軽く会釈した。笑顔を返し、空の紙コップにコーヒーを注ぐ。こぽこぽ、という音が途切れる頃、ふと低い声が鼓膜を揺らした。
「ジンコっつったか。悪ィな、飯とか色々用意してもらっちまって」
「いえいえ~~。みなさん、いい食べっぷりで嬉しかったわ~~。お口に合ったかしら~~?」
「ああ。うまかった」
「よかった~~」
ベーやんさん、沢山食べてくれたのよね。見ていて気持ちいい食べっぷりだったから、ついおかわり多めによそっちゃった。
紙コップを傾けた彼の視線がさっきまで向けられていた所に戻される。その先にいるのは、ルヒカちゃんと、お友達のベトベターちゃん。
「テメェ、あいつの親のポケモンか?」
「そうよ~~。あの子のお父さんが、わたしのトレーナーなの~~」
「……そうか」
静かに呟いてもう一度コーヒーを煽る。その横顔は、何故だかひどく痛ましげだった。
☆
くすぐり合戦に勝利して、ふたりで草の上に大の字に寝転がる。見上げた空はいつの間にか沢山の星で埋め尽くされていた。うわーっ、すっげえ!肉眼でも星の輝きがハッキリ見える!急いでリュックからデジカメを引っ張り出し、シャッターを切った。お、いい感じ。
それを見ていたベトベターがやりたいって言い出したから、「食べるなよ」と散々念押しして使い方を教えてやる。パシャパシャやり始めたベトベターをよそに、再びリュックを漁って星座早見盤を探り当てる。日付と時刻を合わせて空に掲げてみるけど、初めて使うからか、いまいちどれが何座かわからない。暫く早見盤と星空と交互に睨めっこしていれば、不意に上から低い声が降ってきた。
「あの赤ェのがカイリキー座のベテルギウス。それの下の方で白く光ってるのがウインディ座のシリウス。左の方の白いのがガーディ座のプロキオン。3つ繋げて冬の大三角、だったか」
いつの間にか近くに来ていたおっさんの指の動きを視線で追えば、星たちの中から三角形が浮かび上がった。俺を含めた何人かが感嘆の声を上げる。
バイバニラ座。ヒメグマ座。リングマ座。ヒバニー座。ケンタロス座。ギャロップ座。マメパト座。レパルダス座。褐色の指がゆっくりと1つ1つを指し示し、星座の形をなぞっていく。
「べーやん、詳しいなあ」
「……昔、星が好きな奴がいてな。聞きもしねェのに、どれが何だってずっとベラベラ喋りやがるから、覚えちまった」
目を丸くした社長さんに答える声には、どこかそのひとを懐かしむような響きが滲んでいた。空に掲げていた左手でそっと眼帯に触れる。
「あッ!見えたァ!」
突然、デジカメで遊んでいたベトベターが甲高い声を上げた。どこだどこだと指差す方向を探すけれど、流れ星は見当たらない。
「ほんとに見えたのか?」
「見間違いじゃねえのー?」
「マジだってェ!」
先輩ベトベターたちに疑いの目を向けられ、じたじた足を踏み鳴らす。やいのやいのしているうちに誰かがまた「あっ!」と叫んだ。今度は俺も見えた!
銀や青や白が散りばめられた藍色の中で、すーっと動くものがちらほら。あっちに見えた、こっちに見えた、とみんなで大騒ぎしながら空を見上げる。
ふと、何となく気になってこっそりおっさんを盗み見る。おっさんは眼帯に触れたまま、苦しそうな、愛おしそうな、いろんなものがぐちゃぐちゃに混ざり合った顔で星空を見つめていた。
「そんじゃ……いただきます!」
いただきますの大合唱をしてスプーンをひっ掴む。どっちから食べようかちょっと迷って、カレーの方にスプーンを入れた。ご飯と一緒に掬い上げ、ぱくりと頬張る。
「「うめえ~~ッ!!」」
隣で食べていたベトベターと声が重なった。噛めば噛むほどコクと旨味がどんどん溢れてくる。それに絡むピリリとしたルーがまたたまらない。夢中になってスプーンを動かすうちに、あっという間に皿が空になった。ベトベターの方を見れば山盛りだったポトフの皿が綺麗になっていて、パンもなくなっている。やっぱりそっちから食べたのか。
「いやァ~うめェ!具がごろごろで食べ応えあるし、ガツンとくる風味がサイッコーだ!」
「だろー!そのまま食べてもうまいけど、パンにも合うよな。隠し味にニンニク入れてるんだって」
「あーこれニンニクか、なるほどなァ。おし、カレー食ったらおかわりする!」
そう宣言するが早いか、カレーの山がみるみる小さくなっていく。それを眺めながら、俺も大ぶりの人参を一口。まろやかな甘みを噛みしめて、ニンニクの利いたコンソメスープを啜る。時々パンを挟みながら野菜とスープを交互に口に運んだ。うめえ……。
ポトフのおかわりをたっぷり貰ってきたベトベターが戻ってくるのと同時に、最後の一口を飲み干した。ふー、腹いっぱい!空っぽの皿を重ねて手を合わせる。
「ごちそうさまでした!」
「あれ、もう終わりかァ?それしか食わねェからでかくならねェんじゃねェ?」
「関係ねえし、胃袋ブラックホールのお前らと一緒にすんな」
腹をさすりながら言い返す。少し瞼が重くなってきたから、急いでカフェオレを啜った。苦い味は好きだけどブラックコーヒーはまだ飲めない。もう一口飲んで、ふと見知った顔を見ていないことに気が付く。
「そういや、おっさんは?」
「あそこ」
ベトベターが示した方に顔を向ければ、いつもの喫煙所の辺りでひとり黙々とスプーンを動かしていた。あ、意外と近くにいた。そこに社長さんやベトベトンたちが絡みに行き、何か話し始めた。鬱陶しそうにしつつも相手してるあたり、律儀だよなあ。俺にも毎日授業してくれるし。
ちびちびカフェオレを啜りながらぐるりと視線を巡らせた。社員さんやベトベターたちは思い思いの場所で固まり、笑顔でカレーやポトフを頬張っている。うんうん、どっちもうまいもんな。ちょっと手伝っただけだけど、ジンコのメシがうまいって言われると俺まで誇らしくなる。
そのうち鍋も皿もバスケットも全部綺麗に空になって、片付けが始まった。それが終わると、ブランケットにくるまったりコーヒーを飲んだりしながら、のんびり流星群を待つ。今19時半だから、もうちょっとだ。
くああ、と隣から大きな欠伸。ベトベターのやつ、じっとしてるの苦手だもんな。社員さんからランタンを借りてきて、その明かりを頼りにリュックを漁った。欠伸をもう1つ零し、ベトベターが首を傾げる。
「何か持ってきたのかァ?」
「お前が見たいって言ってたやつ」
お目当てのものを引っ張り出し、それぞれ広げて四隅に小石を乗せる。そこに描かれたものを認識したのか、とろんとし始めていたベトベターの目がばっちり見開かれた。
「地図だ!」
「うん。これがウラウラ島の、こっちがアローラ地方ので、一番でかいのが世界地図」
ランタンを掲げて1つ1つ指し示す。目を輝かせたベトベターは、まずウラウラ島の地図を覗き込んだ。
「はずれの岬どこだァ?」
「えーと……この辺」
「はは、ちっちぇー」
カントーってのは?ここだな。ここの右側。へェ、随分遠いなァ。ここのどっかにじっちゃんの故郷があんのかァ。カントーのベトベトンの主な生息地はタマムシシティとその周辺だから……この辺りかな。昔はグレン島のポケモン屋敷ってとこにもいたらしいけど。何で今はいねェの?噴火で町ごとなくなっちゃったんだって。ふゥん……。他の地方のベトベトンはどこに住んでんだァ?
ふたりであれこれ言い合いながら3つの地図を見比べて、ベトベトンの生息地を探す。そこからどんどん話が逸れて、いつの間にか各地方の名所の話で盛り上がっていた。
「世界って広ェんだなァ。俺さんもいつか、色んなとこ行って、色んなモン見て回りてェなァ」
楽しそうに地図を眺めるベトベターが何気なく口にした言葉に思わず顔を上げる。急に速度が増した鼓動を落ち着かせようとこっそり深呼吸して、ゆっくり口を開いた。
「……あの、さ」
「ん?」
小さな青い目が瞬きする。数秒、もしくは数分、沈黙が訪れる。ごくんと唾を飲み下し、もう一度口を開いて――吐き出す直前、言葉を変えた。
「……やっぱりいい」
「何だよ勿体つけてェ。言えよォ、気になるだろォ!」
「言・わ・な・い!」
どうにか白状させようとくすぐってくるベトベターの脇腹を逆にくすぐり返してやる。すぐに形勢逆転し、ベトベターの気が逸れるまで徹底的にくすぐり倒した。
今はまだ、言わない。言えない。
***
それぞれのんびり過ごすみなさんにコーヒーを注いで回る。その度に「おいしかった」「ありがとう」「ごちそうさま」を言ってもらえて、お腹だけじゃなく胸の中までぽかぽかになる。ふふふ、頑張ってよかった~~。
最後に、リサイクルプラントの壁に背を預けて煙草をふかしている、紫のヒトに声をかけた。
「ベーやんさん~~。コーヒーのおかわり、いかが~~?」
彼はちらりとこちらを向くと、「……ども」と軽く会釈した。笑顔を返し、空の紙コップにコーヒーを注ぐ。こぽこぽ、という音が途切れる頃、ふと低い声が鼓膜を揺らした。
「ジンコっつったか。悪ィな、飯とか色々用意してもらっちまって」
「いえいえ~~。みなさん、いい食べっぷりで嬉しかったわ~~。お口に合ったかしら~~?」
「ああ。うまかった」
「よかった~~」
ベーやんさん、沢山食べてくれたのよね。見ていて気持ちいい食べっぷりだったから、ついおかわり多めによそっちゃった。
紙コップを傾けた彼の視線がさっきまで向けられていた所に戻される。その先にいるのは、ルヒカちゃんと、お友達のベトベターちゃん。
「テメェ、あいつの親のポケモンか?」
「そうよ~~。あの子のお父さんが、わたしのトレーナーなの~~」
「……そうか」
静かに呟いてもう一度コーヒーを煽る。その横顔は、何故だかひどく痛ましげだった。
☆
くすぐり合戦に勝利して、ふたりで草の上に大の字に寝転がる。見上げた空はいつの間にか沢山の星で埋め尽くされていた。うわーっ、すっげえ!肉眼でも星の輝きがハッキリ見える!急いでリュックからデジカメを引っ張り出し、シャッターを切った。お、いい感じ。
それを見ていたベトベターがやりたいって言い出したから、「食べるなよ」と散々念押しして使い方を教えてやる。パシャパシャやり始めたベトベターをよそに、再びリュックを漁って星座早見盤を探り当てる。日付と時刻を合わせて空に掲げてみるけど、初めて使うからか、いまいちどれが何座かわからない。暫く早見盤と星空と交互に睨めっこしていれば、不意に上から低い声が降ってきた。
「あの赤ェのがカイリキー座のベテルギウス。それの下の方で白く光ってるのがウインディ座のシリウス。左の方の白いのがガーディ座のプロキオン。3つ繋げて冬の大三角、だったか」
いつの間にか近くに来ていたおっさんの指の動きを視線で追えば、星たちの中から三角形が浮かび上がった。俺を含めた何人かが感嘆の声を上げる。
バイバニラ座。ヒメグマ座。リングマ座。ヒバニー座。ケンタロス座。ギャロップ座。マメパト座。レパルダス座。褐色の指がゆっくりと1つ1つを指し示し、星座の形をなぞっていく。
「べーやん、詳しいなあ」
「……昔、星が好きな奴がいてな。聞きもしねェのに、どれが何だってずっとベラベラ喋りやがるから、覚えちまった」
目を丸くした社長さんに答える声には、どこかそのひとを懐かしむような響きが滲んでいた。空に掲げていた左手でそっと眼帯に触れる。
「あッ!見えたァ!」
突然、デジカメで遊んでいたベトベターが甲高い声を上げた。どこだどこだと指差す方向を探すけれど、流れ星は見当たらない。
「ほんとに見えたのか?」
「見間違いじゃねえのー?」
「マジだってェ!」
先輩ベトベターたちに疑いの目を向けられ、じたじた足を踏み鳴らす。やいのやいのしているうちに誰かがまた「あっ!」と叫んだ。今度は俺も見えた!
銀や青や白が散りばめられた藍色の中で、すーっと動くものがちらほら。あっちに見えた、こっちに見えた、とみんなで大騒ぎしながら空を見上げる。
ふと、何となく気になってこっそりおっさんを盗み見る。おっさんは眼帯に触れたまま、苦しそうな、愛おしそうな、いろんなものがぐちゃぐちゃに混ざり合った顔で星空を見つめていた。