刹那の言葉
光の方へ歩みを進める
それが正しいことだと信じて
光の方へ進めば進むほど
後ろの影が大きくなっていく
その影を見てみぬふりをし
どんどん歩みを進める
後ろから声が聞こえる
苦しそうな声が
悲しいと嘆く声が
寂しいと泣く声が
その声の方へ振り返ろうとすると
光が強くなり振り返るのを止めた
光は自分を包み込みそれが正しいと
大丈夫だと肯定してくれる
振り返らずどんどん歩みを進める
後ろからまた叫び声が聞こえる
何を言っているかわからない
ふと光が弱まり今度はその言葉が聞こえる
それらは光と違い自分を否定する声達
正しいと信じ突き進んできた後ろで
傷つき、苦しみ、怒り、憎み、悲しんだ者達の
悲痛な叫びだった
自分は正しいと思ってやってきた
だけど本当にそうだったのか?
前を向き光の方へ走り問う
自分は正しいことをしたのか?
大丈夫だったのか?
これで良かったのか?
光の方へ手を伸ばす
問えば問うほど光はみるみる弱まり
そして光は消えた
自分が手を伸ばした先にあったのは
奥深くまで闇が続く崖だった
ぎりぎりのところで踏み止まったその瞬間
背中に手の感触を感じた
振り返るとそこには
憎悪の目が自分を見下していた
身体は宙を舞い、頭はこの先のことを悟った
同時に自分の目から涙が溢れていることに気づく
どこで間違えたのか
なぜ振り向かなかったのか
なぜなぜなぜなぜ
今さらしても意味の無い後悔と共に
闇の中へ落ちていった
fin
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