戦士達の休日

戦士達の休日【1】


 『神王コスモス』のワスレモノ――《エターナルスター》集めの旅がひと段落したある日の、【コスモス軍】基地。

「揃ったわね?」

 朝食には早い時刻。急遽クレアは、一同を宿舎の談話室に呼び出した。

「どうしたのクレア……」

 小さく欠伸をもらすセレに、「起こしてごめんなさいね」と眉を曲げる。

「突然だけど、今日から一週間【コスモス軍】としてのお仕事は休むことにしたわ」
「はぁ? なんでさ」
「ナナがいないからよ」

 通りで静かだと思えば、リーダーであるナナの姿が見えない。
 ケイスは――寝起き直後だというのにバッチリ整えている髪に触れては眉を顰める。

「いや……だからって休みにする必要なくない?」
「ワタシの《メーア》に反応がないのよ。本人は一週間ぐらいで帰るって言うから、そのうちフラッと顔を出すでしょうけど……それまでの間に、『ナナにしかできない』ことを持ち込まれても困るわ」

 ――【コスモス軍】の仕事は主に『異世界の運命に干渉・改竄する存在の排除』であるが、こちらが発見する前に大きく改竄された場合は『手遅れ』だと判断し――『神王コスモス』の名のもと、ナナが強制的に排除する事がある。
 熱心に仕事をするのはいいが。手遅れなら遅れようが変わらないので、ナナがいない期間にわざわざ発見することはない――と、クレアは語る。

「え〜っとつまり、何してても良いってこと?」
「そうなるわね」

 眠たげであったヴェレットは途端に覚醒。今すぐにでも飛び出してしまいそうな雰囲気に、ベータは服を掴んで引き留める。

「おいケイス、ヴェレットのこと見ててやれよ」
「ちょっと、僕だけに押し付けないでよ」
「俺は無理。国に帰んなきゃ」
「えっそうなの? 気をつけて帰ってね」

 ベータは妹に「おう」と返し、ケイスが嘆息する光景を視線から外す。クレアはサクラに掌を向けた。

「悪いけど、サクラもそうしてくれるかしら」
「ええ、大丈夫だけれど……ナナはどこに行ったの?」
「さあ? 最近はなかったけど、昔はちょくちょくいなくなってたのよ」
「そうなのね」
「セレも『お役目』が終わり次第、休みに入ってちょうだい」
「うん。分かったよ」

 『泉の聖女』としての役目を個別に行うセレは苦笑を浮かべつつ、頷き返す。


 ナナの不在から突如訪れた連休の日々。
 彼らはどのような休日を過ごすのか――。
 これはその一部を綴ったものである。

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