SSまとめ
「おいケイス、また俺の部屋勝手に入っただろ。盗ったもん返せ」
「え〜カオス様にちゃんと許可取ったし〜いないのが悪いんじゃ〜ん」
「父上に適当な事言いやがって……。いいから返せ、それか弁償しろ。安くねぇんだぞあの薬」
「『身体で払え』って? これだから思春期は」
「使えねぇ耳ごと切り裂いて臓器売買してやろうかクズ」
明くる日の【コスモス軍】基地。
会議室の一角でケイスと愉しく語らっているのは、【カオス軍】を纏める少年『ディス』。こうして定期的に赴いては、ナナと情報共有している。本日もその用事で訪れたところに、幼馴染のケイスと鉢合わせた。
「お前みたいなヤツの臓器は高く売れるだろうよ。社会貢献しな」
「僕の臓器が市場に流れたら希少価値高すぎて宇宙大戦に発展するよ。あんたみたいな奴に責任取れんの?」
穏やかでない会話が延々と続く様を、同じく会議室に居たヴェレットは眺めていた。
「いいな……」
「……何が?」
羨ましげに呟くヴェレットに、隣で薬学書を捲っていたベータが聞き返す。
「幼馴染」
「今の会話の何処にそんな要素があった?」
気がつけばケイスとディスの姿は会議室から消えていた。大方、ケイスの自室にでも向かったのだろう。
「小さい頃からの付き合いだからこそ何でも言い合える関係って感じだったよ」
「そう……見えたか今の? 結構ディス、目付き本気だったと思うが……」
ヴェレットは変なフィルター掛けがちだからな、とベータは苦笑を浮かべた。
「オレ故郷で友達って呼べる人居なかったし親の顔も知らないから、自分の小さい頃を知ってる人がいるのって良いなと思う」
「……その意見には賛成だな。幼馴染はいないけど」
ほのかな笑みを浮かべるベータに、ヴェレットはその瞳を爛々と輝かせて。
「なら今からオレ達幼馴染になろう!」
「いや今からはなれねぇだろ」
至極冷静に返すベータに怯む事なく、両手を合わせ頭を下げる。
「ちょっとだけでいいから、ね?」
「……分かった。ちょっとだけな」
薬学書の頁を閉じ、ベータはヴェレットと向かい合うように座り直す。
「んで、何すんだ」
卓の上に頬杖をつくベータに、う〜んとヴェレットは首を唸る。
「ベータの小さい頃の話……とか?」
「何で知っ……いや駄目だ、やめろ。というかそれは不公平だろ」
「あっそうだね」
腕を組み、ヴェレットは再び唸る。
「……幼馴染って難しいね」
(諦めんの早)