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そして少女は夢を見る


 神王わたしは夢を見ない。
 正しくは、『見なくなった』と言うべきか。
 周りに合わせ、眠るようになった私は夢を見た。
 その全てが自分ではなく誰かの夢で。その全てが悪夢と呼ぶにふさわしい夢で。その全てが、神王わたしが招いた罪を現したかのようで。
 だから私は自分で自分の夢を消した。
 見たくない、と思ってしまったから。
 それなのに。

 ――これは……夢?

 ナナは真っ暗な世界にぽつんと佇んでいた。目の前に扉があること以外何もない、誰もいない世界。
 ゆっくりと扉を開き、ナナは扉の向こうへと進む。


 そこは、知らない場所だった。
 晴れ渡る空の下、穏やかな風が吹き抜ける。
 ナナを取り囲むのは幾つもの墓標。そのうちの一つに、誰かが花束を手向けている。
 会ったことはない。
 だが、その姿は知っている少年。
 土の下で眠る『死者』に笑顔で語りかけていた少年は、満面の笑みでこちらに振り返る。
 と、同時。世界が、景色が、視界が、徐々に白み始めた。もう目覚める時間らしい。
 最後にナナは見た。
 少年が『誰か』の腕を引き寄せていたのを――。


 ナナは目を覚ました。飛び起きるわけでもなく、静かに夢の終わりを告げる。

「――リン」

 隣から声が聞こえる。見ればリルンがこちらに首を傾げていた。
 おはよう、と声をかけて起き上がる。
 夢を思い出したナナは予感していた。
 遠い未来。あの夢は現実になると。


「ねえ、――。私、この景色知ってるよ」

 どうかその時を、笑顔で迎えられますように。
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