SSまとめ
「うおっ⁉︎」
宿舎一階、ダイニングルームに足を踏み入れようとしたベータは反射的に飛び退く。
グチャグチャと咀嚼音を鳴らしながら食事をする狼の尾を踏みそうになったからだ。
「あ、ベータ」
狼の傍で屈んでいたヴェレットに、ベータは肩の力を抜きながら嘆息する。
「もう少し奥でご飯をやってくれ。危うく尻尾踏みそうだったぞ」
「わざとじゃないなら許してくれるよ。優しいから」
「そりゃお前にはな」
そのまま厨房に向かうベータは、まるで犬のようにお代わりを強請る狼の姿に、それでいいのかと眼差しを送る。
すると自分の餌が取られると思ったのか、突如獣本来の目つきとなってこちらを睥睨する。
取らねぇよと心の中で返すベータに、ヴェレットは小首をかしげた。