SSまとめ
僕らが暮らすこの世界に君臨する神様、アストルム。
その
だけど神様だから、僕たちとはどこか違う……けど。
(もう少し威圧がなかったらな〜……)
ぼんやりと。リアムはミトスを見つめて思う。
ミトスはソファーに腰掛けたまま、じっと正面を凝視している。恐らくなにも考えていないのだろうが、放つ威圧は凄いこと凄いこと。
「……直角だな」
「はいそこ測らない」
背筋をぴんと張り詰めるミトスはリーヴが測りたくなるほど美しい。自然とこちらも背筋が伸びるってものだ。
だが却って気になる。せめてなにかしていてはくれないか。
「み、ミトスはさ、なにかしたいこととかないの?」
勇気を出して話しかけるリアム。ミトスはリアムを見遣って沈黙。
ミトスは話し始めるのに時間がかかる。それはリアムも理解しているので、急かすことなくひたすら待つ。
(まあどうせ「なにも。」って終わるんだろうけど)
「……『なにか』とはなんだ」
(話繋げてきたーーッ‼︎)
まさかの展開にリアムはうーんと唸る。
「ほ、本とかはっ⁉︎ 読書!」
「下賤の民の読み物は好かん」
「えっとじゃあ、園芸は⁉︎ お花育てるの!」
「愉快なのかそれは」
リアムは叫び散らしたい衝動を抑えに抑えていた。ならばなにならいいのかと。ミトスは“取り掛かるのが長いだけ”であるということを、このときのリアムは知るよしもなかった。
「あっ。いたいた」
その場に現れたアステルは、リアムを見つけるや否や側に寄る。
「なあこれ……」
と、脇に抱えていたテディベアの首元を鷲掴み差し出す。それどうしたの? と問いかけられる前に、アステルはミトスに気づくと。
「ちょうどいいや。これやるよ」
座るミトスの膝上にテディベアを押し付けた。彼らの背後から「……フッ」と笑みが溢れた気がする。
「……なんだこれは」
「抱いて寄りかかったらちょうどいいと思って」
こんな風に、とアステルはミトスの隣に座り背もたれに背中を預ける。
アステルをお手本にミトスもぐっとテディベアを握りしめては背中を後方へ傾けた。
「ふっははっ、ちょっと似合わないな」
無邪気に笑うアステルを咎める必要はない、と。
仏頂面の裏に隠れた気持ちを察したリアムは、リーヴを連れてその場から立ち去った。
(あー……緊張した……)
ただ逃げたかったというのは、胸の内に隠した。