SSまとめ
「この色は少し解釈違いで──」
「こっちは濃いから──」
テーブルに広げた1冊の雑誌を前に、身を寄せ合って話し合うのはミエールとリアム。
「……なにをしている」
「あっルーナ」
偶然にも、その場を通りかかったルーナの眉間には皺が寄っている。楽しげな雰囲気に羨ましいと感じたわけではない。断じて。
顔を上げたリアムの隣で、ミエールは素知らぬ振りして微笑む。
「今リアムと一緒に、ルーナに似合いそうなコスメを選んでいたのです」
「……そういうことは本人がいる前でやってくれないか」
「まあ確かに」
苦笑するリアムに反し、ミエールはくすくすと笑う。
「それにしてもコスメっていろんな種類があるんだね。色にしてもさ」
「選ぶ楽しみと苦労があるのも、コスメの魅力ですよ」
「た、大変だね」
リアムとミエールの会話を、ルーナは興味なさげに流していた。
ルーナは基本、メイクはしない。公務で仕方なくさせられることはあるが、自主的に行うのはお風呂上がりのケアぐらいだ。
「ルーナは何色のアイシャドウ使うの? 青系?」
油断していたルーナの肩が大袈裟に跳ねた。何事もなかったかのようにスルーし答える。
「そうだな。青……だな、うん」
「へえ、やっぱり。今度見せてね」
「気が向いたらな」
「あはは。わかったよ」
一連の流れを傍目から見守るミエールは、静かに笑みを讃えていた。
「そういえばミエールはお化粧してるの?」
「ふふ、秘密です♡」