SSまとめ

服の好み


 夜の帳が下り、昼間の騒がしさもすっかり落ち着いた頃。

「〜♪」

 ハミングしながら雑誌を捲るミエールは見るからに楽しそうだ。

「何だか凄い楽しそうだね」

 たまたまやって来たリアムに声を掛けられると、ミエールは眉尻を下げた。

「うるさかったですか……?」
「え? そんな事無いけど。何見てたの?」
「ファッション雑誌ですよ」

 へえ、そうなんだ〜。と返しながらリアムはふと思う。

(ミエールって見た目ザ・お姫様なのに、雑誌読んだり恋愛小説読んだり……ちょっとイメージと違うんだよなぁ)

「そういえばさ、何でそんなテンション高かったの? 好みの服でもあったの?」
「え?」

 きょとんとするミエールに、違うの? と首を傾げる。

「私じゃなくて、ルーナに似合いそうだなって思っていたんです」
「そ、そうなんだね」

 それであんなにテンション高くなるかな、と心の中で思い、苦笑。
 すると、ミエールはあっと両手を合わせた。

「それはそうと、リアムは女性が着る服の好みってありますか?」
「好み?」

 リアムは深く考えずに、そうだなぁと悩んで。

「派手じゃなければいいかなぁ」
「他にはありますか?」
「えっ。う、うーん……」
「では、どんな服に『ドキッ』ってしますか?」
「え、えらく具体的だね……。そうだなぁ……」

 長考の末、リアムは一つの答えを導き出した。

「……普段と違っていたりすると、ちょっと『ドキッ』ってするかも」
「例えば、普段ズボンの人がスカート穿いていたりとか……ですか?」
「うんうん、そんな感じ。……でも何で?」
「少しばかり“参考”にさせていただきたくて。ではおやすみなさい」
「お、おやすみ」
「ふふふ」

 ミエールは雑誌を閉じ、優雅に笑みを浮かべながらその場を後に。
 向かう先は、ルーナのところ。


(ルーナに絶対似合う服を買いに行かなければ……! 一緒に選んで可愛い服を着てもらいましょっ。悩殺を狙いますよ‼︎)
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