SSまとめ
「じいさんや、リアム君が来てくれたよ」
「おおいらっしゃい」
開け放たれた小窓から老夫婦が顔を覗かせる。
「こんにちは、いつもの買いに来ましたっ!」
「もうすぐで揚がるよ」
老父は厨房に戻ると、油の海に沈むコロッケをひっくり返した。じゅうじゅうと鳴る音にお腹が刺激される。
──ここは『王都』の一角に位置する昔ながらのお惣菜屋。リアムが
「他はどうする?」
「チキンボールと、あとは……」
ガラスケースを指で差したまま、リアムは隣を見遣る。
「アステルは何が食べたい?」
それまで大好物のコロッケを揚げる老父に見入っていたアステルは、リアムの問いかけにはっと振り向く。
「コロッケ!」
「分かったよ。コロッケ、いつもより余分にお願いします」
「はぁいよー。コロッケと、チキンボールだねぇ」
老母が取り分けている間に、コロッケが揚がる。ひとつひとつバットに乗せられていくコロッケに、アステルは目を輝かせた。
「お友達はコロッケが好きみたいだねぇ」
嬉しいよぉ、と目を細める老母に、リアムも頷く。
「ここのコロッケが好きなんですよ」
「大好きです!」
「そーかい。ありがとねぇ」
揚げたてのコロッケを持ち帰る分の他に、2つ手持ちにしてもらう。
お金を支払い、店を後にした2人はアツアツのコロッケを頬張りながら帰路に着いた。
「ソースが無くとも美味しいんだな」
「揚げたてだからね」