SSまとめ
「なにかが違う気がしてならない」
「……そう?」
ルートヴィッヒの背中越しにキャンバスを見つめるリアムが怪訝そうに呟く。
「そっくりだと思うけど」
手を止めたルートヴィッヒは幾度となく首を捻り、目の前のキャンバスと睨めっこ。
××回目となる『彼』の絵は、いつだってなにかが足りない。
アトリエの隅に積み上がる作品を見返しても、その問いが解けることはない。
色鉛筆でも。
クレヨンでも。
絵の具でも。
あらゆる技法をもってしても、『彼』を書き写すことは不可能。
だってそれはニセモノで。
ホンモノはただ一つなのだから。
「あれ、描くのやめるの?」
「ああ」
ルートヴィッヒは道具を片付けながら、自嘲するように笑う。
「ホンモノに手を伸ばしかねないからな」