SSまとめ
明くる日の昼下がり。
宿舎の廊下を進むエスディエルを引き留めたのは、ヴェレット。
「エスディエル、ちょっと聞いてもいい?」
好奇心旺盛な彼の質問に嫌な予感を抱きつつ、エスディエルは「いいだろう」と腕を組む。
「天使に性別がないって本当?」
これまた答えにくい質問を――軽く頭を押さえた相手に、ヴェレットは純粋な瞳を嬉々として瞬かせる。
「昔、本で読んだんだ。ねね、実際のところどうなの?」
近い、と詰め寄るヴェレットを緩く押しのけ嘆息。他の
「……他世界の天使事情は知らんが、『ターミナル』出身の天使には性格がある。ただ、お前の知識も間違いではない」
ヴェレットは小首を傾げ、エスディエルの話に耳を傾ける。
「誕生したばかりの天使には性別がない。大体800年前後で、本人が『なりたい』と思う性別に体が変化していく。男なら筋肉がつき、女なら柔らかくなる。思考も体の成長と共に変わっていく」
「なるほど! じゃあ、エスディエルは男になりたいって思ったからその体付きなんだ。天使って不思議な性質だね」
「お前もな」
「?」
と、半眼を作るエスディエルの苦悩を、ヴェレットは終始気づくことはなかった。
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