Spectral Color
「あ、石を天日干ししてる」
「干物みたいに言わないでよぉ。浄化だよ」
朝食を二人で済ませた後、僕は自分の部屋からコレクションの一つである水晶のクラスターをベランダに出した。時々、こうして朝の光に当ててるのだけど、いつも安慈には『天日干し』と言われる。
「他のは天日干ししないの?」
「他のは日光に当てちゃダメなのもあるから、これに乗せたり、水晶の細石に乗せたりして浄化するの」
「へぇ。これだけでもキラキラして綺麗だね」
ベランダに置かれた水晶を眺めながら安慈がそう言った。
パワーストーンの効果効能はあまり気にしてはいないのだけど、綺麗だから飾ったり、眺めたりするためにコレクションしている。とはいえ、そんなに大量には持ってない。気に入った色味の物だけ買うのだけど、そうやって選んだ石は、眺めてるとインスピレーションが湧いてきたりするから、絵を本格的に描くようになってから始めた趣味でもある。
「アクセサリーの宝石は好きなの?」
安慈がそう訊いてきたので、少し考える。
「宝石も見てる分には。カットの仕方でキラキラする感じも変わるし、あれも芸術だよね」
「たしかに。でも、あまりアクセサリーしないよね」
「うん。それはまた別なの」
「そっか」
安慈は僕の返事にクスクスと笑った。
二人でのんびりと朝の光を浴びてるのも、休日っぽくていいなぁと思って、安慈の顔を見ると、光の加減なのか目の色がすごく綺麗に見えた。
「あれ、安慈、ちょっとこっち向いて」
彼の顔を両手でこちらに向けて、ジッと目を見る。
「どうしたの? なんか付いてる?」
「ううん。なんで今まで気づかなかったのかなって……。安慈の目、光に当たるとグレーかな? ちょっと緑も入った色してる」
常盤色に灰色をかけたような色。なんて綺麗な瞳の色なんだろう……。普段は気づかなかったから、光でこう見えるんだろうな……。いいな、羨ましい。
「あぁ、目の色は薄めだねってよく言われるけど、緑色に見えるっていうのは初めて言われたかも」
「すごく綺麗な色。こんなに綺麗なのに、今まで気づかなかったなんて。僕ってば本当にもったいないことした。安慈の目、欲しい。コレクションに入れる」
「目玉取られちゃうのは困るなぁ……」
僕の猟奇的な発言に、安慈は苦笑いしながらそう言った。
「これと同じ色の石あるかなぁ……探してみようかなぁ……。ねぇ、もうちょっと見せてぇ」
彼の瞳の美しさを、自分の目に焼き付けるように見る。きっと人間の目って一人一人微妙に違うんだろうな……。倫理観は一旦置いておいて、目玉コレクターいてもおかしくないと思う……。
なんて思っていたら、グッと頭を引き寄せられて、彼と唇が重なった。
「んっ!」
驚いて顔を離すと、彼が悪戯をした子供のように笑っている。
「びっくりした……」
「だって、そんなにうっとりした顔して、至近距離で見つめられたら我慢出来ないじゃん」
「あ……」
見る方に夢中になってて、安慈から見られていることをすっかり忘れていた。惚けた顔をしていたと思うと少し恥ずかしくなる。
「ふふふ。綺麗な目を見つけても、俺以外の人の前でそんな顔しちゃダメだよ」
そう言って、僕の頬に触れる彼。
「じゃないと、俺がその人の目玉くり抜いちゃうからね♡」
「ひぇ……」
僕が変な声を出したら『冗談だよ』と笑う彼。
目が本気だから冗談に聞こえないんだよなぁ……。
彼の笑顔に少し背筋が寒くなったけれど、今日は一日中、彼にくっついて見ているのも悪くないかもな……なんて思った。
「干物みたいに言わないでよぉ。浄化だよ」
朝食を二人で済ませた後、僕は自分の部屋からコレクションの一つである水晶のクラスターをベランダに出した。時々、こうして朝の光に当ててるのだけど、いつも安慈には『天日干し』と言われる。
「他のは天日干ししないの?」
「他のは日光に当てちゃダメなのもあるから、これに乗せたり、水晶の細石に乗せたりして浄化するの」
「へぇ。これだけでもキラキラして綺麗だね」
ベランダに置かれた水晶を眺めながら安慈がそう言った。
パワーストーンの効果効能はあまり気にしてはいないのだけど、綺麗だから飾ったり、眺めたりするためにコレクションしている。とはいえ、そんなに大量には持ってない。気に入った色味の物だけ買うのだけど、そうやって選んだ石は、眺めてるとインスピレーションが湧いてきたりするから、絵を本格的に描くようになってから始めた趣味でもある。
「アクセサリーの宝石は好きなの?」
安慈がそう訊いてきたので、少し考える。
「宝石も見てる分には。カットの仕方でキラキラする感じも変わるし、あれも芸術だよね」
「たしかに。でも、あまりアクセサリーしないよね」
「うん。それはまた別なの」
「そっか」
安慈は僕の返事にクスクスと笑った。
二人でのんびりと朝の光を浴びてるのも、休日っぽくていいなぁと思って、安慈の顔を見ると、光の加減なのか目の色がすごく綺麗に見えた。
「あれ、安慈、ちょっとこっち向いて」
彼の顔を両手でこちらに向けて、ジッと目を見る。
「どうしたの? なんか付いてる?」
「ううん。なんで今まで気づかなかったのかなって……。安慈の目、光に当たるとグレーかな? ちょっと緑も入った色してる」
常盤色に灰色をかけたような色。なんて綺麗な瞳の色なんだろう……。普段は気づかなかったから、光でこう見えるんだろうな……。いいな、羨ましい。
「あぁ、目の色は薄めだねってよく言われるけど、緑色に見えるっていうのは初めて言われたかも」
「すごく綺麗な色。こんなに綺麗なのに、今まで気づかなかったなんて。僕ってば本当にもったいないことした。安慈の目、欲しい。コレクションに入れる」
「目玉取られちゃうのは困るなぁ……」
僕の猟奇的な発言に、安慈は苦笑いしながらそう言った。
「これと同じ色の石あるかなぁ……探してみようかなぁ……。ねぇ、もうちょっと見せてぇ」
彼の瞳の美しさを、自分の目に焼き付けるように見る。きっと人間の目って一人一人微妙に違うんだろうな……。倫理観は一旦置いておいて、目玉コレクターいてもおかしくないと思う……。
なんて思っていたら、グッと頭を引き寄せられて、彼と唇が重なった。
「んっ!」
驚いて顔を離すと、彼が悪戯をした子供のように笑っている。
「びっくりした……」
「だって、そんなにうっとりした顔して、至近距離で見つめられたら我慢出来ないじゃん」
「あ……」
見る方に夢中になってて、安慈から見られていることをすっかり忘れていた。惚けた顔をしていたと思うと少し恥ずかしくなる。
「ふふふ。綺麗な目を見つけても、俺以外の人の前でそんな顔しちゃダメだよ」
そう言って、僕の頬に触れる彼。
「じゃないと、俺がその人の目玉くり抜いちゃうからね♡」
「ひぇ……」
僕が変な声を出したら『冗談だよ』と笑う彼。
目が本気だから冗談に聞こえないんだよなぁ……。
彼の笑顔に少し背筋が寒くなったけれど、今日は一日中、彼にくっついて見ているのも悪くないかもな……なんて思った。