Spectral Color
カラコロ……と、カフェラテの中の氷が音を立てる。今日は何をするわけでもなく、ゆっくりとした休日を過ごしている。二人で家事を終わらせた後、僕はさっきまで自分の部屋で絵を描いていたけれど、安慈はパソコンで何かしている。仕事ではないらしいけれど、きっと何か勉強しているのだろう。僕はソファに掛けながら、彼の様子を、スマホを片手に見ていた。
「ねーぇ。氷はなんで浮くの? 個体って普通液体より重いんじゃないの?」
カフェラテを一口飲んで、ふと浮かんだ疑問をぶつけると、安慈がパソコンから顔を上げて、椅子をコロコロと動かしてこちらを見た。
「氷だけちょっと特殊なんだよ」
「へぇ。どう違うの?」
そう返すと、彼がデスクに置いていたアイスコーヒーのグラスを手に取って一口飲んだ。
「すごく簡単に言うと、分子の並んでる密度が違う。同じH2O、同じ量でも、氷の状態だと分子がすごくキレイに並んでる。これが液体の状態だと、キレイに並んでなくて、分子が列を乱してつまった感じになる。同じ百グラムだとしたら中の分子量は氷の方が少ない。だから軽くなるって感じ」
「へー」
「だから、ペットボトルを凍らせるときに中身を少し減らさないと膨張して破裂するでしょ。
凍る時に分子が整列するから重さは変わらなくても体積が増えるから破裂する」
「へー」
「……分かった?」
「なんとなく」
僕の返事に彼が苦笑いして、椅子から立ち上がるとグラスを片手に僕の隣に座った。
「氷って結構面白いんだよ。溶ける時には周りの熱をものすごく奪うんだよね。だから、雪を食べるのは体力を消耗するから遭難した時には絶対やっちゃダメなんだって」
「どれくらいエネルギー使うの?」
「一キログラムの氷だったら、八十キロカロリー。その一キロの水を零度から八十度まで温められるくらいのエネルギー」
「すごいねぇ。だからすぐに冷えるんだね」
なんとなく、理屈が分かると面白い。日常にも化学は溢れてるんだなぁ。
「そう。面白いでしょ?」
そう言って、安慈は僕を横から抱きしめてそのままソファに倒れ込んだ。思ったよりも身体が冷えていたのか、抱き締められた体温がすごく温かく感じた。
「瑞貴冷たい」
「うん、安慈が温かい」
そう返すと、耳に柔らかいものが当てられた。
「瑞貴、耳も冷たい」
「それは、わざわざ確認しなくてもよくない?」
「必須事項です」
「嘘だぁ……」
クスクスと二人で笑い合うと、彼が起き上がる。
「一緒に昼寝する?」
「……いいよ」
そう返事すると、彼が手を引いてくれる。ベッドに行く前に、僕はグラスに少し残っていた薄まったカフェラテと小さな氷を口に流し込んだ。この後を勝手に想像して火照った顔を冷やす為に。
「ねーぇ。氷はなんで浮くの? 個体って普通液体より重いんじゃないの?」
カフェラテを一口飲んで、ふと浮かんだ疑問をぶつけると、安慈がパソコンから顔を上げて、椅子をコロコロと動かしてこちらを見た。
「氷だけちょっと特殊なんだよ」
「へぇ。どう違うの?」
そう返すと、彼がデスクに置いていたアイスコーヒーのグラスを手に取って一口飲んだ。
「すごく簡単に言うと、分子の並んでる密度が違う。同じH2O、同じ量でも、氷の状態だと分子がすごくキレイに並んでる。これが液体の状態だと、キレイに並んでなくて、分子が列を乱してつまった感じになる。同じ百グラムだとしたら中の分子量は氷の方が少ない。だから軽くなるって感じ」
「へー」
「だから、ペットボトルを凍らせるときに中身を少し減らさないと膨張して破裂するでしょ。
凍る時に分子が整列するから重さは変わらなくても体積が増えるから破裂する」
「へー」
「……分かった?」
「なんとなく」
僕の返事に彼が苦笑いして、椅子から立ち上がるとグラスを片手に僕の隣に座った。
「氷って結構面白いんだよ。溶ける時には周りの熱をものすごく奪うんだよね。だから、雪を食べるのは体力を消耗するから遭難した時には絶対やっちゃダメなんだって」
「どれくらいエネルギー使うの?」
「一キログラムの氷だったら、八十キロカロリー。その一キロの水を零度から八十度まで温められるくらいのエネルギー」
「すごいねぇ。だからすぐに冷えるんだね」
なんとなく、理屈が分かると面白い。日常にも化学は溢れてるんだなぁ。
「そう。面白いでしょ?」
そう言って、安慈は僕を横から抱きしめてそのままソファに倒れ込んだ。思ったよりも身体が冷えていたのか、抱き締められた体温がすごく温かく感じた。
「瑞貴冷たい」
「うん、安慈が温かい」
そう返すと、耳に柔らかいものが当てられた。
「瑞貴、耳も冷たい」
「それは、わざわざ確認しなくてもよくない?」
「必須事項です」
「嘘だぁ……」
クスクスと二人で笑い合うと、彼が起き上がる。
「一緒に昼寝する?」
「……いいよ」
そう返事すると、彼が手を引いてくれる。ベッドに行く前に、僕はグラスに少し残っていた薄まったカフェラテと小さな氷を口に流し込んだ。この後を勝手に想像して火照った顔を冷やす為に。